一豚目 転生早々の餓死は(´・д・`)ヤダ
まず最初にやること……
ってちょっと!思考してる間もないんだけど!?
死ぬって!!転生早々飢え死にはヤダアアアアア!!
ちなみに!この洞窟はオークの群れが住処にしているが、これといってルールはない!
というかこいつら利害が一致してるから群れてるだけで、必要がなくなればあっさり切り捨てそうなくらい愛着がない。
つまり俺がいつ殺されてもおかしくない!
うん、とりあえず外に出よう。
◇◇◇
洞窟は思ったより長かった。
俺が目覚めた場所から出口まで、大体10分くらいかかったと思う。
まぁオークの足だから人間だったらもっと遅いかもしれないけどな。
適当に方向を決めて歩いてきたわけだが、まぁ当たってたみたいで何よりだ。
そんなことを考えながら、上を見る。
洞窟を抜けた先は……なんと青空でした。
……うん、確かに見た目は青空なんだよ?
けどね……地平線、というか遠くを見ればわかる。
あれ、空じゃない。
何が言いたいのかって言うと……ここから見える一番遠いとこまで、大体1kmくらい。
で、そこは岩や土が盛り上がってるんだけど。
なんとそれが、空と繋がってる。
つまりあの青空は岩壁に色を塗ったようなもので、洞窟を抜けた先は広大な空間だったわけだ。
何であんな見た目になってんのかよくわからんけども……よく見れば天井の中央には、ガラスの様な水晶群が生えている。
どうやらそれから光が発生してるっぽい。
つまりあれだ。この空間……
間違いない、ダンジョンだ。
何でかって?
オークがいる場所で、こんな超自然的な広大な地下空間。
地下か盛り上がった山かは分からんけど。
とにかくそんな場所……ダンジョン以外ありえない!
まぁ俺のラノベ知識に基づいて言ってるだけなんだけどねー
つかぶっちゃけここがどこかなんて、考えても分からんし。
とりあえず俺は――
――食料が、欲しい(切実)
流石に他のオークを食うわけにもいかんしなぁ……
絶対負けるしな。
こうなると何か獲物を探さないとダメだよな……
おっ?
何だあれは。
一言で言うなら、角をはやしたウサギ。
茶色いモフモフの毛。
ドリルみたいな形の、尖った角
クリッとした黒いつぶらな瞳。
そして周囲の木と同じくらいの大きさ。
…………はい?
え、ちょっと待って。
周囲の木=俺より高いなんだけど!?
えっ、それと同じくらいって……
イヤアアアァァァァァアアアアアアアア!!
何であんな見た目とサイズがあってない奴がいるの!?
あれ可愛いウサギっつーか殺人兎じゃねぇかあああ!!
はっ!?いやまさか……この世界のオークって30cmくらいの大きさしかないとか!?
ハイすいません周囲の木はどう見ても普通の木ですね分かります!!
多分170cmくらいの身長がある俺よりデカいってどんなウサギ!?
そんな風に慌てる俺を。
クリっとしたつぶらな瞳(直径約10cm)が俺を捉える。
目と目が合う。
しゅんか~ん好~きだと~きづ~いた~♪
閑話休題
歌ってる場合じゃねぇよおおおお!!
イヤァこないでぇ!!
「グゥアッ!!」
ウサギが出していい声じゃねぇ!!
角ウサギ(大)の跳躍!
約20mの距離を一瞬で駆け抜けるっ!!
角ウサギの突進!!
相手は死ぬ。
いやダメでしょ死んだら!
とうっ!
華麗なステップで突進を避ける。
フッ残念そんな単調な攻撃は俺には通じないんだなぁこれが。
あっ、俺今飢え死あっちょっま
角ウサギの後ろ回し蹴り!!
入ったああああ!!
中田村田選手、綺麗に蹴り飛ばされました!!
ってギャアアアアア!!
蹴られました。
吹き飛びます。
木に衝突します。
オボェー
マジで死ぬ。
ヤバいなコレ……
ウサギの脚力半端ないっすわ。
元々瀕死だっただけあって意識が遠の……
「ブヒィッ、ブガギガオオオオオオオオオオ!!」
「ガゥァッ!?」
うおっ、転生してから初めて声出したけど、しっかり豚声じゃん。
オークの言葉に勝手に変換されてるっぽいなコレ。
つーかそんなことより……瀕死の状態で不思議な力が働いたりも、してないな。
ぶっちゃけちょっとアテにしてたんだけどなー。
まぁ……どうせ死ぬなら……全力でやってからにしましょうかね!!
とりあえず武器がないことには勝てるわけねぇ。
ぶっちゃけめちゃくちゃ痛いんだが……意識が飛びそうなくらい。
まぁそれで死んだらダメだからね。今は我慢しよう。
ウサギも警戒してるみたいだし、さっさと武器を探そう。
武器……武器かぁ。
都合よくあるわけねぇよな……木でも使うか。
側にあった手頃な木を掴んで、へし折る!!
「ブガァッ!!」
幸い、オークだけあって人間よりは力が強いらしい。
木はあっさりと、ってわけじゃないが、まぁ折ることはできた。
ゴブリンとかじゃなかっただけマシかな?
折った木の先端は割れ、いくつもの鋭利な棘が突き出てる状態だ。
これなら多分……
「ブギゴォッ、グゴガァッ!!」
「ギギャアッ!?」
さっきからウサギのイメージ崩してんじゃねぇよ!!
全力で飛び出し、怒りをのせて丸太みたいな木の槍(仮)を突き出す。
当然その程度じゃ躱されるけどな!
つーか天然物とはいえ武器とか初めて使ったわ。
その割には使えるし。
あれかな?オークの本能とかかな?
まぁ細かいこと気にしても意味ないよな。
「ブゴォブガゴォ!!」
「ギャギィ!!」
反撃の蹴り。
横に跳んで躱す。
体勢は崩れたが、手をついてすぐに立て直す。
角ウサギは足をふんばり、角を俺に向ける。
まぁこの体勢からやることっていったら……突進しかねぇよな。
角ウサギが弾丸の如く飛び出す。
ハッハーお前の動きは見切っグゴフッ!?
角は避けたが、角ウサギの胴体が掠った。
マジかよ……掠っただけでコレか。
まぁ、カウンターが成功しただけ良しとしましょうかね。
「ギャッ!?グギギャアアアア!?」
いやー、角ウサギの角が頭面積に比べて細くてよかった。
おかげで自分の勢いで木の槍(仮)にぶっ刺さってくれたからな。
頭に。
あれはもう生き延びれんだろ。
見た感じ刺さってる部分は短そうだが、明らかに頭蓋骨ぶち破ってるもん。
そのせいで可愛いウサギ(サイズと声を除けば)が血だらけウサギになってるもの。
ホラーだよマジで。
とりあえず、死んだモンスターはドロップアイテムを残して消える世界ならいいな。
―10分後―
すいません消えないんですけど。
適当に攻撃してたら角ウサギは息絶えたんだけど……消えないんですけど。
頭に丸太ぶっ刺してるんですけど。
グロい。グロいよ。
日本で生きてきた俺(犯人)には辛いものがある。
えー……絶対死んでるよねあれ。
実は生きてたとかないよね?
倒したら『レベルアップしました!』とか通知が来るかもと思ってたんだけど……それもないし。
うーん……
つーか俺もよく生きてるよねコレ。
オークの生命力半端ないわ……
とりあえずそろそろ餓死しそうだし……
うん、食おう。角ウサギ。
はいっ、というわけでね!
始まりました!三秒クッキング!
まず角ウサギの死体からね!革を剥ぎます!腕力で!!
次に肉をむしります!血抜きとかしりません!オークですし!
完成!!ねっ、早いでしょ!今晩の夕食にいかがです奥様。
いやまぁ悪ふざけはここまでに……食べよう。
腹減りすぎて生肉なのに美味そうに見える……
あれ?これもしかしてオークだから?
まぁいいや。ハグハグ
ハグハグハグ。
ハグハグハグ、ハグハグハグ、ハグハグハグハグハグハグハグ。
はっ!?いかん、三三七拍子刻んでおった!!
まぁそれはいいとして……なんかね、不思議な感じ。
意外と美味いんだよこれが。
ここが異世界で食べたのが角ウサギだからなのか……
それとも俺がオークだからか。
まぁめちゃくちゃ腹減ってるし気にしないでおこう。
―10分後―
うおっ、全部無くなっとる。
見た感じ100kg以上はあったのに……全部食ったんか俺。
なのに俺の外見大して変わってないんだよなぁ……
未だにガッリガリやぞ。
うーん、いや、それは一旦おいておこう。
食べてたら何か変なもんが出てきたんだ。
角ウサギの体から。
見た目は……黄色い水晶?
なんじゃこれ。
大きさは手のひらサイズ。
しかも不思議なことに美味そうに見えるんだよなぁ……
食えってか?
まぁ食うけども。持ち歩くのは避けたいし。
洞窟に持ち帰るのもなぁ……絶対他のオークに取られるしな。
パリンッ、パリパリパリ。
食感は……砂糖菓子?
味は……甘いとも、苦いとも、しょっぱいとも言えない。
けど美味い。不思議な感じだな。
……うん?
なんだコレ。
なんかこう……体に力が漲る。
少し……強くなった?マジで?
じゃあアレか?さっきのはパワーアップアイテム?
えーっと、とりあえず『力石』と呼ぼう。
魔石とかでも良かったけどね。
名づけはこだわりたい性分なんだ。
んー……力石を食べた結果、少しだけ強くなった。
アレだな。どうせならいっぱい力石集めて強くなろう!
何でかって?そっちの方が楽しいに決まってるからだ。
死の危険があっても激痩せオークのままは嫌だ。
俺だけが転生したとは限らないんだし、他にも人間はいるかもしれない。
それなら出来れば普通に喋れるようになりたい。言葉通じるかは別として。
とりまアレだ。
目標、決めた。
俺、オークやめたい