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奪われたものは要りません  作者: みん


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33 アリシア=パルティアーズ

*アリシア=パルティアーズ視点*



公爵家に生まれた私は、将来は王太子と結婚するだろうと言われていた。だから、幼い頃からマナーに関しては厳しい指導を受けたし、複数の外国語の勉強もさせられた。そのお陰で、自国以外で主要な3カ国に関しては普通に会話もできるし、字も読めるようになった。

生まれた時から言われていたから、私も王太子妃になるのだと思っていた。




『今日からお嬢様の専属護衛を務める事になりました。ブライアンと言います。宜しくお願いします』


15歳で学校に通う事になった私に付けられた専属護衛騎士。銀色の短髪で水色の綺麗な瞳で、騎士と呼ぶには似つかない細身の男性だった。家名を名乗らないと言う事は平民なんだろう─と、その時はそんな事だけを思っていた。


それから、一緒に行動をするようになってからは、いかに彼が優秀な護衛なのかが分かった。自分よりも大きい者でもアッサリやり込めてしまうブライアン。誰に対しても礼儀正しくて誠実なブライアンに、あっと言う間に惹かれてしまった。

最初は『身分が違い過ぎます』『私はただの護衛にしか過ぎません』と拒絶されたけど、最後には私の想いを受け入れてくれたブライアン。




18歳になり、ついに王太子の婚約者候補に上がる──と言う時に父に2人の関係がバレてしまい、私は王太子よりもブライアンを選び公爵家から除籍された。ただ、母は私にこっそりと“継承の指輪”とお金と宝石を持たせてくれた。


『この公爵夫人の()()()は、いつかできる俺達の子供のいざと言う時の為に、使わずに置いておこう。俺も、自分の家族を養うぐらいはできるし、俺の力で養いたいから』


その言葉の通り、ブライアンは護衛騎士としての実力を活かして収入を得て、2人だけの生活を始めてもお金に困る事はなかった。料理も私より得意で、私ができる事と言えば掃除と洗濯だけだった。それでも、2人での生活は楽しかった。ナディーヌが生まれてからは、更に楽しくて幸せな日々だった。





『どうして、アンタなんかがブライアンと……』


ナディーヌが生まれてから半年程して、同じ村に越して来たカイリーさん。彼女はブライアンの事を知っていたようだった。


『カイリーは、俺が育った保護施設のある領に住んでいたんだ』


そこで、たまに会って大勢で遊んでいたうちの1人で、特に親しくしていた仲ではなく、ブライアンが成人して王都に出てからは何の接点も無かったと言っていた。それなのに、カイリーさんは私がブライアンと結婚して子供が居る事が気に食わない様子だった。



『俺の妻と子に何かしたら赦さない』


ブライアンの前ではおとなしかったカイリーさんだったけど、ブライアンは全てを知っていたからカイリーさんに忠告をしてくれた。それ以降はおとなしくなり、また私も静かな日々を送れるようになった。




そんな幸せな日々は、ブライアンの病死と共に崩れ去った。



ブライアンが死んでからは本当に大変だった。

カイリーさんからの嫌がらせは酷くなり、ブライアンの死すら私のせいにされ、今迄良くしてくれていた人達もカイリーさんの言葉を信じるようになり、私とナディーヌはその日その日をやっとの思いで過ごすようになった。


そして、ナディーヌが5歳の時に高熱を出し、苦しそうに泣いている姿を見ているのが辛くて、このままナディーヌも死んでしまったら──と恐怖に襲われ、私はパルティアーズに助けを求める事にした。


ー魔力を持っていなくてもお父様にとっては孫なのだから、きっと助けてくれるはずー


苦しむナディーヌを置いて行くのは辛かったけど、助ける為だと言い聞かせて家を出た。



そして、王都に行く途中で事故に遭った。


ーここで、私が死んでしまったらあの子はどうなるの?ー






ーあの子が居なければ、私は……パルティアーズに戻れていた?ー







********



意識を失う前にそんな事を思ってしまったからか、私は記憶を失ってしまっていた。


それから部分的に記憶を思い出した時は、パニックに襲われた。


ーあの子はどうなったの?ー


そんな私を見て、父は娘を捜してくれたけど、やって来た子は全て偽物だった。


ーもう、心が壊れそうー


と思った時、ようやく僅かな記憶に残る女の子が私の目の前に現れた。しかも、発現して魔力持ちになっていた。


ー魔力持ちなら、きっとお父様もこの子を受け入れてくれるわー


親子鑑定をすれば90%の確率がでた。


「ナディーヌ!貴方が無事で良かったわ!」

「おかあ……さん……会いたかった………」


これで、ようやくナディーヌとまた幸せな日々を送る事ができる。もう、苦労する事はない。



「カイリーさん……本当にありがとうございました。こうして、生きてナディーヌにまた会えたのはカイリーさんのお陰です」


そう。私がまたナディーヌに会えたのは、あのカイリーさんのお陰だった。





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