人質
田原藩の財政再建を目指し、三宅康直は内情を確認するでありましたが……。
三宅康直「半助。教えて欲しい事があるのだが?」
佐藤半助「お答え出来る事でありましたら何なりと。」
三宅康直「年貢の所を見ているのだけど。」
佐藤半助「はい。」
三宅康直「この人質と言う項目は如何なるものか教えてくれないか?」
佐藤半助「年貢を滞納した農家の家族を一時的に保護したのでありますが。」
三宅康直「それにしては物騒な表現では無いのか?」
佐藤半助「他に適当な表現が無かったと考えます。」
三宅康直「それに……。」
1つの村から150名もの領民を人質にとるのは異常では無いのか?
佐藤半助「100年以上前のこと故詳しい事はわかりません。しかしこの年は大飢饉でありまして、こうでもしなければ被害は更に拡大したと聞いています。」
三宅康直「その後も度々凶作による飢饉が発生している。その規模も甚大で数千もの領民が苦しまれている。この状況。」
異常だとは思わないのか?
佐藤半助「仰せの通りであります。」
三宅康直「何故そうなってしまうのだ?」
佐藤半助「申し訳御座いません。」
三宅康直「いや其方を責めているのではない。凶作となる原因を知りたい。それだけの事である。ここ田原は気候は温暖。雨も少ないわけでは無いであろう?」
佐藤半助「はい。」
三宅康直「では何故?」
佐藤半助「まず領内は山が多く、田に向いた場所が限られています。加えて外海側が高く、内海に向かって下がっていくため稲作に向いた大きな川がありません。頼みの綱は雨水と溜池。溜池の恩恵に与る事の出来ない地域は渇水に苦しめられて来ました。これは今も解消していません。
先程、殿は雨も少なくないと仰っていました。これに間違いはありません。ありませんが問題は……。」
降り方。
佐藤半助「であります。」
三宅康直「台風か?」
佐藤半助「仰せの通りであります。殿。あちらをご覧ください。」
三宅康直「田が広がっておるな。」
佐藤半助「はい。これらの田がある場所は、元は海であります。」
三宅康直「一度の台風で。」
佐藤半助「はい。その年の収穫が零となる危険を孕んでいますし、実際そうなってしまっています。稲作を止めてしまえば解決するのかも知れませんが。」
三宅康直「簡単に出来る話では無い。」
佐藤半助「はい。故に領民は米が獲れなくとも。食べるものに困ったとしても。続けなければならない定めにあります。我らがまずやるべき事は……。」
凶作となり、飢饉が発生しても餓死させない体制を構築しなければなりません。




