4 カイリーさんの日記
2人が出て行った日から1週間。毎日穏やかに過ごす事ができている。
ただ、お金を置いて行ってくれたけど、その額はどう見ても3ヶ月ももつ額じゃない。1日1食で贅沢しなければ何とか──と言ったところだ。それでも、カイリーさんとジェイミーが居ない嬉しさの方が勝る。
「学校か……」
私も行きたかった。お母さんが居たら、私も行けたのか?たらればの事を考えても仕方無い。普段は飲む事のないジュースを飲んで、気持ちを切り替えた。
ジェイミーが援助を受けて学校に行ける事になった理由は、魔力を持っているから。平民でも稀に魔力持ちが居るけど、その場合の殆んどが国からの援助を受けて学校に通っている。魔力持ちは国を支える力となるし、魔力は扱いによって危険だから、魔力を扱えるようにする為だ。普段は部屋を掃除するだけだけど、今はジェイミーもカイリーさんも居ないから、私はこっそりとカイリーさんとジェイミーの部屋の本棚にある本を読んでいる。その殆んどが、魔法に関する本だった。私には魔力が無いから、読んだところで役には立たないけど、魔力や魔法に関する事を知る事は楽しい。魔力の相性や、組み合わせで色んな魔法が展開されるのは面白い。
『貴方に、魔力があれば……』
と、お母さんが言っていた。魔法を使っているところを見た事はないし、訊いた事もないけど、ひょっとしたら、お母さんは魔力持ちだったのかもしれない。ただ、魔力持ちかどうかは、生まれてから1歳になる迄の間に神殿に判定しに行く決まりがある。稀に、1歳を超えてから10歳迄の間に発現する事もある。私は12歳だから、魔力が発現する可能性は殆んど無い。親が魔力持ちでも、その子供が魔力を必ず引き継ぐ訳でもないらしい。ただ、貴族は魔力の多い人や強い人が多いから、子供も魔力を引き継ぐ確率が高くなるようだ。
“貴族=魔力持ち”が当たり前のようになっているから、貴族と平民が結婚するなんて事が滅多に無い理由なのかもしれない。
ー魔力があっても無くても、結婚なんて私には無縁の話だよねー
私は、一生、カイリーさんに囚われたままなのかもしれないから。
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“11月の第一週末に帰る予定。食事の支度は必要無し”
と言う手紙が届き、カイリーさんが3ヶ月ぶりに家に帰って来る。カイリーさんが帰って来る迄に、もう一度家の中と庭の掃除をして何度も確認をする。少しでも何かがあると、難癖をつけられるから。と言っても、完璧に仕上げたとしても、何かしら言われるのだけど。食事が要らないのは助かった。支度をしておけと言われても、食料を買うお金がなかったから。本当に、1日1食でギリギリだった。家庭菜園をしていて良かった。
「あ、そうだ。カイリーさんの部屋から持って来た本も戻しておかないと!」
本を読んだとバレたら大変だ─と、私は本を持ってカイリーさんの部屋に向かった。
「これはここで……これは……ん?」
元の場所に戻して行くと、タイトルも著者名も無い黒色の背表紙の本が棚の隅に5冊並んでいた。何だろう?と思いながらその内の1冊を手に取って開くと──
「カイリーさんの……日記?」
流石に日記は読んではいけないだろうと思い、本を閉じかけた時──“ここでもまた、あの女が残して行った宝石が役に立った”と言う文字が目に入り、本を閉じようとした手を止めた。
“あんなちっぽけな石で、寮生活1年分になるとは思わなかった”
“これなら、まだまだ残っている宝石で楽な生活が送れる”
“気に食わなかった女だけど、こればっかりは礼を言ってもいいかも”
ーあの女はお母さんの事?宝石とは……まさかー
残りの4冊の本も取り出して、ページを開いて確認する。
「そんな…………」
その日記は、カイリーさん達がこの家で住むようになる少し前から書き始められていた。
“寝込んでいる娘を放ったらかしにして、あの女が居なくなった。娘は苦しんでいるけど、私の知ったことではない。ただ、たいした収入もない筈なのに、食器などは良い物を使っているようで腹が立つ。お皿が2つ減ったところで、気付かないだろう”
“普段、着飾る事もしないくせに、アクセサリーボックスがあって、中には数点のアクセサリーが入っていた。1つ位無くなっても気付かないだろう”
“とうとう、あの女は本当に自分の娘を捨てたようで、あの女が帰って来る気配が無い。でも、この娘がどうなろうと私には関係無い”
“関係無いと思っていたけど、あの女は更に宝石やお金を隠し持っていた。私がこの娘を保護すると言えば、それらは全て私の物にできる”
“数年掛けてあの娘を育てた後は、そのまま私が使えば良いのだから”
「知らなかった……」
お母さんが宝石やアクセサリーを持っていた事も、貯金していた事も全く知らなかった。そんな物があったのに、何故、病気の私を置いて行ったの?やっぱり、私は……捨てられたの?




