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Episode 9


そんなこんなで。

私達はとりあえず仮称『憑依コンテンツ』を試すため、森の中の少し開けた場所へと移動した。


私とサーちゃんはそんな場所の中心に向かい合うように立っていた。

近くには何が起きても、そして何が襲ってきてもいいようにとアーちゃんとスーちゃんが待機してくれている。


「まぁさっきは流れであんな感じに言ってたけど、別に反対ってわけじゃあないんだろう?」

『そうだけど……出来るかどうかわからないし!』

「そりゃそうだよねぇ。私も事前情報調べてないから、ホントに出来るのか知らないし。……ホントに出来るの?アーちゃん」

『出来る、というか舎弟(ゆうじん)はやってるって話をしていたわよ』

「成程ねぇ……」


アーちゃんが言うには、ここから互いの身体のどこかに触れている状態でこう……グワーッと勢いでやれば憑依できるらしい。

実に感覚派な方法だが、まぁ実際そういうものなのだろう。

私も頭で考えるよりかは体で、感覚で覚えてしまった方が楽だから。


一方、サーちゃんはそんな感覚派な考えについてこれないのかハテナマークを頭の上に無数に浮かべているように見えた。

というかよく見てみればスーちゃんもよくわかっていないように見える。

だが、確か彼女も彼女で憑依に関して知識として知っている節があった。

聞くならば彼女の方がよかったかもしれないな、と苦笑しつつ問いかけた。


「スーちゃん、説明頼める?」

『いいですよ。……少しオカルト的な話にはなりますが、この世界における憑依というのはマスター……『紡手』の魂の上に私達童話の登場人物たちの魂を被せ、強化と防護を図るものです』

「成程?」

『この被せる、という所が重要で。一体化をしてしまうわけではなく、憑依する側、される側の意識は残ったまま1つの身体に収納されるわけなんです。で、ダメージなど外的要因によって影響されるのは』

「あー、被さっている上の存在……つまりはこの場合だと君たちになるって事か」

『そうなります。それ以外にも被さっている側の技能なんかも扱えるようになるため出来るようになっておいた方がいいとは思いますよ』


イメージとしては、大きな布を頭から被っているような形だろうか。

確かに便利だ、と思いつつ。しかし当然リスクもあるんでしょう、と半ば確信めいたようにスーちゃんに聞けば、首を縦に振って肯定した。


『当然リスクは存在します。穴の開き過ぎた布は使えなくなるのと同じように、この状態でダメージを受けすぎた場合……例えば、死んでしまった場合マスターは生き返りますが、その代わりに憑依していた登場人物は死ぬ……つまりは、永遠に戻ってこないものとなります』

「二度目の死、ってことかな?」

『そうなりますね。メタ的な話をすれば、一緒に行動していた記憶が無くなって元居た場所へと戻るだけなのですが……それも、結局死となんらかわりません。私達の知っていた誰かはもう二度と帰ってこないのですから』

「成程……中々なリスクだ。いや、元々は戦わない『紡手』が一時的にでも戦えるようになるんだから、仕方ないことではあるのかな」


私は……まぁ、あまり使わないかもしれない要素だ。

そもそも元々前線を切って戦うような性質ではないし、他のゲームでもあまりそういった役割(ロール)はしてこなかった。


ただ、彼女らの技能を使えるという点はかなり魅力的だろう。

アーちゃんのような戦闘特化の子とするかどうかは分からないものの、サーちゃんやスーちゃんのように後方支援型の子とすれば、私という弱点をカバーしながら支援を行う事ができるのだから。

今はしなくてもいいかもしれないが、今後レイド戦などが行われるときには必須となる要素だろうなぁと少し思った。


「ん、じゃあやり方は?」

『体の一部、どこでもいいので触れあいながら、憑依!って言ってくれればいいですよ。こちらとしては何もなくても出来るはずなんですが、所謂システム上の制限って奴です』

「成程ね。そっちの意思とかは関係あるの?」

『ありますよ。双方同意している状態じゃないと憑依を行う事は出来ませんから』

「……よし、じゃあ改めて聞こう。サーちゃん、憑依しようぜ」


あらかた、事前に知っておくべきだと思われる情報をスーちゃんから聞くことが出来たため、話を本題へと戻す。

元々はサーちゃんと憑依をするために今、こうやって色々と話してきたのだ。


サーちゃんは私の問いかけに対し、腕を組みうんうんと唸りながら難しい顔をしている。

分からなくはない。私でも、今の自分が消えるかもしれないけれど試してみようといわれたら絶対に悩む。

それがどんなに信用に足る人物であろうと、だ。


「まぁ、答えが出なくてもいいよ。アレだったらスーちゃんとやればいいし」

『私ですか?まぁいいですけど……』

『あらマスター。私は?』

「アーちゃんは、私がアーちゃんの銃とかを十全に扱える自信がないからダメ。1人で頑張ってね」

『残念。まぁ後で扱い方を教えてあげるわ』

「あは、お手柔らかに頼むよ」


ただまぁ、選択肢は別に1つではない。

私は3人の赤ずきんと【契約】を結んでいるのだから。

その上で、サーちゃんが答えを出さないならば他の答えを出した赤ずきんと共に力を振るうのみ。

元々彼女は戦闘向けの能力もしていないのだ。だからこそ、無理に戦場にあげるような行動をするよりも、彼女の意思を尊重したいとは思った。


『……いいよ、やる』

「おや、いいのかい?自分でいうのもなんだけど、別に嫌ならしなくてもいいんだぜ?」

『別に嫌じゃないよ。悩んでたのは戦闘能力がない私が憑依して大丈夫かなって所だけ』

「あー……どうなんだい2人とも」


実を言えば、私はサーちゃんのスキルだけは詳しい詳細を聞いていない。

いや、聞けていないというのが正しいだろう。

なんせ、サーちゃん自身が何故か恥ずかしぶって話してくれないからだ。

契約の書を使えば見ることも出来るのだろうが……私はとりあえず本人の口から聞くことが出来るまではそのままでもいいかな、と思っている。


『えぇ……?』

『いや、まぁ、えぇ。サーなら大丈夫でしょう。問題ないわ』

「だそうだよ?」

『2人とも何か私を勘違いしてない!?』


2人とも困惑、というよりかは言外に「何を言っているんだこいつは」という表情でそう答えてくれた。

つまりは戦闘能力の有無に関係なく、恐らく大丈夫なのだろう。

私は憤慨して2人に抗議をしているサーちゃんの手を取った。


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