表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/51

第11話 ユウト、渋谷で装備を整える

 渋谷2日目。


 まだ渋谷にいるということに実感がわかなかった。


 ビル群の谷間、空にまで届きそうな迷宮の塔を背景に、人と車と光がごった返す街。


 ビデン村とは何もかもが違った。

 ダンジョンに入る者も、そうでない者も、ここでは特別ではない。

 誰もが自分の道を歩き、誰もが他人に興味を持たない。


 ――服が、目立ちすぎる。


 ユウトは気づいた。

 村で着ていた動きやすいだけの作業服では、いかにも「田舎から出てきた」感が漂ってしまうことに。


 加えて、村で使っていた小太刀も、鞘の色が剥げかけ、革の持ち手は擦り切れていた。


 それでも、ユウトは別に恥ずかしいとは思わなかった。

 ただ、これから先、ここで本気でやるなら、自分自身も変わらなければならないと思ったのだ。


 そんな思いを抱えながら、ダンジョン用具専門のモール『ギルドマート渋谷店』へと足を運んだ。


---


「うわ……でか……」


 入り口からしてすでに別世界だった。

 数階建てのビル全部が、武具・防具・魔道具・ポーション類まで、ありとあらゆる「冒険者装備」で埋め尽くされている。


 エスカレーターを降りると、目の前に広がるのは最新型の防護服セクション。

 軽量で魔素抵抗に優れた『バリアジャケット』、耐刃性のある『クロスアーマー』、耐火コートや隠密仕様の防具まで揃っている。


 その隅に、アウトレットコーナーを見つけたユウトは、自然とそちらへ向かった。

 今の自分の手持ち(魔石を父に売ってもらった代金100万円)では、高価なものは買えない。


---


 しばらく悩み、ユウトは黒とグレーを基調とした、機能重視の戦闘服を選んだ。

 肩と胸元には薄い防刃プレートが仕込まれており、動きやすさを損なわないデザイン。


 さらに、軽量型の新しい小太刀も一本購入した。

 無銘だが、鍛冶師の刻印だけが小さく刻まれている渋い一本だ。


 これなら、無駄に目立たず、しかし「素人ではない」空気を纏える。


---


 着替えたユウトは、鏡の前で小さく息をついた。

 ――これが、渋谷で生きていくための第一歩だ。


 服が新しくなったからといって、すぐに強くなるわけではない。

 それでも、「戦う覚悟」が見えるかどうかは、外見にも現れるのだと、ユウトはなんとなく知っていた。


 小太刀を腰に吊るし、フードを軽く被る。


 心の中で、静かに誓う。


 (ここでも、俺は勝ち続ける)


 新しい装備と、決意を胸に、ユウトは渋谷の街へと歩き出した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ