第5話 「クビにされる主人公たち」
ステータス値は低い。
だがこんなゴミステでも、自宅警備員の職業があれば様変わりする。
―――――――――――――――――――――――――
【マノワール・オッサツイホ】
職業:自宅警備員
Lv :21
HP :222/236
MP :169/178
攻撃力:53(×0.4) 実数値133
防御力:153(×0.9) 実数値170
魔法力:49(×0.4) 実数値122
素早さ:50(×0.4) 実数値124
スキル
数学lv34
科学lv37
社会学lv24
礼法lv26
芸術lv17
舞踏lv15
製作lv35
建築lv33
土魔法lv8
―――――――――――――――――――――――――
「レベルアップすれば、こんなに変わるのか! 何をしていても疲れないし、全身が軽い!」
頑張る程に体力が上がる。
この年になれば体力維持で精一杯だったが、見違えるほどに上昇していた。
これがレベルアップの恩恵。
仕事で疲れることが無くなったほどに、僕の身体能力は向上した。
「おいマノワール! 前からこの進捗は何なんだ!?」
ショワジ親方の怒声と追求。
仕事は毎日しっかりこなしていたはずだが。
どんなに理不尽に叱られても、僕にできることを最大限しなくては。
それがプロ意識というものだと、出来ないなりには思っているから。
「この前はああ言ったが、たった数週間でこんなに伸びるはずがない。お前本当のことを言え。今なら許してやる」
強面の親方。
凄むと本当に恐ろしい。
しかし本当のことも何も、何のことだろうか?
「お前。今までずっと仕事をサボってたのか?」
「そんな!? やってません!」
そんなはずがない。
大体僕の根気と正直さを褒めてくれたのは、親方じゃないか。
「口答えするんじゃねえ!!! どう考えてもおかしいだろうが!? なんでこのタイミングでいきなり仕事ができるようになったんだ!」
「だからそれを説明しようと」
「言い訳は聞かねぇぞ!」
どうしろというんだ。
説明まで許されないとは、どうしようもない。
にやにやとしながら腕を組んでこちらを見ている奴ら。
最近成果を出し始めていた僕は、やっかみを受けていたのだろう。
「お前以外の皆がおかしいと思ってる! 皆がお前が悪いって言ってる!」
「……」
「信頼ってのは一番大事だ。それをおまえはわかってねぇ。あいつらはヤンチャだが絆はある。お前は飲んでても暗くてパッとしねぇし、笑うことも少ねぇ。真面目君でつまらない奴なのはいいが、嘘をついて雰囲気悪くする事だけはしないでくれ」
もう涙が滲んできた。
自分が頑張ったことが、悪く言われること。
信じていた人にも、全く信じてもらえなかったこと。
感情がぐちゃぐちゃで、胸が張り裂けそうだった。
なんで僕はいつも理不尽な目にばかり……
「何の騒ぎかと思ったら、なんで見たこともないのに決めつけているんですか!!!!!」
メイド服の小さな女の子が、肩を怒らせてこちらにやってきた。
ニンメイちゃんだ。
僕の仕事が上達したのだと、喜んでいてくれた。
でもショワジ親方がいい顔をしていないことに怒っていてくれたのだ。
「こんな職場辞めましょうマノワールさん! わたしも辞めます!」
「ニンメイはまだ社会のことを何にもわかってないだろうが! おい行くな! 本気なのか!? もし就職先が見つからなかったら、また雇ってやる。忠告だが人を見る目は養わなきゃならんぞ」
「そっくりそのままお返ししますよ! ふん!!!」
親方に向かって罵声を浴びせ、僕の手を引いて歩いていくニンメイちゃん。
売り言葉に買い言葉だ。
こんなことを安易にしてはいけないと言っていたが、追い詰められた僕には気力すらなかった。
「ガキが……それも女が、男の仕事に口を出すなぁっ!?」
「親方! それは言い過ぎです! 撤回してください!」
「誰に指図してやがる青二才が! お前はクビだ!」
凄まじい音量の怒声から、僕はなんとか意識が再起動する。
怒り心頭となった親方は、持論を絶対に崩さない。
昔気質の人だから、女性には手をあげないが。
こうなってしまっては、もう危ないかもしれない。
若い頃は止めるのに大変だった。
自分が曲がったと思ったことは、何が何でも突き通すところは、いいところでもあるのだけれども……
「お世話になりました……」
「ふんっ! 給料はきっちり送ってやる。だが二度と俺の目の前に、面を見せるんじゃねぇぞ!」
「わたしのセリフです! 仕事のスキルを教えて頂いたことは感謝いたします! マノワールさんが教えてくれたことですが!!!」
前もこれで辞めていった人がいた。
俺のことを世話してくれた上長だったけど、人事問題で親方と真っ向から対立した。
親方は自分が目をかけている人間の言葉を、全面的に贔屓してしまう性質で。
それに苦言を呈して退かなかったんだ。
それで喧嘩別れして、自分で会社を立ち上げたらしい。
「このガキっ!」
「マノワールさんは私が養いますので! ご心配なく関わらなくていいですよ!」
「ちょっ……! いや僕自活するから!」
「女に養われる男があるかっ! 自分も守れないような奴が、女も守れるはずねぇ!」
親方の叱咤が飛んでくる。
これについては僕も同感だ。
悪い人じゃないんだけれど、思い込みが激しい人なんだ。
それでも自分が努力してやったことを否定されると、やるせなかった。
今までずっと本気で頑張っていたのに……
「いいから早く出ていけよ。もうお前みたいな気持ち悪い使えないオッサンの居場所は、ここにないから」
「そうそう。オッサンみたいな役立たず雇ってた金で、仕事できる奴を引き抜きゃいいんだよ! おっぱいデカい姉ちゃんでも選べばいいじゃん!」
口々に同僚たちは喜び合う。
彼らの言う通り、俺の居場所はないようだ。
涙がこぼれそうになったが、ニンメイちゃんの前であるというプライドが我慢させた。
彼女は僕の顔を心配そうに見つめ、彼らを睨んだ。
面白い、または続きが読みたいと思った方は、
広告下↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓の☆☆☆☆☆から評価
またはレビュー、ブックマークしていただけると、モチベーションに繋がりますので執筆の励みになります!!!!!!!!!!