PvP卓第二戦_▼
拙作・古き月を落とす者達の二話【http://ncode.syosetu.com/n9388cm/2/】の後半でカットした、エミール(付与術師)vs夢見る弩砲騎士さん(守護戦士)の二戦目のリプレイ小説です。
自キャラのエミール視点になります。書いてて思ったのは、「これ一人称視点でやるもんじゃねぇな」「中二病患ってるなぁ」のふたつでした(開き直り
作中の魔法の詠唱が、同じ魔法にも関わらず微妙に違ったりするのは「人それぞれで詠唱しないキャラもいそうだし、するならするで自分がこの詠唱がどの魔法だって分かっていれば多分平気かなー?ニュアンスとかが何となく同じならきっと大丈夫だよね!…という精神に基づいております。
プラス、カットした部分なので突然始まって突然終わる上、元の小説とちょっと変わっている部分があります。
あ、これ駄目だなと思った方はここで回れ右でお願いしますごめんなさい。
1on1のお相手は、Fさんの夢追い中毒共の冒険【http://ncode.syosetu.com/n2875ci/】より、夢見る弩砲騎士さん【http://lhrpg.com/lhz/sheets/002164.html】。
CR10、装備制限無し。消費アイテムはプレプレイゲット以外なし。戦闘はFさん考案の1on1ルールに基いて実施しました。ありがとうございます。
エミール【http://lhrpg.com/lhz/sheets/008152.html】視点です。
特技と装備をもう一度組み直し、作戦を練り直す。
先の試合の教訓は頭に叩き込んだ。あとは、自分の作戦の流れに弩砲さんを乗せることが出来るかどうかだ。指針に支援魔法の重ね掛けをして、たんと軽く地面を踏み切って、羽根付きリュックを起動させる。……と。
「何も空を飛ぶのは魔法職の専売特許では無い…ブースター起動!夢見る弩砲騎士・飛行形態!」
「うわっ、弩砲さん飛ぶの!?」
弩砲さんが追って飛んでくるものだから思わずぎょっとして、慌てて魔法を起動し、杖を向ける。
「流石に、弩砲さんに飛び回られると困っちゃうからね…!悪いけど、解除させてもらうよ!」
放つ魔法は《ディスペルマジック》。弩砲さんの特徴とも言える、この見た目ロボットの鎧は古代アルヴの技術をそれはもうふんだんに利用している。ならば、その自慢のブースターを《ディスペルマジック》で狙えば、空を飛ぶのは不可能になる…はずだ。
その読みは正解だったらしく、効果の程はすぐに現れる。がくん、と弩砲さんの身体が揺れて、空中浮遊が維持出来なくなり、地面にどうと音を立てて着陸した。
「メインブースターがイカれただと…!!」
「これくらいなら、ちょちょいのちょいだよ」
そう長く続く効果じゃないけどね。と付け加えながら、地面ギリギリまでふわりと降りる。
「バカな…これだから魔法って奴は…!」
「……いやいや、それを弩砲さんが言っちゃいけないでしょ……」
魔導技術の塊がそれをいうか。と、肩を落としつつツッコミをいれる。弩砲さんの魔導技術、僕としては是非とも解析させて貰いたいところなんだけど。この間もさり気なく違う方に話逸らされちゃったし…じゃなくて。
勝負はまだ始まったばかりだ、気を抜いている場合じゃない。命中率を上げるため、その場を動かず詠唱に集中する。
「『相手を撃ち抜く光の弾丸、我が前に』ッ!」
支援魔法の《ヘイスト》によって略式に詠唱出来る《パルスブリット》を敢えて詠唱する事で連続で発動させる。頭上に半円を描くように杖を振れば、その軌跡上に十の光弾が現れた。
「《パルスブリット》!」
放たれた光弾は弩砲さんの防御をすり抜け着弾し、撹乱する。
「むっ…」
「『──…相手を拘束する茨』ッ!《ソーンバインドホステージ》!」
弩砲さんが一瞬怯んだその隙に詠唱を完了させれば、藍色の茨が地面から飛び出し、弩砲さんに巻き付く。
…が。
「空が飛べなかろうが、サブスラスターで滑ることくらいはできる!」
「…っ…相変わらず無茶苦茶だなぁ…!」
巻き付いた茨の幾つかを振り落とし、少し地面から浮き上がってホバー移動で接近して来た。
「いくぞエミールさん!」
弩砲さんは距離を少し詰めただけで接敵はして来なかった。その砲身をガコン、という音と共に展開してこちらに狙いを定める。呑気に観察している場合じゃない!
「《オンスロート》!」
「……ッ…!!……あぶな…!!」
跳んでくる砲撃を、ギリギリのところで何とか身を捩って避ける。今の攻撃は、弩砲さんにしては狙いが甘かった、これはツイている。
「外したか。だが、次は逃がさんぞ…《アンカーハウル》!」
「うわぁ、勘弁してくださいよ…当たったらかなり痛いんですからね、それ…!《ディスペルマジック》!」
先程の戦闘の《オンスロート》によってHPを完全に持っていかれた事を思い出して少し身を震わせつつ、弩砲さんが《アンカーハウル》で得た有利な効果を即座に打ち消し、更に鞄から一枚の符を取り出して右手に持ち、今度は略式に二つ、続けざま詠唱する。
「『抗う魔の力』!『撃ち抜け光弾』!」
自身への魔力増強から、もう一度光弾を呼び出し、左手の杖を振る。…今度は先程の半分、五発と威力は劣る。しかしそれでも先程の茨がひとつ、ぱぁんと音を立てて弾ける。《ソーンバインドホステージ》の効果を起動させ、ダメージを与えるには十分すぎるほどの効果だ。
「『──…其は漆黒たる魔の柱!』」
詠唱の最終節を唱え終えると同時に符を手放す。その攻撃魔法の白く輝く魔法陣、更に威力増幅の、紫に輝く魔法陣が起動して二重の魔法陣が、かちりと歯車が噛み合ったように合わさった。
「《ブレインバイス》!」
弩砲さんを漆黒の光柱が襲う。…付与術師が取得できる攻撃魔法の中でも、高威力を誇る《ブレインバイス》。びりびりとした、精神を削られるような効果を持つその魔法は、集中力を乱す。
その光柱を、突き破るようにして弩砲さんが突進してきた。魔法自体では大したダメージは与えられていないようだけれど、《ソーンバインドホステージ》がもう一つ起動して、HPゲージは半分を割るかどうか、といった所まで削れた…ように見える。
…しかし。
「魔法のエフェクトを逆に目隠しにして突っ込んでくるとか!本当に無茶苦茶だなもう!!慣れたけど!!!」
目の前で砲身が開くが、砲撃が放たれる前に、予測していたその動きに先手を打つ。
「《オンスロー…》」
「『全てを飲み込む虚無の光』!!《ヴォイドスペル》!!!」
杖を持っていて重い左手よりも、先に動く右手を砲身の先へ向けると、魔法陣が弩砲さんの攻撃を阻害し、打ち消した。
「…!相殺真無拳か!俺の矢弾を打ち消すとはやってくれるな!」
「こ、こんな、至近距離で撃たせてたまるか…っ!」
流石にこの距離で受けたら、簡易の障壁があるとはいえ、下手したら一撃で吹っ飛ぶ!
「………」
「…っ…?」
と、突然弩砲さんの目の光が消え、駆動音までもが静かになる。まだ戦闘中なのに…今になってダメージが?…いや!
「………っ…弩砲さん、これくらいで貴方がやられる訳無いでしょ…」
「……む、バレたか」
「そりゃぁね…!」
キュイイ、と駆動音を再びさせ、目に光を戻す弩砲さんが使ったのは《フェイクデス》。流石に一瞬ひやっとしたけど、弩砲さんがこれくらいで倒れるわけがない。
「でも、これで一度目。倒させて貰いますよ、《インフィニティフォース》!」
「やってみせろ」
「『抗う魔の力』!『其の力は災禍を齎す』『漆黒たる魔の柱』!」
金色の光を纏い、更に魔力増強と魔力集中の効果で右手に集中した魔力を圧縮するように握り締め、弩砲さんの懐に飛び込み、投げつけるようにして圧縮した魔力を解放する。
「《ブレインバイス》!」
「甘いな…」
近距離での魔力の解放。確実に当てるように動いたつもりが、逆に弩砲さんに読まれたらしく、それはもう、残像を残して、綺麗に避けられた。
「っ、嘘でしょ…!?」
今の、全力だったんですけど!
残像から目を逸らして、本体を見れば、弩砲さんは既にカウンターで攻撃モーションに移行している。今の攻撃を外したことで、一気に不利に陥ったのを嫌でも理解した。これは、思った以上に不味いかもしれない。
「《オンスロート》!」
ガコン、という砲身の音と同時、発射される砲撃。守護戦士の特技の中でも威力に秀でるこの特技は、先程は辛うじて避けられたが、今度は避ける隙もなく、正面からまともに砲撃を食らう。咄嗟に腕を前に出して交差させると、パァン、という高らかな音がして簡易障壁が割れ、身体が空中へと吹っ飛ばされた。羽根つきリュックの効果で何とか空中でくるりと一回転して体勢を立て直し、ざり、と四肢を付いて地面に土埃を立てながらではあるけれども、距離を離さずに留まる。
態勢を立て直しながらポップアップさせたステータス画面をちらりと一瞥した瞬間、一撃で自分のHPゲージが赤まで減ったのを目視してしまってぞわりと背中を悪寒が駆け抜けた。
(……魔法職がまともに受けるもんじゃないよな、本当…!)
もう一度攻撃を仕掛ける前に、残りのMPと、今使える魔法をざっとさらう。《クローズバースト》は再使用規制時間がまだしばらく終わらない。これを組み込めないせいで《ブレインバイス》の威力は先程外してしまった時よりはかなり劣る。だからといって、まだ勝ち筋が消えたわけじゃない。
それから、弩砲さんの動き……多分も何もなく、向こうはまだ奥の手が残っている。これを切って貰わないと、《オンスロート》の、相手に当てると次の攻撃に命中の上昇補正が入る効果が起動して、武闘家ならまだしも、僕では絶対に避けられない。一歩読み違えたら、その瞬間にまた負けるだろう。
「『抗う魔の力!』『撃ち抜け光弾!』」
なら次に取る策は、いかにして弩砲さんに次の攻撃をさせない様にするか、だ。
「『其は闇、其は刃。其は漆黒たる魔の柱』!『其の奔流は全てを飲み込む渦となれ』!」
二回目に仕掛けた時と同じ構成だが、更に魔力の増幅をさせる《メイジハウリング》を上乗せした分、威力は文字通り"桁違い"に跳ね上がる。
「《ブレインバイス》!」
漆黒の柱が消え去ると同時、弩砲さんは態勢を崩した…が。
「システムチェック……リブート!!まだいける!」
踏み切って、倒れずに耐えていた。
「……これでも倒れないのか…流石、弩砲さん!」
しかしこれで態勢を立て直す方へ意識を持って行かれ、攻撃動作にまでは入れない様子の弩砲さんの隙を見逃がさず、符を取り出す。ここまで来たらもう出し惜しみなどしない。
「『其は抗う魔力の礎』!『光の弾丸』、『相手を穿つ漆黒の魔の柱と共に』!」
詠唱と共に呪王符が光を放ちながら魔法陣へと昇華し、再び紫と白の二重の魔法陣が組み上がる。これがおそらく、最後のチャンスだ。
「《ブレイン…バイス》!!」
もう一度、残っている魔力を全部つぎ込んで魔法を放った。そしてそれは避けられること無く。
「俺が落ちるか…まぁ良い。戦うなら負けることもある」
光となって散っていく弩砲さんを見て、近くに寄っていく。
「……弩砲さん…流石、守護戦士ですね……ありがとうございました。今回は僕の勝ち、ですよ」
弩砲さんが光になって消えてしまうと、エミールはその場に崩れるように、仰向けに倒れこんだ。
仰向けになって見上げた、晴れた空が、とても眩しくて。荒い息のままで腕を目の上に乗せて、視界を覆う。
今度は、僕の勝利で模擬戦は終了した。
元ログはこちら(↓)になります。どういうダイス目だったか等、興味のある方はどうぞ。前書きでも述べましたがルールはFさん考案の1on1ルールに基いております。
>https://www.evernote.com/shard/s168/sh/444eb03a-d67f-4363-9467-681ebe678cb3/d50fca17fdc4ac3b51695caa4dea4b5a