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奪われたものは要りません  作者: みん


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34/91

34 変化

*アリシア=パルティアーズ視点*




まさか、()()カイリーさんがナディーヌを育ててくれていたとは思ってもみなかった。


パルティアーズ公爵家の傍系の家門の夫妻が、偶然見付けた少女がナディーヌだった。そのナディーヌの保護者がカイリーさんだった。



『アンタ──アリシア…様が行方不明になった後、私のジェイミー(むすめ)が病死したのよ。その代わりにと言ったらアレだけど……私がナディーヌを育ててあげようと思ったのよ。生きているんだから……』


それは、感謝しかなかった。ジェイミーが死んでしまった事は残念だったけど、そのお陰でナディーヌは生きていたし、こうして会えてパルティアーズに迎え入れる事ができたから。

カイリーさんから受けた嫌がらせや苦痛も、全て赦せる程に感謝している。だから、私はお父様にお願いして、カイリーさんもナディーヌ付きとしてパルティアーズで受け入れてもらえるようにしてもらった。ナディーヌは可愛らしい上に火属性の魔力持ち。お父様もとても可愛がってくれている。


ーこれでブライアンも安心しているかしら?ー





******



『違う!お母さんこそ、私をよく見て!』


そう叫びながら、私に伸ばして来たその手を払い除けた。




ピサンテの事を思い出して直ぐに家に向かった。その家の外観は私の記憶にある家だったけど、家内は随分と変わっていた。


ー8年も経っているんだから、仕方無いわよねー


ただ、何処を探しても結婚指輪は見付からなかった。

それから数日デミトリア邸でお世話になる事になり、王都へ帰る前日の夜に1人の女の子に遭遇した。しかも、その子は私の事を『お母さん』と呼んだ。


ーまたかー


としか思わなかった。辺境地に住んでいるからか、もう既に娘が見付かった事も知らずに擦り寄って来ている。しかも、この子は魔力無し。


ー私の子が、魔力無しである筈がないのにー


その伸ばされた手が無性に腹が立ち、払い除けた。幼い子相手に権力を翳すのは大人気なかったけど、私を騙そうとするのを簡単に赦してしまう事もできなかった。でも、それでようやく女の子も理解したようで、それからは何も言って来なかったし、会うこともなく私は王都に帰って来た。


そして、グリンデルバルド大公様が、わざわざ私にレシピのノートを届けに来てくれた。そのレシピのノートには、私とナディーヌの思い出が詰まっている。流石に私が作る事はできないけど、料理長に頼んでナディーヌの好きだったお菓子を作ってもらった。


ーナディーヌは喜んでくれるかしら?ー





「甘くないからもう要らない」


今日作ってもらったのは、にんじんのパウンドケーキ。にんじんが苦手なナディーヌの為に考えて作ったもので、甘さは控え目だけど、ナディーヌはこのパウンドケーキが気に入ってにんじんも食べれるようになった。


「ナディーヌは、甘い物が好きだものね……」

「明日は、チョコレートのケーキが食べたいなぁ」


確かに、ナディーヌは甘い物が好きだった。でも、野菜に関しては甘さを控えた方が好きで、野菜の料理をする時は甘さを控えるようにしていた。


ーきっと、8年で色々と変わってしまったのねー


大人になった私でも好みが変わるのだから、まだまだ成長する子供は色んな物が変わっていくのは当たり前の事だ。だからこそ、この8年の空白を埋める為にも、今のナディーヌの事を知る努力をしなければ──






「お祖父様からもらったネックレスがお気に入りなの」


ピンク色のガーベラが好きで、私が持っていた結婚指輪などの宝石にはあまり興味を示さなかった。



「お天気の良い日は暑いから部屋でお茶を飲みたいわ」


天気の良い日は、木陰に座ってお菓子を食べるのが好きで、日に焼けないように気を付けるのが大変だった。



「雨の日は出掛けても服が汚れるし、髪の毛はバサバサになるから学校に行くのも嫌になるの」


ポツポツ、パラパラと色んな音がする雨の日も好きで、雨が降っても外に出ようとして大変だった。



「勉強は好きだけど、ずっと本を読むのはつまらない」


本を読むのが好きで、同じ本でもご飯を忘れるほど読む事もあった。



「お父さんは、どんな人だったの?」


ブライアン(父親)の事を訊いて来る事は滅多になかった。ナディーヌの世界が母親(わたし)だけだったから。



ーこんなにも変わってしまったのかー


保護者も変わっていたから、その影響を受けて変わったとしてもおかしくはないし、変わらない方がおかしい。見た目は微かに残る幼い頃のナディーヌなのに、目の前にいる少女が別人のように見えてしまうのは、この8年の間の成長を見守る事ができなくて、私が寂しいと感じているからか。その寂しさを受け入れなければいけない──と頭では分かっているのに。



どうして、こんなにも心が不安になるのかが




分からない







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