第一話 猫と将軍と看護学生
アメリカ、カリフォルニア州郊外。
ミレーユの家のポストに、遠い戦地から一通の封筒が届いた。
封を開けると、砂ぼこりのついた写真と便箋。
写っているのは、笑顔で肩を組むアクス、ディック、イーグルの3人。
ミレーユは思わず微笑んだ。
「これが、長崎で話してた小心者ディックとお調子者イーグルね。ほら、見てアインシュタイン」
「ミャーー」
アインシュタインは気怠そうに伸びをして、手紙の上で丸まる。
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親愛なるミレーユへ
アジアの戦いが終わったことは知ってるだろう。
今、オーストラリアへ向けて移動してる。
俺専用のマグナムに乗ってるんだぜ。すげぇだろう?
手袋ありがとう。……でもオーストラリアは夏だった。
ごめん、もう少ししたら使うから。
早く戦争が終わって、君に会いたい。
愛してる。アクスより
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「……ふふ、相変わらず不器用なんだから」
ミレーユは写真を胸に抱きしめ、窓の外を見つめた。
その時。
庭の方から、ドタドタドタドタッ!!
「おんなーーっ!出迎えるにゃー!!!」
扉を勢いよく開けて飛び込んできたのは、ちびっこい将軍服の少年。
金ボタンが大きすぎて、まるで衣装に着られているようだった。
「誰っ!?」
「マロは、ハーン将軍! アジア戦線を支えし偉大なる少年将軍にゃ!」
「……子どもじゃないの。というか“にゃ”って何?」
「それは口癖にゃ! 猫を愛する者は語尾に“にゃ”をつけるのが礼儀にゃ!」
足元ではアインシュタインが警戒態勢。
「シャアァァアア!!」
「おぉ!かわいいにゃ〜! おいでおいで~マロは猫が大好きですにゃ~」
「こら、そんな抱きつき方したら──」
「フギャアアアアア!!!」
バシッ!!!
ハーン将軍の頬に三本の赤い線が刻まれた。
「うぎゃああ!こいつ、裏切ったにゃーーっ!」
ミレーユは溜息。
「だから言ったのに……アインシュタインは初対面の人、苦手なのよ」
「おのれぇ……!マロに向かって何という振る舞い!おい女、この猫を今日の料理として出せ!」
「この子、どんな風に育てられてきたの!? できるわけないでしょうが!」
「この鬼女めっ!反逆罪ですにゃー!誰か!誰か捕まえるにゃーー!」
……しかし部屋には、猫とミレーユしかいなかった。
ミレーユはこめかみを押さえて、深くため息をついた。
「はぁー……この子の面倒、1ヶ月も見なきゃいけないなんて……」
ハーン将軍は、ティッシュを鼻に突っ込みながら椅子によじ登る。
「マロ、ここで暮らすことになったにゃ。よろしく頼むにゃ!」
「(よりによってお子様みたいな将軍の保護者役なんて……)」
かくして、
おっとり看護学生ミレーユと、猫狂いの少年将軍ハーンによる、
波乱の“共同生活にゃーにゃん日記”が始まったのであった!




