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Prologue

新作です。よろしくお願いします。


■狼谷 赤奈


「やぁっと買えたぁ……あぁ、朝日が眩しい……」


朝。

まだ遊ぶには早く、出勤するには遅い時間に私は家電量販店からあるものを持って外へと出てきた。

何をしていたかと言えば、簡単で。


「流石に人気だよねぇ……新作だし」


あるゲーム企業が開発したゲーム、その新作が本日未明より発売されているのだ。

私はそれをいち早く手に入れるため、家近くの家電量販店に出来る限り早く並び、整理券を手に入れ、今しがたやっとそれを買う事が出来た。

流石に店の前で徹夜行軍なんてことはしていない。お店側にも周囲にも迷惑しか掛からないから。


今日発売のゲームである『Fantasia Online』。通称FO。

童話の登場人物たちがその悪役たちと切った張ったをすることになったという大まかな世界観しか前情報を仕入れていないものの、それでも買った方がいいと友人に薦められたために購入したのだ。

……家に帰ったらダウンロードしながら家事も済ませちゃおう。


そんなことを考えながら、私は一度背筋を伸ばした後に帰路へと着いた。



家に帰り、普段使っているフルフェイス型のVR機器にFOをダウンロードさせながら溜まっていた家事を済ませ。

お茶を飲みながら一息ついていると、ピピッという軽い電子音と共に、自身の持つ携帯端末にダウンロードが終わったという旨の通知が流れた。


「おっ終わった終わった。いやぁほぼ前情報無しでゲームやるのっていつぶりだろう」


そう呟きながら、私はベッドに横になりVR機器を装着しゲームを起動した。

意識が眠りよりも深く深く何処かへと落ちていく。

この感覚は、まぁなんだかんだ言って嫌いじゃない。




次に私の視界に映ったのは、何処かしらの森の中だった。

といっても、私がいる場所自体は森の中の開けている所のようで。

机に出来そうなくらい大きい切り株と、その向こう側から私の方へ笑顔を浮かべている懐中時計を首から下げたシルクハットを被ったバニーガールがそこには居た。


『ようこそFantasia Onlineへ!私はチュートリアルを務めさせていただくAIの時計ウサギと申します!』

「時計ウサギ……あぁ、アリスの?」

『そうなります !さて、では早速アバター作成をしていきましょう!』


時計ウサギが手を叩くと、切り株を挟むような形で左右にのっぺらぼうのアバターが出現した。

男性型、女性型で分かれているようで、自由に選択できるようになっているのだろう。


『まずは性別の選択です!』

「了解、女性で」

『分かりました!では次に細部の編集に移ります!現実の姿を元にしたスキャンメイキングと、他のゲーム作品で使っていたキャラを元にするデータメイキング、貴女自身の手で編集していくクリエイトメイキングの3種類がありますがどうしますか?』


時計ウサギから提示された方法は3種類。

適当に今までやってきたゲームから呼び出してもいいのだが、ここ(FO)では新しいキャラを作りたいという気持ちもある。

少し悩んだ末、私はスキャンメイキングを選択した。


『顔のスキャンを行います!この作業は少し時間がかかるため、先に他の項目を進めていきましょう!』


そう言って、彼女が虚空から取り出したのは巨大な本だった。

人くらいならば撲殺できそうな、そんな印象を抱いてしまうそれを軽々と持ち上げながら、時計ウサギはこちらへと変わらぬ笑顔を向け続ける。


『貴女がFantasia Onlineに降り立つ為の大事な要素!【契約(サフス)】ですね!』

「あー……ごめん、その【契約】って奴の説明をしてもらっても?」

『大丈夫です!……【契約】というのは、プレイヤーである『紡手(リーダー)』達だけが、これから選んでいただく各童話の登場人物の持つ力や特殊能力といったものを使えるようにするためのシステムのことです!』

「成る程ね。じゃあ決めちゃおう」

『はい!こちら一覧になります!』


時計ウサギは手に持っていた巨大な本を開き、こちらへと向けてくる。

見れば、そこには色々な童話作品がカテゴリごとに分けられ、どんな能力があるか、【契約】するとどんなことが得意になるのかが載っていた。

それと左上に『3』とだけ表示されていた。


「聞きたいのだけど、この3って数字は何かな?」

『あぁ、申し訳ありません!説明を忘れていました!……その数字は、今【契約】を行える登場人物がどれほどいるか、という数になります!3ならば3人と【契約】を行えて、能力を得ることができるという訳ですね!』


成る程、と頷きながら視線を本へと戻す。

カテゴリ分けされているからか、見やすくはなっているものの、かなりの数の童話が収録?実装?されているようで。

申し訳程度に存在していた検索機能を使って、ある童話の名前を検索する。


……ふむ?

検索した童話は『赤ずきん』。

赤い頭巾を被った少女が森の中に住んでいる祖母へお見舞いを持っていく途中、狼に出会い……という有名な童話だ。

しかし検索して出てきたのは3つの『赤ずきん』。


1つは、誰もが知っている童話の『赤ずきん』。

絵本になっていて多くの人が幼少時代読んだことがあるポピュラーなもの。


2つ目は『少女と狼』。

赤頭巾を被った少女が襲ってきた狼を返り討ちにするという、現代で普及されている赤ずきんを知っている人からすれば、かなり衝撃的な作品だ。


そして3つ目は、『小さな赤頭巾ちゃんの生と死』。

確か演劇作品、だっただろうか。そこまで詳しくないために詳細が分からないが、名前にもある通り赤ずきん関係の作品……なのだろう。


「ふーむ?ねぇ、時ウサギさん。もしかして童話の派生、というかその童話の関連作品もデータとして入ってるのかな?」

『あぁ!また説明を忘れていました!そうです、只今貴女様が調べられた『赤ずきん』然り、『不思議の国のアリス』然り、昔から存在する作品には後の読者の解釈による派生作品が生まれています!それらの中でも有名なものを何作かずつ収録している形となっているのです!』

「成程ね?じゃあ他にも探せば色々出てくるわけか……」


この分ならば、もしかしたらシンデレラの原典なんかも収録されているかもしれない。

それはそれで面白そうだ、と思いつつも私は検索に出てきた3つの『赤ずきん』、その主人公である赤ずきんを全て選択し、【契約】することにした。

システム上問題ないらしく、時計ウサギに何回か本当にそれでいいのか?とは聞かれたもののそのまま押し通した。


どうせまだサービス開始直後の作品なのだ。

効率的に、だとかそういった考えはもう少し時間が経ってから入ってくるであろう2陣3陣に任せればいいのだから。


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