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幼少期、精進す④

「私と勝負しなさい。魔導学園で主席を取るとか言っていたわね。でもその席は私のものよ。家庭教師の先生だってこの年で新人冒険者並みに魔法が使える私は天才だって言ってたんだから」


 そう言う彼女が手のひらを上に向けると、握りこぶし程度の火の玉が現れた。夜闇の中でキラキラ光って非常に綺麗だ。


 冒険者っていうと父さんが若いころにやってた魔物を倒したり資源を採掘してお金を稼ぐ仕事か。叡智が言うには冒険者ギルドと商業ギルドのかけもちで仕事をやっていくのが確実にお金を稼げるらしいから、丁度良い基準になるかもしれない。


 まあ勿論戦わないけどさ。女の子に手を挙げたなんて雪子がしったらどんな顔するか想像もつかないよ。少なくとも一か月は口をきいてくれないだろうね。


 叡智、イリスさんのステータスは分かる? 


――女神アウロラの所有するスキル『世界眼』とのリンクを申請中…………成功。回答。肯定です。イリス=ハートフルのステータスは以下の通りです。


≪イリス=ハートフル≫

種族:人間

性別:女

職業:なし

年齢:6

レベル:3

HP:20

MP:120

魔力:112

攻撃力:10

防御力:9

俊敏力:12

魔攻撃:51

魔防御:47

≪スキル≫

『火属性魔法Lv.1』『水属性魔法Lv.1』


 何か気になることを言ってた気がするけど、今はこっちだ。ふむふむ。年上だったのか。でも魔法系のステータスは僕の方が上だな……って、あれ!? 火属性魔法とかのスキルなんて僕はもってないぞ! もしかしてそれが無いと魔法を使えないとかないよね!?


――回答。肯定です。ただしそれらは知識を身に着け、実際に訓練することで後天的に得られるスキルです。いわば技術を身に着けたことの証明と大差ありません。


 良かった。生まれてこれまで魔法の訓練しかしてないのに魔法が使えず学校への道が閉ざされたかと思ったよ。でも現在僕が魔法を使えないことに変わりはないよね? もしイリスさんと戦ったら負けるってことじゃないか。僕も一応男なのに、情けないなぁ。


――回答。否定です。確かに魔法の技術力だけで競った場合、魔法が使えない貴方は負けることが確実です。しかし戦闘になった場合なら、体内に魔力を通して身体強化した貴方はイリス=ハートフルに視認される前に接近し、軽く頭部を蹴るだけでその頭を粉砕することが可能です。よってこの勝負の貴方の勝率は100%です。


 それを聞いてさっと血の気が引く。怖い怖い、たとえが怖いよ叡智。 軽く行う手合せだって怪我をさせちゃうじゃないか。ていうかそれが出来る僕はまだ人間でいられてるのかな。不安になってきたよ。まあ彼女が魔力に対して魔防御が低いのも一つの要因かもしれないけどさ。


 そもそも、人の体内には魔力が流れているが、魔術師とはいえそれを全て思い通りに動かすことはできない。体内の魔力のうち攻撃するときに使用できる魔力が魔攻撃、逆に防御の時は魔防御となる。


 よって魔力のうちの魔攻撃と魔防御の割合は魔力制御技術に依存するのだ。今の僕でどちらも大体65%くらいだが、彼女はどちらも50パーセントない。つまり魔力の無駄が多いのだ。


 ……ん? だけどイリスさんは魔法を使えるよな。ってことは、叡智は今まで意図的に僕に魔法を教えなかった?


――回答。肯定です。魔力を練る訓練によって魔力が大幅に上昇するのは5歳から10歳までと言われています。知識はそれからでも詰め込めますし、最悪スキル叡智の補助があれば知識は無くとも問題ありません。よって今の時間は一秒でも長く魔力を練る訓練に費やすべきでした。


 成程ね。言われてみれば確かにその通りだよ。じゃあまあ今回頭を下げて許してもらおうか。僕が大したことないってわかれば、彼女も満足するだろうしね。


「申し訳ありません、イリス様。僕は魔法が使えないので、勝負は僕の負けでございます」


 すると彼女は腕を組んでふんっと鼻を鳴らした。


「何? 貴方魔法が使えないの? 全然優秀じゃないじゃない。とんだ期待外れだったわ。……まあいいわ。それじゃあ会場にもどりましょうか。それと、私が勝負を挑んだことはお父様方には内緒ね。言いふらしたらファイヤーボールを叩きこんであげるんだから」


「かしこまりました。今日のことは僕の胸にひっそりとしまっておきます」


 うんうんと頷き随分と上機嫌に進む彼女の後に続いて歩いていく。


――警告。何者かが急速に接き――


 突然叡智の声がした。しかしその時にはもう遅い。


 突如月明かりの中に漆黒の闇が現れ――イリス=ハートフルをさらった。

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