第3話:仲間たちの秘密とギャップ
昼休みの校庭は、夏の光でまぶしく照らされていた。光は友人たちとベンチに腰掛け、弁当を広げる。隣には陽翔が座り、いつもの穏やかな笑顔を浮かべている。
「今日の天気、最高だな。夏って感じ」
陽翔は手元のサンドイッチをほおばりながら言った。その無邪気さに、光は思わず微笑む。陽翔は見た目の穏やかさだけではなく、誰も気づかない細やかな気配りができる人物だ。昨日の放課後も、光が忘れ物をしたのをこっそり届けてくれていた。
「おい、光。今日もなんか仕込まれてるんだろ?」
振り返ると、三枝真琴がベンチの端に座っていた。肩までの茶色い髪が光を揺らすように揺れ、瞳には小悪魔的な輝きがある。彼女はニヤリと笑い、弁当の包み紙の下に小さな箱を隠していた。
「な、何もしてないってば!」光は慌てて手を振る。
「ふふ、見てればわかるのよね、光はすぐバレるタイプ」
真琴は言葉だけでなく、仕草や目つき一つで周囲を翻弄する。光は思わず心臓が跳ねるのを感じた。
そのとき、黒川凛がベンチの反対側に現れた。長い黒髪を一つに束ね、制服の襟をきっちり整えた姿は、まるで朝から完璧な戦闘態勢のようだ。光に視線を向けると、少し眉をひそめた。
「真琴、変なことしないで」
凛の声は冷たくも、わずかに緊張感を含んでいる。光はその微妙な空気に、また心臓が高鳴るのを感じた。凛は普段は冷静で、距離を置くタイプだが、光といるときだけ少しだけ表情が柔らぐ瞬間がある。それが光にとって、小さな秘密のように感じられた。
「さて、今日はこの後どうする?」陽翔が軽く話題を振ると、光は考え込む。校庭の片隅では、颯が他の友人たちと談笑しながら歩いている。颯は自信に満ちた歩き方で、少し生意気そうに見えるが、内心では仲間たちの様子をよく観察しているタイプだ。
ふと、雪乃が校庭の端からゆっくりと歩いてきた。長い銀髪が風に揺れ、瞳はどこか遠くを見つめている。彼女は無言でベンチの近くに座り、弁当を広げる光たちをちらりと見た。光は思わず息をのむ。雪乃は口数が少なく、クールだが、その存在だけで周囲の空気が少し変わる。
「みんな、今日はちょっと特別な話があるんだ」真琴が突然言った。
「特別な話?」光は警戒しながらも興味をそそられる。
「ふふ、教えてあげないけど、少しワクワクしてくる話よ」
その瞬間、光の胸には、日常の中に潜む小さな秘密とギャップが交錯していることを実感する。陽翔の優しさ、凛のツンデレな反応、真琴の小悪魔的な振る舞い、颯の自信と観察力、雪乃の謎めいた存在――それぞれの個性が、今日という日を少し特別なものに変えようとしていた。
光は小さく息をつき、心の中でつぶやいた。
「今日も、何か起きそうだな……」
校庭に漂う夏の風と、少しの緊張感。日常はまだ平穏だが、光たちの夏は、まだ誰も知らない面白さで満ちていく――。




