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赤ずきんは童話の世界で今日も征く  作者: 柿の種


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Episode 18


「じゃあ喚ぶから少し離れてろよ」


スキニットが先程とは違い、腰に下がっていた本を手に取り開く。

『紡手』が自身の【契約】している登場人物たちを喚ぶ時の動作だ。

……うーん、この動作も省略できそうだよね。

先程のアナとアーちゃんが自分の意思で召喚されたのを考えると、もしかすれば一々開く動作など要らない可能性もある。


「【喚起:狩人】」


瞬間、彼の目の前に光が集まり人の形を成していく。

外套に身を包み、人の身で引けるのかわからないくらい大きな弓を背負ったその姿は、狩人というよりは他の何かにしか見えなかった。


俯いてこちらを見ない彼に対し、スキニットが小突きながら話しかけた。

どうやらある程度は気安い関係を築いているようだ。


「ジョン、自己紹介でもしとけ」

『……あぁ、すまない。突然の申し出を受けてくれて本当に感謝する。俺は『赤ずきん』の狩人だ。今スキニットが呼んだように、ジョンかもしくはジョン・ドゥーとでも呼んでくれ』

ジョン・ドゥ(名無し)、ね……。よろしく、私はテラーとでも呼んでね」


ジョン・ドゥ。外国などで身元不明の人物や、所謂『名無しの権兵衛』の外国版としてよく使われている名前だ。

そんな名前を、物語の登場人物である彼が使う。なんとも皮肉が効いている。

そう思いながらも私は彼に話をするよう視線を向けた。

今回の目的を果たさせるためだ。


『どうやら語り部(テラー)さんも早く話を進めてほしそうだ。申し訳ない、普段人とは話さないから不慣れでね』

「いや、問題ないよ。そういうのは仕方ないからね……ましてや狩人っていえば、森で獲物を狩り糧にして生きている……大体はそうだろう?」

『お恥ずかしい事にその通り。礼儀なんてものもないが許してくれ。……では、本題を。そちらのお嬢さん』


狩人……ジョンは、スーちゃんの方へと視線を向けた。

ここからは少し離れた位置にいた方がいいかもしれない、そう考え2人の赤ずきんとスキニットにアイコンタクトでそう伝えようとしたとき、こんな言葉が聞こえてきた。


『俺と決闘をしてくれないだろうか』

『……どういう意味でしょうか?』

「『『は?』』」


スキニットが驚いていない辺り、彼はいつも通りの事しか言っていないのだろう。

いや、確かにスキニット自体はジョンをスーちゃんに『会わせてほしい』としか言っていなかった。

勝手に話をするだけだと考えた私達の早とちりではあるものの。


『そのままの意味だ。君を契約の書の中から見た時からずっと戦いたいと思っていたんだ』

『……うちには戦闘向きのが1人いますが』

『彼女は違う(・・)。次いでに言えば、一番強いであろう女の子も違うな。君だ』


……おいおい、あの人アーちゃんはともかくサーちゃんの事まで見抜いてるよ。

そう思った所で、少し違和感を感じ……すぐにその正体に思い当たる。


「ごめん、質問いいかな?」

『あぁ、問題ない』

「君、『赤ずきん』のって言ったよね?この子の事知らないの?」


サーちゃんの頭を撫でながら、ジョンに対してそう聞くと、申し訳なさそうな顔を向けられる。


『申し訳ないが覚えていない(・・・・・・)。君は、俺達が俺達という存在になるまでの過程を知っているか?』

「知っている、というかまぁ色々聞いてはいるかな」

『それなら話は早い。今の状態、存在になる時に色々と欠損している者もいるということだ。俺の場合は生前の記憶、という形でな』

「成程ね。……ありがとう、またあとで話そうか」

『……?了解した』


恐らく、彼は契約の書の中から見ていたとはいったものの、声などまでは聴いていなかったのだろう。

だからこそ、相手の正体も分かっていない。

私が頭を撫でている存在の事も、今自分が話しかけている存在の事も。


『……そうですね、決闘。お受けしましょう』

『っ!本当か!』

『えぇ。しかし条件を2つ付けてもよろしいですか?』

『あぁ、何でも(・・・)飲もう』


その言葉を聞いた瞬間、スーちゃんの口元が三日月のように歪んだのが見えた気がした。


何でも(・・・)ですね?』

『あぁ、君と決闘出来るならば』

『それでは1つ目、その決闘は【憑依】状態で行う、という事でよろしいですか?』

『あぁ、問題ない』

「「異議あり!」」


スキニットと声が重なりつつ。

しかしここは抗議しなければならないと考え声を挙げた。


「いや、デメリットとか考えなよ!ダメだろう!?」

「そうだぞ、流石に決闘の末どちらかが消えるなんてなったら共闘以前の問題だ!」

『いや、大丈夫ですよ。そこもルールを決めるので。というか、ただの村娘である私が狩人さんに勝てるとでも思ってるんですか?少しでも勝てるようなルールを設定するに決まってるじゃないですか』


スーちゃんは何言っているんだこいつらという目でこちらを見てくるが、仕方ないだろう。

今まで傍観者の立場で見ていた舞台に、突然出演者として引っ張り上げられたのだから。


『はい、ではジョンさん。2つ目、決闘の終了条件は何でもいいから相手に1撃与える、です』

『あぁ、それも問題ない』

『じゃあルールも決まったわけですし、場所を移動しましょうか。ここじゃなく平原の方がいいですよね?』


こちらを見ながら言ってくるその姿に、少しだけ困惑しつつも私達は頷いた。


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