第三話 赤い血の呼び声(Red Blood Revival)
アメリカ・カリフォルニア州。
夜の静寂を切り裂くように、通信端末が不意に点滅した。
バーバラは半ば寝かけていたが、その名を見た瞬間、全身が覚醒した。
「シャウラ」
画面に現れたのは、燃えるような赤髪を乱した女。
後ろでは爆発のような轟音、そして陽気な笑い声が混ざっている。
「よう、死の舞バーバラ! 久しぶりだねぇ!」
シャウラの声は、まるで戦場の爆風のように豪快だった。
「……シャウラ姉さん、久しぶり。」
「火星軍がオーストラリアに攻めてくるんだ。こっちは稼ぎ時だよ! あんたも来い、賞金稼ぎとしてさ!」
通信越しにも、火薬と鉄の匂いが漂ってくる気がした。
シャウラは笑いながら背後で子供たちを抱き上げ、まるで戦場の女神のように誇らしげに言った。
「こっちで傭兵の旦那と結婚してさ、子供もたくさんいるんだ。もう戦いからは足を洗ったと思ってたけど……どうやら血が騒ぐみたいでねぇ!」
「姉さん……変わらないね。」
「そりゃそうさ。スペインの戦いを覚えてるか? 私たち《赤い血の部隊》が、火星軍をまるごと地獄に送ったあの夜を!」
「忘れるわけないよ。あの戦いで……私は、生まれ変わったんだ。」
ふと、シャウラの視線が鋭くなる。
「で、アンタ。最近、顔色が悪いね。男でもできたのか?」
「……付き合ってる人ならいるわ。」
「ほう? 物好きな奴がいるもんだ! あはははは!」
「笑わないでよ……」
笑い声がひとしきり続いたあと、シャウラはふっと真剣な声に戻った。
「悩んでる時はね、バーバラ。暴れて、ぶっ壊して、血を見て、自分を取り戻すんだよ。」
「……姉さん、私、何かを忘れてたのかも。」
「そうさ。アンタも、私も――両親を殺された。あの時、誓っただろ? “戦場こそが私たちの生きる場所”だって!」
「……うん。」
シャウラはにやりと笑った。
「じゃあ決まりだ。《赤い血の部隊》、復活祭といこうじゃないか!」
バーバラは端末を閉じ、窓の外を見た。
夜の街の灯が、涙に滲んだ。
(マーシャル……ごめん。私、やっぱり止まれない。)
翌朝、格納庫の警報が鳴る。
赤い装甲のアーマードマグナムが起動する。
【レッド・パッションダンサー】
真紅の閃光。
エンジンが咆哮し、地を蹴る。
オリハルコンの刃が、月光を反射して妖しく光る。
「死の舞、再開よ!」
バーバラは誰にも告げず、
愛機と共に、再び戦場へと飛び立った。
バーバラはオーストラリアの大地で、再び死の舞が踊る。
そして“赤い血の部隊”の名が、再び世界を震撼させるのだった。




