ガバス
「あくまでも本気な天下取り やるのはマジな喧嘩のみ 頭振るお前は天パホーミー 俺が噂の神DO−z ラップという名の魔法行使 探しさまよう強い同志 できることなら貪りたい暴利 懐に忍ばすゴールデンマイク それはまるでリッターバイク 激しくうなる韻のスパイク お前の心をガっとスナイプ 本場アメリカでHIPHOPライブ 恋に恋焦がれ富士山クライム 頂上で叫ぶいなせなライム 俺の歴史のアーカイブ ガンガン増えるGOGOタイム さぁ、これからお前にダイブ……」
DO−zの隣で、即興で奏でられるパンチラインに聞き惚れる日々が始まってもう一ヶ月がすぎた。DO−zは私の事をどう思ってるのかは知らない。でも、傍にいてもいいみたい。
別に、話したりはしない。ただ、駅前で待って彼が来たら横に行く。すると、ゴールデンマイクを握って彼はライミングしだす。それは、2分で終わるときもあれば3時間立っても終わらないときもある。
上手くいく時もいかない時も、私はただ傍にいた。
終わりの合図はすぐにわかる。
いそいそと彼は自販機に向かい、ブラックコーヒーを二本買ってくる。一本を私に投げると一人帰って行くんだ。私はそんな彼がとても可愛かった。さっきまで、韓国政府をディスってると思えば、キムチリスペクトのラップを延々しだしたりする彼が。
告白?そんなことできない。する気も…ない。今はただ、楽しい時が過ごせたらいいなって思うから。事実、彼のことを男性として意識してるのかどうかは自分でもわからないしね。
ただ、気になる。彼の一字一句が。彼の挙動が。一ヶ月見てて、わかるのは彼のラップはほとんどの人が素通りしていくってこと。
それでも、一切気にしようとしない。むしろ、その方が燃えてるんじゃないかな?って気すらする。やりたいことやるのには痛みがある。だから今でも集めてるガバス。これは昨日、彼が叫んでたライミング。よくわかんないけど、分かる気がした。