勇者は救世を拒絶する
なんとなく勇者メインの物語が描きたくなりました。
でも駄目勇者。
世界なんて救ってくれません。
魔王なんて倒してくれません。
その場の思い付きとノリテンションのみで書いていくつもりなのでこの先どうなるかどうかも分かりません。
それでもオッケーという方のみれっつらごー!
多分、不定期更新小説になると思います。
長編になるかどうかもまだ不明!
勇者と聞けば何を連想するだろう?
英雄?
救世主?
魔王の敵?
世界の希望?
言い方はそれぞれ違うし、抱く感想もそれぞれに違うだろうけれど、共通したものが一つだけある。
つまり、勇者とは『世界を救う者』なのだ。
世界を救う英雄であり、
世界を救う救世主であり、
世界を救うために魔王を倒す者であり、
世界を救った結果として世界の希望となる。
誰もが一度は憧れる絶対的存在。
誰もがあんな風になってみたいと憧れて、その姿を目指して力を求める。
だが、考えても見て欲しい。
それが本当に『誰もが』なのか。
世の中には戦うことが怖い者だって存在するし、そもそも戦いを望まない者だって存在する。
外で遊ぶことすら億劫で、部屋に引きこもってエロゲーや萌えアニメに没頭するのが大好きなダメ人間だって存在するのだ。
だからこそ俺は問う。
何故俺なのかと、問いかける。
誰に?
決まっている。
この世界に。
元の世界に。
そして召喚者に。
「ようこそ勇者殿。ここは異世界カルナーダ。この世界は今、魔王の手によって危機に見舞われている。どうか世界を救ってもらえないだろうか」
「はい?」
コンビニの帰り道。
右手の袋にはエロ本雑誌。
左手の袋には炭酸ジュースとおにぎりパック。
ひきこもりの俺が唯一外に出る貴重な時間帯。
そんな夕暮れ時にいきなり落とし穴が現れた。
いや、こうなってくるとこれはもう逢魔が刻と表現した方がいいのかもしれない。
落とし穴の先には美少女一人。
どうやら彼女が俺の召喚者らしい。
場所はお城の中。
「あの、意味が分からないんだけど」
とりあえずそんなことを言ってみる。
異世界に召喚されたっていうのはなんとなく分かった。
だって俺の世界に、つまり地球にこんなお城は存在しない。建物全体がクリスタルで建築されているような現実離れした綺麗なお城だ。こんなもの、世界遺産にだって存在するものか。
そして何よりも、目の前にいるエロい格好をした美少女。
いやほんとマジでエロい格好なんだってば。
だって水着みたいな恰好にそのまま薄絹を腰の部分と肩の部分にかけているだけなんだぜ。
胸元とかばりっばりのエロアングル。
髪の毛だって透き通るような空色で、染めた色では絶対にこんな風になったりしない。
瞳は宝石のような翠緑。
地球世界にこんなファンタジーな美少女がいてたまるものか。
「ですから、貴方は勇者としてこの異世界に召喚されたのです」
「勇者?」
「そうです。召喚者はこの私、クロイツ帝国第一皇女アテナ・シリカ・クロイツ。これから勇者殿の力となるべくおそばに寄り添わせていただきます」
「そばに? 寄り添う?」
「ええ。いついかなる時も」
「……で、俺が勇者?」
「そうですよ」
「世界を救う?」
「ええ」
「魔王を倒して?」
「もちろんです」
「断る」
「……はい?」
俺の返事に美少女、もといアテナ皇女は表情を固まらせたまま訊き返してきた。
「断ると言ったんだ」
「な、何故ですか? 私の態度になにか不満な点でも?」
「というか、俺、戦うとか無理だし。インドア派のもやしっ子だし。喧嘩もしたことないのにいきなり世界を救えとか言われてもな~。美少女が常に寄り添ってくれるというのは捨てがたいけど、それも魔王を倒す命がけバトルと引き換えにしていいかと訊かれたら悩みどころというか、無理だし。死ぬのは怖い。戦うのも怖い」
「………………」
アテナ皇女は俺の話を聞くうちに真っ青になってしまっている。
それでもその美しさは少しも陰らない。むしろ青みを帯びたことで神秘さが増しているぐらいだ。
「つーかさ、勇者召喚だか何だか知らないけど、明らかに人選ミスだと思うわけよ」
右手にエロ本、左手にジュースとおにぎりを持ったまま、俺は宣言する。
高らかに。
誇らしげに。
一点の曇りなき誓いを口にする。
「俺は、世界を救わない」
クロイツ帝国の召喚勇者、結城飛鳥は、召喚直後にその存在理由を否定するのだった。
右手にエロ本、左手におにぎり。
さなぎのキャラはいつもこんなノリなんだよねぇ。
たまには純真無垢なヒーローとか書いてみたらどうだ?うん?
あはははは!
無理! 無理かも!?