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灰本道志の情報と推理

――PM5:01

 灰本道志は一人暮らしだ。

 彼はアパートの自室で回転イスに座り、ノートパソコンとにらみ合っていた。

 アニメだ。

 場面はBパート終盤。

 オープニング曲のBGMで、必殺技が炸裂した。

「うおっ! マジで神回じゃねえか」 

 灰本は感動した。





――PM5:10 

「っし、気分転換おわり! やらねえとな」

 イスを回転させる。

 灰本の正面のデスクトップパソコンには、勝石高校体育教師岡島幸夫(おかじまゆきお)殺害事件のあらゆる情報――生徒の噂まとめ、岡島の交友関係リスト、関係者SNS投稿履歴、学校裏サイトのスレ、等々――が表示されていた。

 そして、ノートパソコン2台、スマホ、ガラケー、それらを一つ一つ操作。

 あらゆる電子機器が灰本に情報をもたらしていた。 

 そんなデジタル群の片隅で、灰本はコピー用紙を広げて、ペンを持った。

「とりあえず、情報の簡略化だな」

 紙に情報を書き込んでゆく。



・岡島は絞殺された。


・死亡推定時刻は夜6時ごろ

「あ、でも、沼場のおっさんが、なんか言っていたな……ま、いいか」


・凶器は不明。

「了が学校に証拠があるって言ってたけど探しても何も出なかったしなぁ。でも、じゃあ、なんで真意(まい)ちゃんが襲われたのか、わかんねえし……」


・現場、体育教員室は鍵がかかっていた。

「だから、鍵を持っていないと犯行は不可能」


・『合い鍵』が存在する。岡島が脅して従わせていた女子生徒に持たせていた。 

「要するに、『合い鍵』は『首輪』なんだよな……胸糞わりぃぜ……」


・『合い鍵』の所持者2名は判明。

 ――荻上(おぎうえ)恵理(えり)

 ――静野原(しずのはら)萌子(もえこ)


「でも、誰にも言わないって約束しちまったし、アリバイが完璧だしなぁ。犯人じゃねえだろ」

 犯行時刻、荻上は部活。静野原は季節外れのインフルエンザで自宅療養だ。 

「それに、脅されていた女子生徒は、まだいるかもしれないしなぁ」

 脅迫されていたなど人に教えられる情報ではない。情報の入手にも限界がある。まだ『脅されていた女子』がいたとしても、発見できないかもしれない。


萩下(はぎした)の話では、夜7時30分ごろ体育教員室の照明は消えていた。

・荻上の証言では、朝6時過ぎ体育教員室の照明がついていた。


「矛盾してんだよなぁ……。あ、でもあの萩下(ごりら)の話は、勘違いかもしれねえしな。いや、萩下が犯人の可能性は――あいつなら素手で岡島を絞め落とすこともできるだろうし、親友の荻上が脅されていたって動機も……いいや、それは嫌だな。なんだかんだあいつ、いい奴だし。……あ、そもそもアリバイがあったわ」





 PM10:45

「だあ! やめた!」

 灰本はパソコンの前から脱して、ベッドに倒れこんだ。

「だいたい、俺の推理が当たった試しなんてねえし、そういうのは了の領分だ。――それに、これだけ俺が推理しても結局『犯人は男でした!』みたいな展開が普通にあり得るんだ。あーもーこれだから現実はっ!」

 愚痴をのたまった。

 そこで気が付く――。

「ん。おとこ?」

 ――そういえばアイツの証言は――


 灰本はパソコンの前に戻った。


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