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理解してくれる人はいるだろうけど、こう、なんだか知っている感触、手触りの物をこうして触っていると、落ち着いてくる。
そうして暫くカードに触って、その感触でスマホを思い出したこともあって、中途半端な体勢から改めてベッドに座って持ち物を確認する。結局周りばかり気にしていて、今の自分を確認していなかったこともあるから。
ただ確認したからと言って、勿論今着ている服意外に何があるわけでもない。ただ、カード以外にも何かないかと、改めてベッドの周り、部屋の中を少し歩いて確認する。
そして、結局分かったことは、外に出るためのドア、それ以外には置かれたベッドと二枚のカード、それがあるだけだと分かる。
着ている服が学校の制服だったら、そんな事も考えるけど、私服だ。流石に寝る前に着ているような部屋着とは違う。友人と遊ぶ時に着る様な、デニムにTシャツ。それからパーカー。そんな、本当に良くある格好だ。ボディバッグも持っているけど、中は空だ。
財布なんてものも、有るはずも無い。
本当に、今覚えている事、それ以外の何もかもが分からないように、そうされているらしい。
そうなってくると、何か手掛かりになりそうなのは、ゲームのルールが書かれたものになるが、正直何の役にも立たない事が書いてあるだけだ。結局、今以上の何かを探そうと思えば、この部屋から出なければいけない。
なんのゲームなのかも分からない。
こんな訳の分からない状態になるような、そんなゲーム。正直これに参加した時の自分が何を考えていたかもさっぱり分からない。
ただ、何処か、そう楽観的な気持ちにはなった。
だって、僕なのだ。本当にどこにでもいる、量産型。特に何か得意な事が有るわけでもない。運動はそこそこ、勉強もそこそこ。せいぜい平均。そりゃ苦手な相手よりは上だけど、得意な相手と比べられるほどじゃない。その程度。
そして、ゲームにしても友達と遊ぶために、スマホや持ち運びができる物、それでたまに一緒に遊ぶくらい。
つまり、そんな僕が参加しているゲームなんだから。
何処かの大型テーマパークで、脱出ゲームが体験できるとか、そんな話を聞いたこともあるし、行ってみたいとか話したこともある。多分、それよりもよくできた、そんな物じゃないかなと、そんな事を考えてドアノブに手をかける。
友達も参加しているのだろう。ならば、それに合流してしまえばいい。顔も名前も覚えていない、そんな相手だが。
部屋の見た目に比べて、ドアノブは実に滑らかに周り、知らない部屋から出てみれば、なんと言えばいいんだろうか。ほら、部屋がそうだったから、まぁ廃墟とまではいかないけど、そう言った見た目かと思えば、明るい廊下がそこにはあった。壁は木目調の壁紙だし、通路はマット迄敷かれている。
ぱっと見てやっぱり窓がない事は気になるが、なんというか、じゃあ、なんで僕が寝かされていた部屋はあんな作りだったのかと。不満が募る。
一応、プレイヤー、このよくわからないゲームに参加しているんだ。もう少しこう、何かあってもいいんじゃないだろうか。テーマパークなんだろうから、客に対して。
いや、僕としても面倒なクレーマー、たまに来るそんな客みたいになりたいわけじゃないけど。
恐らく、どうやってかは分からないが、そこからが演出だと考えれば、納得できないでもないのだ。
そうして、部屋に置いてあったカード二枚、それだけが荷物として増え、僕は通路を進む。
天井からは蛍光灯が明るく照らしてくれているし、特に歩くのに不安も無い。
そうして一応周りを気にしながら歩く。廊下の先、とりあえずその突き当りまではと。学校の廊下とまではいかないが、それでも少し歩く、そう感じる程度の距離はある。
そんなそれなりに長い廊下だというのに、他の部屋が一つもない事が気になったり、窓が無いのがやはり不気味に感じたり、そうしながら少し歩けば、廊下、通路の恥にたどり着く。
両側にさらに続いており、これまで歩いた場所よりも広い通路。それぞれその先に大きな扉が、両開きの扉が存在している。どちらを空けようか、そんな事を考えていると、足元にこれまでと何か違う感触があるのに気が付く。
何かを踏んでいるらしい。
それに気が付いて、少し下がってみれば、そこには、先ほど目を覚ました部屋で見た物と同じカードが、落ちている。
僕以外の誰かが落としたのだろうかと、そう考えて拾い上げてみると、そこにはこれまでと変わらない。
本当に適当なフォントで印刷したと、そんな感じの文字が印刷されている。
ルール14
『ゲームの攻略に失敗した場合、参加者は全員死亡する。』
ひどくそっけなく、端的にそんな事が書かれたカードを拾い上げる。
まぁ、脅し文句としては確かにありだと思う。実際、ゲームオーバー、それの言い換えとしてありだとも思う。
用は、脱出ゲーム。
此処から脱出するには、勿論生きてなければいけない、ゲームを続けられない。
だからまぁ、ゲームが中断されて、そこで外に出されるという事だろう。
ただ、そうなってくると、クリア条件を、説くべき謎を探さなきゃいけない。
ここに来る迄、スマホで友人とあれこれ言いながらやったような、こう、パズルみたい何かはここに来る迄見つからなかった。
何か、大きな扉もあるようだし、その先にあるのかもしれない。
じゃあ、改めて、右にいこうか、左に行こうか。