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赤ずきんは童話の世界で今日も征く  作者: 柿の種


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Another Story 【夢見れば福来る、とは限らない】


■赤ずきん


私に向けて放たれた熱された石を、スーちゃんのスキルによって逸らす。

それと同時、私は駆け出しこちらを睨んでいる下手人……【火正月】猿柱(えんちゅう)

へと接近し、猿柱が避けられない距離で【その脅威は這い寄るように】を発動させ、その喉元を掻っ切った。


『ギィッ……!』


最後っ屁とでもいうべきか。

猿柱がこちらの身体を掴んでこようとしたものの、【浮遊霊の恋慕】によって動きを止められそのままその身体は光の粒子となって消えていった。


<正月イベントモンスター討伐(1/1)>

<【福袋】を手に入れました>


視界の隅に存在するテキストログにそんな文字が流れたのを見て、一息。

そう、私達は今正月イベントともいうべき突発イベントに参加していた。


『火正月』という昔話に登場する金持ちが変化した猿……という設定の猿柱を倒すことで、ドロップ品として何が入っているか分からない福袋が手に入るというイベントだ。

街を除く全フィールドで出現しているため、割と頻繁にその姿を見かける事が出来た。


((大丈夫ですか?))

「大丈夫。これくらいなら他の子たちを呼ぶ必要もないしね」

((でもプレイヤーくらいは……))

「あぁ、そっちの方が無理だね。いつ嫉妬で背中から撃たれるのかわからない」


現在私が居るのはルプス森林、その浅層。

元々ここを支配していたコートードを従えているためか、以前とは違いほぼほぼ敵とエンカウントする事はなくなったものの、少しはエンカウントする中で何故私がソロ状態でここにいるかと言えば、だ。


単純に他のプレイヤーと共に動くことが難しいから、というのがある。

私の戦い方は基本的に【憑依】を前提としたものだ。

だからこそ、私自身が前に出るか後ろから攻撃するか。


しかしながら他のプレイヤーは、まず自身が隠れてから……という【憑依】を前提としない戦い方をしている者がまだまだ多い。

内部データの好感度などを参照しているからだろう。【憑依】自体も掲示板を見る限り珍しいものとなっている、らしい。だから、


「私はこうやって1人で福袋を集めてるわけだねぇ」

((成程ですね。……ちなみに、内容を聞いてないんですけど……その福袋の中は何が入っているんですか?))

「ん、色々かな。素材の場合もあるし、回復薬や戦闘に使えるものの場合もある。お金の場合もあれば、お金にすらならないゴミの場合もある。……おっと、今見えないはずなのにスーちゃんがジト目してるのが分かるぞぅ?」

((いや、ゴミって……私が住んでいた所ではありませんでしたからね、福袋。どんなものかと思えば……))


そう言ってくる彼女の言葉を苦笑いしながら聞いていれば。

後方でガサ……という音が聞こえてきたのが分かった。

瞬間、お互いに言葉を発するのをやめ、スキルを発動させて迎撃態勢をとったものの、その音を立てた者が意外な人物だったために手が止まってしまった。


「お、おいおい。やめてくれ。味方だ味方」

「……おや、スキニットくんじゃないか」


そう、私と共にこのルプス森林のボスを討伐したプレイヤーであるスキニットその人だった。

彼はアナ……バーバ・ヤーガを【憑依】させているのか、魔女のような姿をしているためこちらの不可視の刃の事を感じ取れているようで……もし彼がこちらを何らかの理由で襲ってきた時は他のスキルで攻撃したほうがいいだろうと考えてしまっている。


「どうしてここに?……って聞くまでもないか、私と同じかい?」

「そういうこったな。流石にボス1体倒してるのと倒してないのとじゃ見られ方が違ぇわ」


彼も私があまり一目につかないように行動しているように、同じ理由から人の多いところからこちらへと移ってきたのだろう。

弱体化したといっても、速さは健在な人狼たちがいる森だ。

どうしてもその速さ対策が出来ていないプレイヤーは入ってくる事が出来ない……ある意味私とスキニットにとっては聖域のような場所になっているのかもしれない。


「丁度いいか……スキニットくんも正月のこんな昼間にインしてるって事はそういう事だろう?」

「あぁ。そっちはどうだ?何個集めた?」

「3個だね。そもそもこっちに近寄ってこないんだ。人狼王(あの子)の所為かな」

「多分な。……こっちはさっき入ったばかりだから、まだ1だ」


うんうん、と頷きながら彼にパーティ申請を投げておく。


「そういえば、だけど」

「うん?」

「スキニットくんは信じるかい?掲示板のアレ」

「あぁ、アレな……信じてなかったらここにはいないだろう?」

「そうだよねぇ……」


そして私達がこうやってイベントに参加している理由もきちんと存在する。

その理由が気になったのか、自力で契約の書から出てきたアーちゃんが呆れた目でこちらを見ながら聞いてくる。


『で、マスター達は結局そんなに何が欲しいのよ?』

「「マイハウス獲得券」」


そう、掲示板に突如上がったスクリーンショット。

そこには<マイハウス獲得券を手に入れました>というログと共に、チケットのようなものが目の前に出現している場面が収められていた。

瞬間、掲示板はまともに機能しないほどの祭り状態。

私とスキニットもそこに参加し、自身も欲しいと思い……今ここで猿柱を狩っている。


『……そんな欲しいの?マイハウスって?』

「あぁ、アーちゃんはあんまり分からないか。ゲーム内の家って結構重要なんだよ。例えば生産施設化したりとか、人によってはお店開いたりするから」

「そうだな。俺の場合は基本的に倉庫代わりになりそうだが……あるとないとじゃ全然違うもんだからな。そりゃほしい」

『成程ね……』


理由としてはそんなもの。

特に私は【木工】スキルを十分に活かすための場所が欲しいと思っていたところだったために渡りに船だったのだ。


「よし、スキニットくん。行こうぜ!次はあっちだ」

「おう……索敵系のスキルでも使ってんのか?」

「そうそう。この状態だとスーちゃんは使えないからコートードのスキルだね」

「便利に使ってんなぁ……元ボス」

「使えるものを使っているだけさぁ」


そんな会話を交わしながら、私達は森を駆ける。

マイハウスを夢見て行われた猿狩りはその日遅くまで続き……結果として、2人の男女が泣き崩れたとのことだが、真偽は定かではない。


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