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【SF5位達成】『哀しみのマグナム』リバイバル  作者: 虫松
第五部 月面基地戦線

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第三話 手荒な輸送

トラクターのエンジンが「ゴトゴトッ」と唸りを上げ、赤土の山道をゆっくりと登っていく。


荷台にはアクス、イーグル、ディックの3人が揺れながら乗り込み、積まれた資材や燃料タンクがカタカタと音を立てていた。

照りつける太陽の下、遠くの稜線には酒泉衛星発射センターの通信塔が小さく見える。


「そーいえば、ドミノのおっさん、家族はいるの?」

イーグルが背もたれ代わりのコンテナに腕をかけ、気軽に声をかけた。


「娘が3人おるわ。こないだ休暇であってきたが、大きくなっていた。子供は勝手に育つな」

ドミノ曹長は、風に揺れる麦わら帽子を押さえながら笑った。


「3人!モテモテじゃないですか〜!写真とかあるんですか?」

ディックが身を乗り出す。


「運転席のハンドルの横に貼ってあるわ。いつも一緒だよ」


「おー!キュートガール!お父様、会わせてくださ〜い!」

イーグルが両手を合わせて拝むような格好をする。


「会わせるわけないだろが!軍人なんてもってのほかだ!」

ドミノ曹長は片手でハンドルを握ったまま、もう片方の拳を振り上げた。


「やっぱり、軍人は親に嫌われるんだろうなぁ」

アクスがぼそりと呟く。


「そりゃそうだ。死んでしまえば、お終いだからな。階級が特進したところで、遺影が増えるだけだ」

ドミノの声が一瞬、低くなる。


「・・・・・」

アクスが口を閉じ、遠くを見つめた。


「・・・・」

ディックも黙って空を仰ぐ。


重い空気を感じ取ったイーグルが、わざと明るい声を出した。

「私は生き残って、このキュートガールに会いに行きまーす!」


「会わせないって言ってるだろうが!馬鹿どもが!」

「がはははは!」曹長が笑い飛ばす。


「でも、曹長の娘さん、きっと強い女性なんでしょうね」

「そりゃあそうだ。ワシに似て、口も手も早い!」


「それは……怖いかも」

ディックが小声で呟き、イーグルが肘でつつく。

「おい、聞こえたら撃たれるぞ」


「なにゴチャゴチャ言ってんだ!もう少しで峠越えだ!覚悟しろ、トラクターが跳ねるぞ!」


「えっ!? うわぁぁぁ!!!」

荷台の3人が一斉に飛び上がる。ガタンッ!とトラクターが岩を越え、マグナムの部品が「ガシャーン!」と音を立てた。


「おいおい、このトラクター、大丈夫なんですか!?」

「心配するな!この“レッドドラゴン号”はまだまだ現役だ!」

「ネジ、落ちましたけど!」

「それは“勇気のネジ”だ!気にするな!」


ディックが苦笑いを浮かべる。

「勇気って便利な言葉ッスね……」


「曹長、この山道、長いんですか?」

アクスが尋ねると、曹長は後ろを振り向かずに答える。

「もうすぐだ。峠を越えたら、酒泉の発射台が見えてくる」


「おぉ、やっとロケットかぁ!早く打ち上げたいですね!」

イーグルが両手を空に伸ばす。


「焦るな、若造。宇宙は逃げん。だがな――時間は待ってくれん」

その一言に、アクスたちは思わず黙り込んだ。


やがて、夕陽が差し込み、赤い山肌が金色に染まっていく。

トラクターの影が長く伸び、風が心地よく頬をなでた。


「……ドミノのおっさん、娘さんたち、見てるといいな」

「ん? なんだ?」

「俺たちが、何のために宇宙へ行くのか。ちゃんと、伝わるといいなって」


ドミノ曹長は少しの間、黙っていた。

そして、ハンドルを握る手に力をこめ、

「伝わるさ。お前らが生きて帰ってくりゃな」とだけ言った。


トラクターはそのまま、夕暮れの山道を登っていく。

その先には、酒泉衛星発射センター。

そして、火星へ向かう新たな戦いが、待っていた。


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