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Episode 3


……森の名前がルプス森林。世界的な設定だと……成程なぁ。

この世界(ゲーム)、Fantasia Onlineでは複数の童話の悪役たちがあちこちで様々な悪事を働いているらしい。

草原にいたモンスターたちはこの悪役たちが放った刺客のような役割のようで。

言ってしまえば、敵国からの侵略者とそう変わりない。


では、それらの親玉である悪役たちは何をやっているのか?

その答えの1つとして、今私の目の前に広がっている森が存在している。

悪役たちは、各地に自身の影響が広げやすい領域を作り出し、そこに陣取り刺客を送り込んで人々の命を脅かしているのだ。


「好き放題している悪役たちを倒す役目を持ってるのが、『紡手(私達)』ってことねぇ……なるほどなるほど。今度から設定くらいはしっかり調べておいた方がいいなぁ」


出来る限り事前情報を仕入れていなかった弊害がここで出てきてしまった。

少し反省しつつ、改めて目の前の森へと視線を向ける。


ルプス森林。

ここも、悪役の中の1人?1体?1匹?が陣取っている領域の1つらしい。


Lupus(オオカミ)森林。うーん、名前的にも私が攻略したいなぁここ」


ルプスはラテン語でオオカミ。つまりはオオカミの森。

童話で出てくるオオカミは大抵悪役で、それも森で出てくることも多い。そして、私には浅からぬ因縁が存在する相手でもあるだろう。

何せ、私の【契約】した童話の登場人物は全員が全員赤ずきんという……オオカミが絶対悪として登場する童話作品のキャラクターなのだから。


「よし、ホントは森の中でやりたかったけど……仕方ないか」


そう言いながら私はステータスを開いた時に目についた契約の書という名前の本……腰からぶら下がっている本を手に取った。

【契約】の使い方なんてものは知らないし、キャラクリエイト時に何も時計ウサギから言われていないという事は、そこまで特殊な動作は必要ないのだろう。


恐る恐る何も書かれていない本の表紙を指で撫で、ゆっくりと開いていく。

初めて契約の書を開くからか、何やら神々しいエフェクトが本の頁1枚1枚から溢れ出していき、私の視界を白く染めていく。


次に目に入ったのは、先ほどまで私がいた草原と森の中間地点の風景ではなく。

地平線までクリーム色1色の、何もない空間だった。


「ここは……」

『あ!来たみたいだよ皆!』

『……全く。私達の『紡手(リーダー)』は他のと違って行動が遅いのね』

『他と違って慎重、と言うべきでしょう。私が言うことでもありませんが』


背後から声が3人分掛けられる。

そのどれもが高い少女の声。

声の主がある程度予想出来ているものの、背後へと振り返りその姿を視界に捉えた。


そこには、赤い頭巾を頭から被った少女が3人、こちらを伺うような視線を向けながら立っていた。

童女のような姿の子、酒やパンが入った籠を持つ15歳くらいの子、そして大人しそうな高くても12歳程度の子だ。


1人は笑みを、1人は少し面倒臭そうに、そしてもう1人は少しだけ心配そうな表情を浮かべつつ、私の言葉を待っている。


「君達が、私の【契約】した赤ずきん達……かな?」


私の質問に対し、3人は首を縦に振ることで肯定の意を示した。


「なるほど、ということは此処は【契約】した登場人物達と話し合いが出来るエリアって事でいいのかな」

『そうだよ!まぁ全員が出てくるのはレアなんだけどねー』

「おや、そうなのか。じゃあ何故全員?」

『簡単な話よ。……貴女も赤ずきんなのでしょう?呼び名がごっちゃになるじゃないの』

「……あー、そうか。私も含めて4人も赤ずきんが居るならそうなるよねぇ」


全員いる理由は簡単で。

単純に言えば赤ずきん3人を選んだ上で赤ずきんという名前を付けた私のせいだった。

申し訳ない、と頭を下げつつ問題解決のために話し始める。


「とりあえず、君達がどの作品の赤ずきんなのか教えてもらってもいい?何分姿が似通っているし、名前的にもあれだからね」

『おっけー!じゃあ私から!……私はそのまま『赤ずきん』の赤ずきん!よろしくね、『紡手』さん!森での動き方とか、採取は任せてねー!』

「うん、私はそういうのに詳しくないから任せるよ」


元気よく最初に教えてくれたのは童女の赤ずきん。

私にとっては一般的な、ごくごく普通の赤ずきん。

赤毛のショートの髪と青い目が綺麗な可愛い子だ。


『次は私ね。……『少女と狼』の赤ずきんよ。銃火器の扱いなら任せなさい』

「うぉ、いいね。それ猟銃かい?戦闘は任せるぜ」


次は15歳くらいの、私を除いた赤ずきん達の中では一番年上の子。

紹介と共に籠からどうやってか取り出した、猟銃のような……しかし現実には存在しない筒の長い銃を持って礼をする。

茶色の長いストレートの髪に、赤色の目が良く映えている。綺麗な子だ。


『最後は私ですね。……『小さな赤頭巾ちゃんの生と死』の赤頭巾です。よろしくお願いします。危機察知や索敵などが出来ますよ』

「よろしくね、君が探索時のキモになりそうだ」


そして最後の12歳くらいの赤頭巾。

唯一、この場にいる少女達の中で狼に殺されてしまった子だ。

金色のセミロングくらいの髪に、綺麗な半目の碧眼がこちらを値踏みするように見据えていた。


「よし、3人ともありがとう。……私が君たちと【契約】を結んだプレイヤー……いや、『紡手』の赤ずきんだ。色々と面倒や迷惑をかけると思うけどよろしくね」


そういって、彼女らと握手を交わしそれぞれの呼び名を決めていった。

……余談ではあるものの、その時に「赤ずきんA赤ずきんB赤ずきんCとかじゃだめなの?」と言った瞬間、『少女と狼』の赤ずきんから殺気を乗せた視線が飛んできたのは……なんとも解せない話ではある。

呼びやすい方がいいじゃないか、わかりやすいし。


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