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持参金目当て

 1827年、田原藩藩主三宅康明が江戸参勤途中に急逝。若干28歳。藩主になって3年目の出来事であった。先代藩主は兄の康和。その康和も25歳。跡取りとなる子供が無い中での早世であったため、弟の康明が継いだのでありましたが……。


中村玄喜「康明様も嗣子を残さず亡くなられてしまいました。」

真木重郎兵衛「末弟に友信様がいらっしゃいますが……。」

生田何右衛門「病弱であるのが気掛かりであります。」

小川岑右衛門「療養も兼ねて田原に入っていただいてはいますが、ここは他家から養子を迎えた方が賢明では?」


 田原藩の長老格4名は末弟友信の健康状態と、当主三宅家の家系が短命である事に懸念を示している中……。


渡辺崋山「お待ちください。康明様がお亡くなりになられた事を幕府はまだ知りません。友信様に家督を譲る時間的猶予があります。それに……。」


 三宅家直系を絶やすのは可能な限り避けるべき。


渡辺崋山「と考えます。」

中村玄喜「私としてもそうしたいのが本音である。しかし友信様にもしもの事があった時、田原藩に……。」


 家督を譲れる者が残されていない。


佐藤半助「崋山良いかな?」

渡辺崋山「何でありますか?」

佐藤半助「他家から人を入れる理由は他にもある。それは……。」


 財政難を克服するため。


佐藤半助「田原藩の内情は崋山も知っておろう。火の車である事を。親類家から田原の町人。そこが貸してくれなくなったら豪農更には江戸大坂の商人に至るまで。返済を無視し、借りに借りまくった結果田原は……。」


『借金を返さなくても潰される大名は無いであろう。』


佐藤半助「と開き直っている始末。これを打開するためには……。」


 他家から養子を迎え、その人物が実家から持って来る持参金を使って借金の返済に充てる。更には……。


佐藤半助「実家の藩が持つ知識や技術。そして手順を取り入れ、財政難の克服を目指すのも手では無いかと考えるが、如何であろう?」

渡辺崋山「……。」

佐藤半助「勿論、友信様は蔑ろにしない事が条件である。」

渡辺崋山「……致し方ありません。」

佐藤半助「わかっていただけたかな?」

渡辺崋山「納得はしていませんが、已むを得ません。」


 急遽婿養子を迎える事に決した田原藩が目を付けたのが、財政再建に成功した姫路藩の酒井家。


酒井忠実「稲若は居るか?」

稲若「父上。如何為されましたか?」

酒井忠実「其方に良き報せが来た。」

稲若「と言われますと?」

酒井忠実「其方を迎え入れたいと言う藩が現れてな。」

稲若「私にでありますか?」

酒井忠実「うむ。このまま部屋住みで終わるのは辛かろう。この機会。如何であろう?」

稲若「断る理由はありません。お願いします。」


 こうして稲若は田原藩を継ぐ事になったのでありました。

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