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赤ずきんは童話の世界で今日も征く  作者: 柿の種


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Episode 12


元々の目的であった仮称『憑依コンテンツ』――もとい【憑依】システムを試し、ある程度動けることを確認した私達は、そのままの状態で森の奥へと再び歩き出すことにした。

といっても、前日と違い巡回している人狼が多いのか度々立ち止まりながらの進行とはなっているのだが。

ちなみに隊列、というか歩く順番はアーちゃん私スーちゃんという順番で、真ん中の私を守るようにして進んでいる。


「うん、全然見え方が違うね」

((スキルが発動してるみたいだねー))


しかしながら、サーちゃんのスキルのおかげか森の中での歩き方や気を付けるべき所などがはっきりとわかるようになっていた。

【森の中の歩き方】。

十中八九、このスキルのおかげなのだろう。


今もこちらへと迫ってきている人狼の姿がはっきりと視認することが出来るし……次の瞬間に頭から赤いエフェクトを弾けさせながら消えていくのもはっきりと見えていた。

あまりこのゲームではG表現、というか。リアルな表現はしないらしい。


「しかし、これくらい見えるようになるってことは、私のアバターのスペックって結構抑えられてるんだねぇ」

『そりゃあそうでしょう。普段はどう見えてたのよ』

「んー……なんというか、ある一点から先を見ようとすると、風景がぼやけていく感じかな」

『成程、それは確かに制限されているといってもいいのでしょうね』


そんな話をしながら、私の力を確かめるように奥へ奥へと進んでいけば。

アーちゃんが唐突に私の前に手のひらを向けた。


「……数は?」

『5。多くはないけど、劣等人狼以外が3居るわね』

「スーちゃん、後方は?」

『今の所は何も。けれど私の索敵範囲に入らないように潜んでいる可能性は十分にあり得ます』

((一応私の出来る限りの索敵でも何も引っ掛かってないよマスターさん))


3人の言葉を聞き、考える。

まず間違いなく、私達の進行方向に存在する5体の人狼……それ以外も含めた群れのような何かは、前日の撤退理由である人狼たちと同じ役割のものだろう。

つまりは、帰ってこない巡回中の劣等人狼や不規則に響いている破裂音の原因を確かめるための派遣部隊。


問題解決程度ならば問題ないくらいの実力と、何か外敵が存在した場合になんとでもなる実力を持ったモノなのだろう。


「よし、迎撃しようか。アーちゃん私の事を考えなかったら何体でも問題ないんだよね?」

『当然でしょう?これくらいの数はいくらでも殺してきたわ』

「おーけぃ、スーちゃんは周囲の警戒をよろしくね。後方から迫ってくる何かがいた場合は容赦しなくていいよ」

『了解です。……マスターさんは?』

「私は……」


バスケットに手を突っ込み、アレ(・・)を取り出した。


「この状態での戦闘能力を確かめておかないとね」


じゃら……と音を立てて地面へと落ちていく赤黒い染みのついたモーニングスターを手に持ちながら、私は不敵に笑ってみせた。


『え、無茶じゃない?』


アーちゃんは何か言っていたがこの際無視をした。




「……にっ、二度と前線で戦ってやるもんか……ッ!!」

『だから言ったじゃないの、無茶だって』


結果から言えば、私達……というか私は1体の劣等人狼を倒すことは出来た。

しかしそこが限界でもあった。

何故か(・・・)相手の攻撃が当たらないが故に、さっさと前線から下がりスーちゃんに守ってもらいつつ心を落ち着かせていたものの。

予想以上の迫力に、すっかり私の心は怯え切っていた。


「アーちゃんたちはマジであんなのと沢山戦ってきたんだね……いやぁ、尊敬するぜ」

『私は直接真正面からは戦ってはいませんが……まぁ、相手も生死が掛かっていますからね。その分迫力も出るでしょう』

「確かにねぇ。私も出来る限りの支援をしたいけれど……この分だと、やっぱり後方からちくちく矢でも撃てる子と【憑依】した方が良さそうだ」

『まぁサーならサー自身が戦った方が良さそうよね』


1体とはいえ、倒せたのはサーちゃんからのリアルタイムでの助言があったからこそ。

その通りに身体を動かし、敵の攻撃を避け武器による攻撃を当てただけのこと。

私が指示通りに身体を動かすことが出来たことにも驚きだが、それ以上に私に接近戦の素質がない事を思い知った1戦だった。


……そういえば、『赤ずきん』なら狩人とかキャラがいたよねぇ。

狩人といえば、アーちゃんが使ってる猟銃や、物語によっては弓を使っている者もいたりするなど、言ってしまえば遠距離攻撃をメインにしている登場人物だ。

『赤ずきん』があぁなのだ。もしかしたら『狩人』も複数人いる可能性もある。

それこそ、このルプス森林のどこかで今も戦っていたりする可能性もあるのだ。


「ねぇ、アーちゃん」

『なぁに?』

「アーちゃんの物語の『少女と狼』って、他の『赤ずきん』系の物語と同じように狩人みたいな存在っているのかい?」

『……そうねぇ。いると言えばいるし、いないと言えばいないわ』

「……どういうことだい?」

『いえ、ややこしい話というわけではなくて。単純に、『狩人』と『赤ずきん』っていう役割(ロール)を私が1人で担っているってだけなのよ。だから狩人()はいるし、赤ずきん()もいるのよ。でも、狩人(誰か)になるといない、としか答えるしかなくなるの。……分かる?』

「分かるよ。成程ねぇ……そりゃ強いわけだ」


簡単に言えば、1人2役。

『赤ずきん』役と『狩人』役をアーちゃんが担っているため、物語における『狩人』といえば彼女になるし、彼女以外の狩人は存在しない。

だからこその狼特攻スキルでもあるのだろう。


本来、ヒロインが持つべきではない血生臭いスキルを持っている理由はそういった所から来ているのかもしれない。


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