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王宮の夜②

大変ながらく更新できず申し訳ございません。


閲覧並びに感想ありがとうございます

「エリス・ガーランド嬢、並びに天使カシエル様のおなーりー」



 ルハイム王国国王ビンセント・アウラ・ルハイム(32)は目を細め来訪者を出迎えた。


 ラッパの騒音と共に名前を呼ばれ、ガチガチに固まった表情で赤絨毯の上を歩く少女とその一歩斜め後ろを歩く、黒髪の少年。


 年代は同じぐらいの少年少女だが、少年の方は明らかに通常の人間とは違う気配に包まれていた。


 頭上に浮かぶ白き光を放つ天輪と、白いマフラー。癖のあるが、恐らく仮初めの色で本来ならば目映い色をしていたのだろう髪は、実に烏羽のようにしっとりとした黒髪だった。


 容姿も中性的で、人形じみた小綺麗な顔であるが目立つ感じではない。例えるなら月光のような少年だった。(※国王の中で勝手に美形化されてます)


 その緑の瞳は神秘的で、何を考えているのかサッパリわからない。けれど身体から発せられる聖力は強く、遠く離れた玉座に座るビンセントですら冷や汗がでるほどだ。


 …恐らくかなり高位天使なのだろう。見た目の年齢を自分達の物差しでは図ってはならない。


彼ら天使は創世より前に生まれた存在だ。16、17ぐらいの少年だが、いったいいつから生を受けているのやら…


 ビンセントはギュっと拳をにぎった。



「しょ、召喚に応じ参上致しました。マドラックが一子、エリス・ガーランドと申します。陛下におかれましては。」


「固まらずともよい。この謁見はあくまでも非公式だ。楽にせよ。」





「はっ」


 エリスと名乗った少女は硬いままビンセント国王に頭を下げた。



「ようこそ、我がルハイム王国へ。いと高き天界に住まう高貴なる方よ。私はルハイム王国五十八代目国王ビンセント・アウラ・ルハイムと申す。 我が国の国民に代わり、心より歓迎申し上げる。」



「…樫江 流です。お会いできて光栄です国王陛下。暖かな歓迎、こころより感謝いたします。」




 言葉少なにそう発した天使にビンセントは軽く目を見開く。


 天使が自分に会えて光栄だと言うのは、ルハイム王国に降臨する上でアンナ・ルラ・ルハイムの子孫と会うと確信していたからか。


それとも、天界でアンナが召喚したラファエルと関係があるのか。


 …深くはわからないが、例え、ただの挨拶だとしても今の言葉で近くで聞いていた貴族達にはルハイム王家は天使に一目おかれた存在であると認識させるには十分だ。


 ビンセントは人知れず口元を釣り上げる。



(どちらにしろ好都合だ。このまま話の流れをこちらに向けるとしよう。)



 そう勝手に斜め上な勘違いをしながら、国王はゆっくりと唇を開いた。




***




(うげ国王いるし。マジで帰りたい。)


 やや重たい足を動かしエリスの後をダラダラと歩いていると、テレビとかで良くみる赤絨毯が王様が座る椅子まで続いているのが見えて、流は顔を凍らせた。


 いかにも王様が座る豪奢な椅子に30前後の男が腰をかけていた。獣毛のファー付きの赤マントに額にはダイヤモンドが散りばめられた金のサークレットが装着されている。


 もろゲルマン系の彫りの深い顔に金髪碧眼が目立つ迫力美形の国王で、ライオンの雄を思わせる威厳があった。



(あの眼力…目からビームとかでるんじゃねえ?)



 国王の威厳にちょっぴり逃げ腰な流だが、たまたま身体が緊張しているせいか、周りからは背筋がピンとしている様に見える。


若干プルプルしているが、誰も気づいていない。



「しょ、召喚に応じ参上致しました。マドラックが一子、エリス・ガーランドと申します。陛下におかれましては。」


エリスが恭しく一礼するのをみて、出遅れたことに気づき慌てて頭をさげようとすると国王が「固まらずともよい。この謁見はあくまでも非公式だ。楽にせよ。」といったお陰で流はお辞儀ができなかった。


(やべー…不敬罪だよな?衛兵呼ばれたらどうしよ。)


 ドラゴンを瞬殺する神馬を喚んでおいて、衛兵にビビるのは正直どうよと言いたくなるが、本人は真剣に悩んでいる。


「ようこそ、我がルハイム王国へ。いと高き天界に住まう高貴なる方よ。私はルハイム王国五十八代目国王ビンセント・アウラ・ルハイムと申す。 我が国の国民に代わり、心より歓迎申し上げる。」



(…なんかスゲー丁寧な挨拶をされたし。オッス!オラ樫江 流!(b^ー°)とかやったら殺されるよな。あー面倒くさい…適当に返せば良いかな。適当にそれらしくすれば無問題モーマンタイだろ)


 …本人はドヤ顔のまま押し通る気まんまんで、適当な丁寧な挨拶をするべく唇を開いた。


「…樫江 流です。お会いできて光栄です国王陛下。暖かな歓迎、こころより感謝いたします。」



お、それらしく出来たんじゃね?と達成感で0.3ミリ、唇の端があがる。


するとビンセント国王は眼をキョトンとさせると、獰猛な肉食系の笑みを浮かべたので、流は再び冷や汗がダラダラと流れる。


(やべ。なんかヤバイフラグ立てたか?)



「…ふふ、我が王家のことは天界でも伝わっているのですか?」


「いえ、我が友より伝え聞きました。初代女王陛下は素晴らしい方だったようですね」


因みに友とはエリスの事である。馬車で聞いた国の成り立ちの復習をしたので、その事を馬鹿正直に応えると、国王は「ほう、」と眼をギラギラとさせた。



「初代の守護天使だったラファエル様とはやはりお知り合いなのですね。これも何かの縁、どうか我が国にとどまり、そのお力をお貸しいただきたい。」


「…この俺に、何をお求めなのか。それによります。」


(戦力だけは当てにしないでくれっていっとこうかな。軍師とか内政とか俺に意見もとめないで欲しいめんどくさいから。どうしよ。ここは日本人らしく善処しますといっとこう。…て言うかラファエルって、初代女王の使い魔だよな。いつの間に友達設定になってんの!?しかも否定出来ない話の流れだし、ああ、余計めんどくさい事にぃぃ!!)


 本来の主旨からどんどん離れていく流だが、国王の顔は実に満足げだ。何がしたいのかさっぱり解らないが、とにかくこれ以上の長居はボロを出す危険性があった。


「私が求めるのは、天使がこの地にあるという一点の事実。わが国は天使に守護された国であると内外に知らしめることこそ重要。ただ、現在大きな戦争はありませんが、もしもの場合、その聖力をお借りしたいのです。早い話、このルハイムの守護天使になっていただきたい。」


「抑止力になれとおっしゃるか。」


「大変無礼な願いと存じますが、どうか…。」


「…俺は貴方が頭を下げるような天使ではない。顔をお上げください陛下」



 王座から離れていつの間にか近くに歩みよってきていた国王は、流に頭を下げた


 国王に頭を下げられるとか、めちゃくちゃいたたまれない!!


 思わずそう答えると国王はキラキラした顔で顔をあげた


「なんと慈悲深く、…謙虚であらせられる…今世でお会いできた事を子々孫々まで伝えましょう。ありがとうございますカシエル様」



(え、守護天使になるなんて一言も言ってないよな?なんかもう、OKした的な流れになってんの?)



▼国王の信仰値が200あがりやがった


▼ルハイムの守護天使の称号を手にいれた。



(…脳内でRPG風に変換してみたが、こりゃあ、どうみても要らないフラグが立ったんじゃ…)



「お兄様!!」



 呆然自失していると、ふいにバァンと後方の扉が開き、甲高い少女の声が謁見の間に響き渡った。


「え?え?」


 黙って国王と流のやりとりを聞いていたエリスが驚いたように後ろを振り向いている。


 流はどうしたのだろうかと、後ろをゆっくりと振り向けば、流の胸に何か濃紺の物体が飛び込んできた。


「…(ぐはっ!)」


 柔らかいのに内蔵を抉る衝撃に何とか耐えて、恐る恐る視線を胸元を見れば美少女が張り付いていた。


 濃紺の美しい髪に、国王と同じキラキラとした青い瞳。睫毛が長く、左の眦には色っぽい泣き黒子があり、つり目な少女の美しさを際だたせていた。

 

 かなり豊満な体つきをしているみたいで、抱きつかれた腹部には例のアレが、ドレス越しとはいえ、その柔らかさを主張している。


 ツンデレ系巨乳美少女の突然の登場に流は、これでもかと混乱する。



(…今なら死んで悔いはない…かな…)



「ロゼ!!場を弁えよ!!失礼だぞ!」




 意識が昇天しかけていた流だが、後方にいた国王の一喝に、意識が引き戻され、胸元の美少女をみやれば、美少女はばつが悪そうに流から離れて顔を真っ赤に染めている。


「し、失礼いたしましたわ…っでも、あなたも悪くてよ…!お兄様の前に立っていたのなら王女であるわたくしに道をあけるのが道理でなくて!」たぶん、見知らぬ男に抱きついた事がよほど恥ずかしかったのだろう。自分のしでかした事を責任転嫁しだした


 テンプレートなツンデレぶりが、流の姉とどこか似た者を感じさせる



「…な、なんと言う…破廉恥な!」



 国王は顔に手をあてて苦渋の表情を浮かべていた。その姿からはかなりの苦労を背負いこんでいるのか負のオーラが漂っている。


(…大変なんだな。王様って)


 ロゼと呼ばれた美少女と国王と見比べると顔立ちが似てるし、家族なのかもしれないと、流は思ったがあくまでも予想だ。


 冷静を取り戻した流は「知ってるか?」とエリスを見れば、彼女は俯き「自分で抱きついておきながら…っ!」と唇を震わせ、目には怒りを宿らせている。


 とてもじゃないが聞ける雰囲気じゃない。



「お兄様、この冴えない男と、落ちこぼれエリスがなぜ此所におりますの?」


「…ロゼ、彼らは私の、いや我が国の大切な客人だ。いくら妹であっても客への無礼は許さん。二人に謝りなさい。」


「な、あ、あれはお兄様と間違えて抱きついてしまっただけですわ!た、たしかにはしたない事をしたとは反省してますが、何故この女に私が頭を下げなければならないのです!」


「ロゼ!」


「う、申し訳ありませんでしたわ…」



「忌々しい」と言わんばかりにエリスと流を睨みつける王女の目はこれっぽっちも謝罪していない


 どうやら猪突猛進な王女のようだ。しかもかなりのブラコン。


  流は若干引いた。


 流はこういう高圧的で、素直に謝ろうとしない女が昔から苦手だった。やはり予想通り彼女は自分の姉と全く同じタイプである。


 姉と言う我儘ぷーを長年体験している流は、どうしてもこういうタイプの女性には拒否反応を起こしてしまう。


 鑑賞用だったら最高な美少女だが、あまりかかわり合いたくないな…と今度は自分でフラグを折るようなことを考えながら、成り行きを見守ることにした。



「妹が、大変失礼いたしました。どうかお許しください」


「いえ…その(ある意味、ラッキーでしたとは言えん…)」



 口を濁すと国王は、突然の妹の登場に戸惑っていらっしゃるのだろうと、苦笑をしながら勘違いした


「ああ、彼女は第一王女のロザリナ・ファン・ルハイム。私の妹でございます。


 現在、魔法学院に通っており、エリス嬢とは同級生にあたります。」


 成る程、だからエリスと面識がある風だったのかと納得していると、国王は優しい兄の表情に戻ると、妹に視線を向けた



「ロゼ、調度良い機会だから紹介する。この方はエリス嬢が召喚した天界の住人であらせられるカシエル様だ。」




「な、て…天使ですって!?」


 ロザリナは眼を見開き流の頭上で白く輝く蛍光灯…もとい天輪をみて絶句する。


「落ちこぼれエリスが…天使を召喚…嘘!?」


「う、嘘ではありません!!ほら、その証拠だってあります!!」



 エリスは慌てて流の契約印が刻まれた手と自分の手を見せると、ロザリナは絶句する。それはそうだ。自分を差し置き、落ちこぼれのエリスが天使を召喚するなど信じられないだろう。


「っ…お兄様、エリスをどうなさるおつもり…!!」


 キッと兄に目を向けるロザリナに、国王はそれが問題だとため息を溢す。


「正妃にするのが順当だが、既に私には南の大国バレナオのエカテリーナ王女との婚姻が決まっている。今更破棄できはしまい。」

「なら、側妃になさるおつもり!?」


「!」


エリスと固唾を飲んで青ざめた表情で国王をみやれば、国王は複雑な表情を浮かべた




「私はエリス嬢を側妃にするつもりは毛頭ない。」


「ほ、本当!?お兄様!」


「本当だ。婚姻もまだなのに側妃をおいては国の風評にもかかわるし、私も好色王と呼ばれたくはないからな。」


 だから安心しろと国王がエリスに笑いかけると、エリスはホッと胸を撫で下ろした。



 だが、次の瞬間国王が放った言葉に場は凍りついた。



「──ただし、そなたにはある種の束縛を受けてもらうぞ、エリス・ガーランド」




ハーレム要員ぽいけどなんか違う王女登場。


彼の姉と性格が似すぎて、主人公的にOUTになった巨乳美少女ロザリナちゃん。


彼女とエリスとは相性が悪いだろうなと書いていて思ったり?


美少女が出てきてもフラグをバキバキと折れてしまうのは、作者の趣味ゆえでしょう…(笑)


閲覧ありがとうございました

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