病弱な姉をいつも笑う妹、早くお姉さまが死ねばいいのにと婚約者と笑いあい抱き合う妹の言葉を聞いて、婚約者を奪われた姉がした復讐とは?
また今日も熱を出した。
私は目を開けて、体が熱いのを感じました。
今日は婚約者のケインが来てくれる日だというのに、どうしてこう私の体は言うことをきいてくれないのか。
「大丈夫、私がケイン様と代わりにお出かけしてきますから。お姉さま」
やっと調子がよくなったので、ケインと私は町に出かけるはずでした。
でもそれもできず寝込んだ私を見て、妹が笑ったのです。
「……ミア、別にそんなことをしてくれなくてもいいですわ」
「いえいえ、ケイン様をお一人にするわけにはいきませんし」
私がせき込むと、ほらほら具合が悪いのなら寝たほうがいいですわとにこりとミアが笑うのです。
ミアは私と違って健康でどこにでも行けます。
羨ましい、でもケイン様の婚約者は私です……。
「ケインは、う……」
胸が痛い、そう思うと、ほらほら侍医を呼びますわとミアがまた笑いました。
どうして笑うの? こんなにも苦しいのに、そう思った瞬間、私の部屋からミアが姿を消し、侍医が現れたのです。
……私は彼から、遠出はしばらく無理ですなと言われてしまいました。
馬車には乗れまいと、ああまたですか。
「……ケイン」
彼は生まれたときから私の婚約者でした。
親友であったお父様たちが、最初に生まれた子供たちを婚約させようと約束したのです。
私は長女、彼は長男。
私は生まれた時から病弱でした。でも婚約は私たちが14歳の時結ばれ、私は彼と結婚できる日を楽しみに待っていたのです。
でも……。
「あの子もかわいそうに、二十歳までは生きられないと……」
「ケインさんとの婚約は……」
「いや、それは心臓の悪いあの子には言えない、とても楽しみに……」
私は両親が話しているのを聞いてしまったのです。
私は今17、あと3年生きられないといわれて……発作を起こして倒れてしまい。ケインとの約束は果たせず、そして半年が過ぎようとしていました。
起き上がれなくなっていく、死にたくない、死にたくない。
「リリア、今日は調子がよさそうだね」
「ええ、なんとか起き上がれましたわ」
強い薬をと医師にお願いして、なんとか庭でケインとお茶を飲むことができています。
少しでも思い出を作っておきたかったのです。
金髪に青い目の優しい私の王子様、ケイン……。
微笑む彼と、お茶をしているとまるで病弱な体がうそのように感じます。
「そうだね、もう少し調子がよくなったら婚姻式を行おう」
「ありがとう、楽しみですわ」
「僕もだよ」
にこりと笑うケイン、彼に愛されていると思っていました……でも。
「いつまでお姉さまとあの茶番を続けるおつもり?」
「あともう少しで死ぬと聞いているからそれまでは優しくしないと、あと2年の我慢だ」
私は屋敷を歩いていて、使われていない客間から声が漏れてくるのが聞こえて、中をのぞき、そこには抱き合う二人がいたのです。
ケインと妹でした……。
「あのくそおもしろくもない女とおさらばするまでの我慢だ」
「あらうふふふふ」
二人が抱き合い口づけをするのを見て、私は発作を起こしそうになるのをなんとか耐えたのです。
ええ、私はここから復讐をすることに決めたのです。
だって私をだましていたなんて許せません、死を待って笑いあっていたなんて許せません。
「……私はもうすぐ死にますわよねケイン」
「そんなことはない、リリア」
私はとうとう発作を立て続けに起こし寝たきりになりました。あれから1年、20歳までは無理そうですわ。
私はケインが悲しそうな顔をするのを見て、裏切られた悲しみを思い出して泣いてしまいました。
「リリア?」
「私が死んだら、その躯はあなたと同じお墓にいれてくださいな妻として」
「そんなことをいわないでくれ!」
「両親にもお願いしましたの、だからね約束ですわ。そしてこの手紙を私と思ってずっと身に着けていてくださいね。妻との最後の形見として」
私はケインの手を握り、そう言い残しました。
ええ、私は両親に手紙まで書いて、ぜったいにそうするようにお願いをしたのです。
……ケインが私が死ぬ瞬間に笑うのを見ましたわ。後ろにいたミアも。
両親だけが本当に悲しんでいてくれました。
これは賭けですわ。あなたが本当に少しでも悲しんでいてくださるのならきっときっとあなたは……。
「……どうしてお姉さまが妻として同じお墓に入るのよ! そして妻を持った男は5年も結婚できないなんて」
信じられませんわ、やっとあのお姉さまが死んで、私が婚約者になれると思ったのに、神殿のお約束とやらで5年もケイン様と結婚できなくなるなんて。
「5年の辛抱だ、5年したら……」
私が納得できずにいるとケイン様がそういうのでしぶしぶうなずきましたけど。
忌々しいお姉さまです、こんな置き土産をしていくなんて……。
そしてあの手紙、忌々しい、あなたの幸せをお祈りしていますとかなんとか……。
仕方なくケインはあれを身に着けているようですがいつか処分してやりますわ。
「何か手紙とやらを焼き捨ててその煙を吸って死んだようだが」
「手紙がどうした?」
「手紙を焼き捨てて、そんな死因はあるまいに」
ある貴族の令嬢と令息が死んだらしいといううわさが流れました。
手紙を庭で二人で焼いて、そしてその煙を吸って死んだらしいと。
そんな毒なんて聞いたことがない……。
だが心臓病に効く薬はある葉からできていて、ある一定の時間がたち、それを焼き捨てると毒の煙を吐くという……。
聞いたことがあるけどまさかなあとその噂話をしていたうちの一人は思ったそうです。
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