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現在進行形の初恋その3

004


 湊舞花は僕の幼馴染である。


 舞花と僕が最初に出会ったのは僕たちがまだ小学生のときだった。


 元々はただの近所に住んでいるクラスメイトというくらいの関係でしかなかったのだけれど、お互い陸上を始めたことをきっかけに、僕たちはとても仲良くなった。


 それ以降、現在までずっと付き合いは続いている。


 僕が怪我をして陸上を続けられなくなった時も舞花のおかげで僕は救われたし、間違いなく今の僕があるのは舞花のおかげだといえる。


『――これからは私が達也の代わりに走る!!』


 そう言い切った舞花の陸上選手としての実力はなかなかのもので、今年は全国大会でも上位に入ることがほぼ確実視されている。


 舞花はこの業界では珍しいくらい遅咲きの選手で、これからの伸びしろを考えれば、数年後には日本を背負って立つ選手になるかもしれないとも言われている。


 また、舞花自身について話すと、彼女はとても人当たりがよく、明るい性格で、誰とでも分け隔てなく接するため、その健康的なルックスと相まって男子からの人気も相当高かった。


 本当に僕なんかにはもったいないくらいの幼馴染である。


 しかし、その一方で、彼女に関して浮いた話は全く聞かず、近くにいる僕ですらそんな素振りはこれまでまったくなかったと言っていい。


『今は陸上に集中したいから恋愛どころじゃないんだよね』


 舞花に尋ねると、いつもこんな感じで返答が帰ってくる。その言葉を僕はこれまで疑ったことはなかったし、第一そんなことは僕が気にするようなことではないと思っていた。


 舞花が魅力的な女の子であることは幼馴染である僕の目から見ても明らかなのだけれど、それでも僕たちはあくまでただの幼馴染で、そういう恋愛関係になることはきっとないのだろうと思っていた。


『幼馴染同士だと付き合いがない分お互いの良さに気付きにくい』なんてラブコメではありがちな設定だけれど、実際はそんなことはない。


 僕から見てもやはり湊舞花はとても魅力的で、きっといつか僕は舞花のことを異性としてより強く意識するようになるのだろうということは昔からなんとなく思っていた。


 でも、これまで僕たちはあくまで幼馴染という距離間であり続けた。


 ――だって、舞花は僕にとって家族同然に大切な人だから。


 それはきっと舞花も同じで、僕たちはお互いを失っては生きていけないくらい大切に思っているからこそ、踏み込めないのだ。


 そんな関係がずっと続くはずがないと心のどこかでは分かっていても、僕たちはお互いに向き合うことを恐れていた。




「舞花なら、最近練習に来てないわよ?」


 あの後、僕は舞花が心配になって家まで訪ねたが留守のようだったので、バスに乗って大学のグラウンドまで来ていた。


 今日は練習が休みだと言っていたけれど、何となく嫌な予感がして、僕は陸上部が練習を行っている大学のグラウンドまで向かった。


 グラウンドまで来てみると、やはりというか、陸上部は通常通り練習を行っていた。


 そこで舞花とよく一緒にいる部員で、僕も何度か話をしたことがある人に確認したところ、さっきの答えが返ってきた。


「何ていうかさ、舞花のやつ、最近スランプっぽいのよね。それで調子崩して心配していたんだけど、そしたら今度は何かと理由をつけて部活に顔出さなくなるし」


 ……知らなかった。舞花がスランプになって悩んでいたなんて。


 僕が知っている舞花はいつも明るく元気で、悩みごとなんてまるでなさそうなやつだったから。


「海野杜君、舞花見つけたら練習に来るよう言ってくれない? そろそろ大会も近づいているっていうのに舞花ってば何やってんだか」


 舞花の部活仲間は口ではそう言っているものの、舞花のことを心配していることが伝わってきて、僕は嬉しくなった。


「分かった。舞花に会ったら伝えておくよ。部活、頑張ってな」


 そう言うと、僕はグラウンドを後にした。

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