持参金の行方
稲若は名を三宅康直と改め田原藩主に就任。それに際し、渡辺崋山ら末弟友信を推した面々の不満を収めるべく藩の長老格が姫路酒井家と交渉。そこで……。
渡辺崋山「友信様。私に力が無く、藩主として迎え入れる事が出来ず申し訳御座いません。」
三宅友信「いや私が病弱である事が全ての原因。気にしなくとも良い。」
佐藤半助「お詫びの印にもなりませんが、お納めくださいませ。」
と三宅友信に提示したのが、
1、前藩主扱いとする事。
2、隠居領として米2000俵を与える事。
3、居住地は江戸巣鴨の下屋敷とする事。
三宅友信「部屋住みの私にこれだけの厚遇。拒絶する理由はありません。崋山。」
渡辺崋山「はっ!」
三宅友信「引き続き私に蘭学の指南。頼むぞ。」
渡辺崋山「ありがとうございます。」
渡辺崋山は江戸詰家老を務める傍ら三宅友信に蘭学を指南する役目を仰せつかったのでありました。しかし……。
佐藤半助「田原で噂になってるぞ。お前が酒浸りになっている事を……。」
渡辺崋山「お前。確か田原の家老になったはずでは?持ち場離れても大丈夫なぐらい持参金があったのか?」
佐藤半助「長老格は引退したが、田原の家老は私一人では無い。それにお前も知っておろう。康直様が持参した金の大半は……。」
田原の大火事で被災された方々の生活再建費用に充てられた事を。
佐藤半助「殿は
『この状況には慣れているから。』
と質素倹約に務められている。」
渡辺崋山「実家に無心しているとばかり思っていたんだが?」
佐藤半助「無心はしている。ただそれは……。」
金では無い。
佐藤半助「姫路の家老に相談を持ち掛け、田原の財政再建に本気で取り組まれている。それにこれは……。」
三宅康直が渡辺崋山に依頼した一覧。
渡辺崋山「……ふむ。殿の就任に反対した私にか?」
佐藤半助「殿は其方の知識と蘭学を通して得た人脈に期待されているのだぞ。」
渡辺崋山「……そうか。こうなってしまったら動かざるを得ないか……。」
佐藤半助「お願い出来るかな?」
渡辺崋山「1つ条件がある。」
佐藤半助「無茶言うなよ。」
渡辺崋山「ある意味無茶かも知れぬが?」
佐藤半助「まぁ聞くだけ聞こうでは無いか。」
渡辺崋山が出した条件。それは……。
三宅康直「もし友信様に男子が生まれたら次の藩主に据えて欲しい……か?」
佐藤半助「殿に姫君がお生まれになった場合は縁組をしていただきたい。との事でありました。」
三宅康直「私も友信様もまだ子は居らぬので答えようが無いのではあるのだが……これで崋山が納得してくれるのであれば……。」
佐藤半助「宜しいでしょうか?」
三宅康直「姫路に話してみる。其方らも?」
佐藤半助「実現に向け協力する所存であります。」




