第4話 「同僚からの嫌がらせ」
帰ってから久しぶりにいい気分で寝れた。
オーエラさん。素敵な女性だったな。
僕に気があったりして……ってそんなわけないか。
「凄く軽いな……みんなはこんな感じで働いていたんだな」
今までは全身で動かしていた資材も、片手で運べる。
日に日に衰える体、遠ざかるあの頃の甘酸っぱい思い出が嘘のように見違えた。
いや過去は覆らないか。変えられない過去は置いておく。
筋力だけではなく、体力も上がっているので、業務効率は倍どころではないだろう。
同僚と差がつくわけだ。
「待てよ? 日頃の作業も工夫して、楽にできるのでは?」
ふと思い至るカイゼン。
勝算はあったので、試してみた。
「アース! これで資材の搬出を楽にできれば……」
「おい! 何やってる! ガキみたいに土の中に潜り込みやがって!」
後ろから怒鳴り声。
猫みたいな顔をした同僚だ。
態度は悪いが、業務には真面目だからな。
「職場で変な小屋作ってサボるな。ったく役立たずが……職業自宅警備員なら、家にずっと引き籠ってればいいんじゃないのかぁ?」
怠慢に浸っていると誤解されて、説教される。
今回ばかりは正論だ。
遊んでいるようにしか見えなかっただろう。
後で説明するか。
親方にでも伝えておくか。
「もうこんな時間か。捗ったな~!」
身体能力が上がったおかげで、過去最高を超越した。
今の経験に、若い頃の身体があればと妄想していたが、それ以上の出来栄え。
「進捗報告に行くか」
報連相は社会人の基本。
自身の作業結果を伝えるために、僕はある方向へと歩き出した。
「これは俺がやった!」
「すげぇじゃねぇか!」
しかし報告に行った先で、衝撃の言葉を聞かされる。
ショワジ親方に、同僚の一人が絶賛されていたのだ。
僕の作業内容を、自分がやったのだと主張して。
仕事仲間から仕事を盗まれたということ。
僕に先んじて報告された結果、僕の実績は奪われてしまった。
「って親方!!! それは僕がやったんです! おい! 人の仕事を盗むとは大概にしておけ!!!」
余りの怒りに、口調荒く問いただした。
絶対に許せない。
「バカ野郎!!! お前らの仕事ぶりは、俺が一番知っている!」
「親方!? そんな……」
期待外れの極致の反応、つまり僕の方が一喝される。
物凄い怒りようだ。
「マノワール。お前は仕事ができなくとも、正直に着実にこなしてくれる奴だと見込んでいたが……お前がそんな野郎だとは思わなかったぞ!?!?!?」
親方の怒りの言葉に、俺の怒りは霧散した。
信じてくれないという事に、もう気力を失ったのだ。
「もう帰れ! 顔も見たくない」
「はい」
項垂れながら、現場を後にする。
ああなった親方はもう人の話を聞こうとしない。
どうやって説明したものか。
これからまた仕事の成果を取られるかもしれない。
「あーあ。情けない奴だ」
「人の仕事の成果を取るなんて、しかもできもしないようなバレバレの嘘つくなんてな」
「あんな嘘つきオッサンにはなりたくないよ。さっさと辞めねぇかな?」
若手の連中が僕の横で嘲笑っている。
それに追随して、他の奴らも同意し始めた。
非常に居づらい。
俺はそそくさと荷物をまとめて、帰り道に就いた。
「おうオッサン! さっきは見事に喧嘩売ってくれたじゃねぇか。面貸せよ」
「お前……」
こぶしを握り締める。
レベルは上がったが、素手でこいつには勝てないだろう。
喧嘩慣れしている相手。
安易に手を出せば、返り討ちだ。
こいつはそれをわかって嫌味を言っているのだ。
小馬鹿にしてくるが、僕はやり返せない。
「わかってると思うが、お前がやった仕事。ぜんぶ俺が作ったことにしてたんだわ! お疲れさん!」
「お前……!」
「お前みたいなオッサンの言う事なんぞ、誰が信じるかバーカ」
厭味ったらしく表情を歪めるクズ。
手柄を横取りされ、卑劣に評価されても何もできないことが悔しかった。
心はボロボロに打ちのめされて、反論する気さえ起きなかった。
「マノワール!!! 何絡んでやがる! お前には心底呆れたぞ!」
「ショワジ親方」
「お前はもう帰れ! マノワールは居残り作業だ! 人様に迷惑をかけるのも、いい加減にしろ」
「そんな……」
まだ夕日は沈んでないが、こんなところで危険な作業をするのか?
下手したら死にかねないぞ。
「危ない仕事はもう暗いからさせねぇ。だが書類仕事は残ってる!」
「はい……」
社長に居残りさせられて夜遅くまで働くが、体力はあるので大丈夫。
慣れた書類仕事だが量は膨大だ。
僕とニンメイちゃんでほぼすべてを捌いているのだから。
数十人規模の会社の書類だ。
とても二人ではこなすのは難しい。
でもニンメイちゃんは普段負けずに頑張ってくれているんだ。
先輩の僕も頑張らなければ。
「そうだ! 余った時間はモンスターを倒そう!」
考え事をしながらルーチンワークをこなしていく。
せめて楽しい事や希望があることを考えて乗り越えよう。
「そうと決まれば、廃材置き場に確か、色々使えるものがあったはず……!」
廃材を利用して槍にしたりして討伐する。
気分が楽になってきた。
そうして僕はレベルアップに勤しんだ。
自分の人生を豊かにするために、こんな思いをしないように努力して再起するんだ。
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