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赤ずきんは童話の世界で今日も征く  作者: 柿の種


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Episode 25

みじかめ


<ルプス森林 中層>


ある程度周囲を警戒しながら歩くこと暫し。

私達はこれといって苦戦することもなく、中層へと辿り着いた。

私とスキニットはお互いに目を配り、【憑依】をする。


私はスーちゃんと。

スキニットはアナと。

それぞれ【憑依】が完了すると同時、周囲の警戒を今まで以上に密に行っていく。


「……本当にいたのか?」

「いたよ。というか、このゲームでの初死亡はそいつさ」

「【人狼王】か……」


スキニットには、中層に【人狼王】コートードというモンスターが出現し私に襲い掛かってきたことは伝えてある。

その際、即死したこともだ。


実際、この話を聞いたスキニットは信じられないような顔をしていたものの……今現在、中層に踏み込んだ彼の顔に油断は見えない。

それもそうだろう。

……周囲が静かすぎるなぁ。


「スキニット」

「分かってる。お前ら、警戒しとけよ。……ほら、牛若丸。お前もとっとと出てこい」

『わ、わかったって!』


スキニットは契約の書を取り出し、誰かを召喚した。

その見た目は言ってしまえば、戦国武将をコスプレしている少年のようにしか見えない。


「紹介しよう。こいつが俺の3人目、牛若丸だ」

『うぅ……よろしく。中から色々見てたよ』

「あぁー……うん。よろしく」


腰に刀を下げている、と言う事は近接戦闘が可能な登場人物なのだろう。

スキニットの方をみれば、私の考えを肯定するように頷いている。


「まぁタンク役にはなってくれるはずだ」

「成程、それは良いね」


私とスキニットの急造パーティは、急造というだけあって様々な問題が存在している。

その中でも、『前衛の数不足』という問題は深刻だった。


私を含めた私側の戦力は、

・アーちゃん 近接戦闘は出来るものの、前衛は出来ない

・スーちゃん 得意なのは中距離、前衛ではない

・サーちゃん バーサーカー

・私 論外

というもの。

【憑依】をしなかった場合での考えの為、【憑依】をすればもっと別だろうが……私の身体は1つしかないため、考えるだけ無駄だろう。


スキニット側もほぼ似たようなもので、

・アナ 魔術師。前衛なわけがない

・ジョン 狩人。前衛はしない

・スキニット 論外

と、見えている札だけで考えると本当にバランスが悪いパーティなのだ。


「……ん?それだったらスキニットくんに【憑依】してた方がいいんじゃないの?」

「いや、な。あんまり俺にまだ慣れてなくてな。出来ねぇんだ」

「あー……成程ねぇ。そりゃ仕方ない」


そしてそこに加わった牛若丸。

他のゲームで前衛などをこなしているらしいスキニットが前衛をこなせると判断した、それだけで技量は信用できるだろう。


「じゃあ行こうか。サーちゃんは本気でお願いね」

『なんで私名指しなのかな!?』

「そりゃそうでしょ」


表面上は皆楽しそうに、しかしながらそこに流れる空気は張り詰めたもので。

何処にいるかもわからない【人狼王】の急な襲撃を、いつでも対応できるように集中していた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



■???


彼は腹を空かしていた。

かつて、喰らった獲物を横取りされた時から彼の腹が満たされることはなく。

目につく動くものを全て喰らっていたら、気が付けば彼が頂点となっていた。


彼の後に勝手に続く者たちが現れ、彼はそれらが続くことを黙認していた。

彼の原動力は空腹だ。

我慢できなくなれば、後ろについてきている者らを喰らえばいいだけのこと。

そう考えて。


そうして幾年。

つい先日、おかしな恰好の獲物を発見した。

何処か頭の奥がチリチリと刺激されるような、赤色の頭巾を被り。彼と同じ耳と尾を持った女。

彼にとって、人間というのは獲物を横取りした邪魔者という存在だ。

だからこそ、殺して喰らってやろうと思った。


しかし、その女はどうやってか。

その場で死ぬことなく、光となって消えていった。


感触はあった。

匂いもあった。

恐怖も勿論そこには存在した。


しかし、消えた。

獲物をまた、逃がしたのだ。


彼は、激怒した。

1度ならず2度までも、また人間に獲物を逃がされたと。

そして、彼は決意した。


あの女が再度、この森に現れた時。

その時は使えるもの全てを使い、殺し、腹を満たすのだと。


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