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妖精ふぁんたじー  作者: 不明中のありかさん
第一章 異世界の少女
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エピローグ

 ――――――大好きなミズキへ。


 この手紙を読んでる頃には、今頃向こうの世界で楽しくやってると思います。

 天才美少女エルフの私が傍にいないから寂しくて泣いてたりしてないですか? 私は………正直言うと寂しいです。


 こっちの世界はどうでしたか?

 バタバタとした日々が続いたけど、色々と新鮮だったんじゃないかな。私も外に出たのは最近が初めてだから毎日が新鮮で楽しかったです。

 あ、もちろんミズキと一緒にいれてすごく楽しかったからね?


 ミズキは……ちょっと恥ずかしいけど、私にとって王子様です。カッコよくて、素敵な王子様。

 きっとミズキと出会えてなかったら、今の私とは違う生き方をしてたと思います。


 だから、ありがとう。


 貴方には、感謝してもしきれないぐらい感謝しています。



 うぅ、いっぱい書こうと思ってたけど、何書いていいかわかんなくなっちゃった……。


 えと、向こうの世界でも元気でいてね。私も、寂しく思うけど、頑張るから。


 ――――――メルヴィアより。




 追伸。

 実はこっそりそっちの世界に行こうと企んでます。その為の魔法陣も、後はちょっと調整するだけで完成間近。次元越えてあなたを探すのはちょっと厳しいし時間かかりそうだから、触媒に使う髪の毛を寝てる間にちょっとだけ貰いました。ごめんなさい。


 だから、近いうちに会いに行きます。

 あ、学校とかの途中だったりしたらごめんね。多分、目の前に転移しちゃうと思うから。
















 登り始めた朝日を見つめ、瑞希は紅い瞳を眩しそうに細める。

 城壁から見える町並みは、朝日に照らされればさぞかし綺麗だろう。実際何度か見てきたが、瑞希は毎度その美しさにため息を漏らした。


「それも今日で最後になりますかねぇ」


 ポツリと呟き、城壁の外に両足を放り出す形で座った瑞希は左手に嵌めた指輪を一瞥する。

 メルヴィアが消えておよそ2週間の今日。瑞希は城を出る決意をした。


「色々考えたけど……やっぱり、このままじゃいられないよ」


 既にその事は王に、メルヴィアの父に伝えてある。最初は止められたが、瑞希の強い意志を感じると黙って首を縦に振ってくれた。

 王には城を出ることを伝えたがフローラやフィオナには伝えていない。きっと、言えば無理にでも止めに入るだろうと思ったからだ。


 瑞希は指輪から剣へと目を移すと、少しだけ鞘から取り出してみた。

 その剣は、瑞希が騎士となった日にメルヴィアから授かった剣である。あの日は王オースティンから直々に剣を授かる手筈だったのだが、いつの間にか乱入していたらしいメルヴィアがどこから持ち込んだのかわからないこの剣を瑞希の騎士勲章としてしまった。もちろんその後にちゃんとオースティンからも剣を授かってはいるが、彼の騎士としての剣はメルヴィアから貰ったこの剣だ。オースティンに貰った剣が武競祭でメルヴィアの手によって真っ二つに折られていると言うこともあるが、それは間違いなく彼の愛剣であった。

 瑞希は剣を鞘に戻すと、立ち上がって朝日に照らされ始めた城下町を見下ろす。

 脳裏にメルヴィアと過ごした日々が流れ寂しさが募るが、楽しかった思い出のおかげでそれを誤魔化すことができる。


「……できれば、メルと見たかったな」


 とは言え、完全に誤魔化しきることはできずやはりポツりと本音を溢してしまう。

 最愛の少女が隣に居ればきっとこの光景も美しさに磨きが掛かっていただろう。だが、その少女はここにはいないのだ。


 しかし、瑞希は彼女がこの世界から消え去ってしまったとは思えなかった。

 彼女から授かったのは、剣や思い出だけではない。彼女の力が、瑞希に宿っている。そして、その力が、彼女はこの世界にいると伝えてくれているのだ。

 それは酷く曖昧なものではあるが、どこからか彼女の存在を感じるのだ。彼女を失ったショックで狂ってしまったのではない。確かに、彼女はどこかにいる。


 だから、瑞希が城を出るのは自棄に駆られてではない。最愛の少女を迎える旅に出るのだ。

 再開の可能性は低いだろう。だが、絶対に会える自信が彼にはあった。


「次元を越えて出逢えたんだ。同じ世界で、強い縁があって逢えないはずがないさ」


 そう気軽に、しかし力強く言って瑞希は朝日に背を向ける。

 一歩一歩前に踏み出す彼の足並みに、迷いはない。










「…………………」


 ゆっくり起き上がった彼女は、カーテンの隙間から昇りつつある朝日を見て忌々しそうに目を細めた。

 しかし、すぐに鼻腔をついた微かな甘い匂いにカーテンから視線を外す。そして、再びベッドに横になると一晩中腕に抱えていた末妹の衣服に顔を埋めた。


「…………メル」


 溺愛する末妹の名を呼び、末妹の匂いで溢れるこの部屋の中心で、彼女は狂気に包まれていく。


「私は、まだ、あなたに」


 小さく、弱々しく、だがどこか狂った様子を感じさせる声で、彼女は小さく誓う。

 それは、末妹が懇意にする彼の誓いに似て非なるもの。


「ああ、メルヴィア………」


 それは、近い未来に起こる一つの騒動のきっかけ。

 しかし、誰も彼女の狂気に気づけない。立ち止まってしまった彼女に双子の妹が気付くのは、もう彼女を止められなくなるその日。


 彼女は今日も、人知れず狂気を内に秘めていく。

大分雑ですが……これで第一部終了です



次回は第二部プロローグか、外伝、番外編的なものになるのかな?

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