42 頼みごと
*ジェラール視点*
「叔父様、お久し振りです」
「ロクサーヌ、元気だった?」
話し合いの後、すぐに手紙を飛ばして謁見の許可を取り、そのままアデールを連れて転移魔法で王城にやって来ると、王太女のロクサーヌが出迎えてくれた。
「はい。叔父様もお元気そうで安心しました。そちらが……」
「お初にお目にかかります。私は、エルフのアデール=クレイモンです。“アデール”とお呼び下さい。宜しくお願い致します」
「挨拶ありがとう。どちらかと言うとアデールの方が先輩だから、私の方が頭を下げないといけないのに」
「上なのは年齢だけですし、それはエルフが故であって、王族のましてや王太女様の方が上なのは確かですから」
「ありがとう。それでは、今回は“内密に”と聞いているから、謁見室ではなくて応接室に案内するわ」
案内されてやって来た応接室には、兄上と宰相が居た。案内をしてくれたロクサーヌも、兄上に挨拶をすると部屋から出て行った。それから、アデールが兄上の許可を取ってから部屋全体に防音の結界を張った後、ピサンテについてのアデールの見識を話した。
「それが真なら、このまま放っておく事はできないな」
「はい」
「証拠は何もないので、取り敢えずは、このままピサンテで調査を続けます。カイリーには監視を付けて下さい」
「パルティアーズに何人か潜り込ませよう。セレーナの方は、お前とエルトンが居るから大丈夫だろうが…更に影でも付けるか?」
「私とエルトン、アデールも居るから大丈夫でしょう」
自慢ではないが、俺は魔法も剣も扱えるし、エルトンは最強の魔導師で、アデールはエルフだ。辺境伯も居るのだから、セレーナの護りは完璧だろう。
「もし何か必要なものがあれば、いつでも言ってくれれば良い」
「ありがとうございます」
「取り敢えずは、この事は極秘扱いとして、このまま調査を続けて、定期的に報告をするように。それとは別に頼みがあるんだが……」
「頼み……ですか?」
そうして、兄上から頼まれたのは───
*デミトリア邸にて*
「王太女がデミトリアとピサンテに?」
「王太女として、ピサンテへの訪問を希望しているそうだ」
デミトリア邸に戻ってすぐに、辺境伯に兄上からの頼み事を伝えた。
ロクサーヌは、立太子する前から国中の孤児院や修道院や辺境地など、色々な所に視察に行って現地の状況を自分の目で確かめて、問題があれば報告書に纏めては兄上か宰相に提出していた。だから、ピサンテへの訪問とは、現場を見ておきたいと言う事なんだろうけど、それとは別に───
「セレーナに直接会ってみたい──と言ったところね?」
「おそらく」
第一王子は、ナディーヌの事を信じているし好意すら抱いているが、ロクサーヌはナディーヌを受け止めてはいるが、受け入れてはいない──信用しきれていないところがある。だから、直接セレーナに会って、自分の目で見て色々確かめたい事があるんだろう。
「アラールは別として、ロクサーヌは見識があるから大丈夫だと思う。それに、上手くいけば、セレーナにとっては心強い味方になる」
年の差は5つだったか?ほぼ同年代の同性でもあるから、仲良くなれれば───平民として育ったセレーナにとっては難しいか?
『え!?私が王太女様と友達!?無理です!』
と、慌てふためくセレーナの姿が思い浮かび、思わず口元が緩んだ。
「国王陛下と王太女からのお願いなんて、断れる訳ないでしょう?喜んでお受けします」
「ははっ……ありがとう、辺境伯」
******
「王太女様ですか!?」
「そう。再来週で、5日の滞在予定だ。」
「それじゃあ、私はデミトリア邸の離れに引き篭もっていたら良いんですか?」
「どうしてそうなるんだ?」
辺境伯と話した翌日、早速王太女の訪問の話をすると、何故かセレーナは『隠れなければ!』と思ったようだ。
「私、平民ですよ?王太女様になんて会える様な立場の人間じゃないから……隠れた方が良いのかな?と思って………」
平民だから会えない、会ってはいけないと言う事もない。寧ろ、ロクサーヌは平民との交流を大切にしている。
「ハッキリ言っておくが、セレーナに会う為に来るようなものだから、隠れられると困るかな」
「えーっ!!??私にですか!?あ……“唯一の生存者”に会いに来ると言う事……ですね?」
驚いた後、一気に顔色が悪くなる。
「セレーナの事を疑っているとか言う事ではない。ただ、自分の目でピサンテを見て、自分の耳でセレーナの話を聞きたいんだと思う。だから、セレーナはいつも通りにしていれば良い」
「いつも通り………」
『なんて無理だよね!!』と言わんばかりの顔をしている───と、そこで気付く。セレーナは相変わらず表情の変化は乏しいが、よくよく見ていると思っている事がダダ漏れだったりする。
ー最近、よく一緒に過ごすようになったからか?ー
このまま、表情も明るくなっていけば良いなと、心から願うばかりだ。




