第1話:夏の始まりは、ちょっと不思議な朝
朝日が淡いオレンジ色に街を染める。学園の校門前では、制服姿の学生たちが足早に通り過ぎていく。斎藤光は、少し大きめの白いシャツの裾を手で押さえながら、ゆっくりと門をくぐった。背は平均より少し高く、短く整えた髪は朝の光を受けて金色に輝く。まだ眠そうな瞳には、どこか好奇心と甘さが混ざっていた。
「今日も暑くなりそうだな…」光は小さくつぶやき、学園の敷地内へ足を進めた。
途中、校舎の前で黒川凛とすれ違う。凛は長い黒髪を一つにまとめ、鋭いけれど落ち着いた瞳で光を一瞥しただけで、そそくさと通り過ぎていく。だが、わずかに頬が赤いのが光には見えた。凛にとって、学校の朝はいつも戦場のようだが、光の存在には思わず反応してしまう瞬間があるのかもしれない。
「おはよう、光!」陽気な声が響く。振り返ると、白石陽翔が悠々とした歩き方で近づいてきた。短めの茶髪に柔らかい笑顔、少し大きめの体格が、彼の穏やかさを強調している。光が朝のぼんやりした頭を抱え込む前に、陽翔は手早く水筒を差し出した。
「忘れてるだろ、朝の水分補給は大事だって」
光は「ありがとう」と小さく返すと、水筒のキャップを開け、一口飲んだ。そのとき、視界の隅で三枝真琴が笑いながら何かを仕掛けているのが見えた。肩までの茶色い髪、瞳の色は茶色と金色が混ざり、不敵な笑みを浮かべる。どこか小悪魔的で、周囲の空気をほんの少し揺らす存在感だ。
「ふふ、今日も面白くなりそうね」真琴がつぶやくと、光は少し身構えた。彼女の視線の先には、何やら仕掛けられた小道具がちらりと見えたのだ。
校舎の向こうでは、颯と雪乃も姿を見せる。颯は鋭い目つきに自信満々な笑みを浮かべ、少し背を伸ばして歩く。光と陽翔を見つけると、軽く会釈して通り過ぎた。雪乃は黒いセーラー服に身を包み、冷静な表情のままゆっくりと歩く。長い銀髪が風に揺れ、朝日を受けて淡く光る。彼女の瞳には何か隠された思いがありそうで、光は思わず目を逸らした。
学園の鐘が鳴る。朝の空気がほんの少し張り詰める中、光たちはそれぞれの場所へ散っていく。しかし、今日一日が、ただの日常では終わらないことを、まだ誰も知らなかった――




