第12話:恋の予感と小さな波紋
放課後の図書室。光は机に向かいながらも、心ここにあらずといった様子でノートを開いている。昨日の校庭での勝負や、颯との競争を思い返していると、自然と顔が赤くなる瞬間があった。
「光、ここ座ってもいい?」
真琴が小さな声で隣に座る。肩までの茶髪をゆるくまとめ、控えめに笑みを浮かべる。光は思わず息を呑む。
「もちろん…」
光が答えると、真琴はノートにふざけて落書きをしながら、紙をさりげなく光の方に滑らせた。その瞬間、光の手が少し触れ合う。二人は一瞬目を合わせ、赤面する。
「……な、何してるんだよ」光は慌ててそらすが、心臓が早鐘のように打っている。
「ふふ、ちょっとしたイタズラよ」真琴は小悪魔的に笑う。
その時、颯が図書室に入ってきた。颯は短めの黒髪を整え、手には本を持っている。光の視線をちらりと確認すると、颯は軽く微笑むだけで、静かに本棚の前に立つ。
光は心の中で動揺する。友情とライバル心、そして少しの恋心が交錯する瞬間。颯の静かな存在感は、思わず胸をざわつかせる。
「ねえ、光」真琴が再び小声で呼ぶ。
「昨日のドッキリ、大成功だったね」
光は微笑むが、視線の先には颯の存在があることを忘れられない。
凛は遠くの窓際で読書をしながらも、光の様子をちらりと観察している。わずかに頬を赤らめ、口元を引き締めている姿が、光の心に小さな波紋を生む。
陽翔は図書室の奥から微笑みながら光たちを見守る。
「二人とも、落ち着いて。無理せず自然にね」
その声に、光は少し心が安らぐ。友情と恋心が絶妙に混ざる瞬間だった。
窓の外、夕日が校庭を赤く染める。光は真琴の落書きに笑い、颯の存在に胸をざわつかせ、凛や雪乃、陽翔の存在も同時に感じながら、夏の学園で生まれる小さな恋の予感を静かに噛みしめていた。
「この夏は…何かが変わりそうだ」
光は心の中でつぶやき、ノートに軽くペンを走らせる。友情、ドッキリ、笑い、そして少しの恋心――すべてが交差する瞬間が、この学園には溢れている。




