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【SF5位達成】『哀しみのマグナム』リバイバル  作者: 虫松
第三部 アジア大陸戦線

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第十一話 地獄の開門 ― ラストエンペラー起動

中国王宮での闘い


地球軍1000万人。

火星軍700万人。


その膨大な軍勢が、


だが、この戦いはもはや数の勝負ではなかった。

孔明の手に託された、ひとつの“神”が存在したからだ。


ハーン将軍から全権を委任された孔明は、王室の中庭中央に

、試作機【ラストエンペラー】を据え付けていた。


巨大な鋼鉄の巨躯。高さ百二十メートル。

城壁を越えるその姿は、もはや“機械”ではなく、“要塞”そのものだった。


左翼には関羽のマグナム【青龍】が控え、

右翼には曹操の【黒龍】が浮遊装備を展開していた。


空気が重く張り詰め、全兵士が息を止める。


「……全砲門、チャージ開始。」


孔明の声が通信に乗った瞬間、王城全体が震えた。

ラストエンペラーの胸部が赤く脈動し、金属の咆哮のような音が夜明けの空を裂く。

機体内部の冷却液が蒸発し、白い霧が周囲を包み込む。


「青龍、黒龍、援護配置完了!」

「ラストエンペラー、エネルギー充填率……97%……98……99」


……100%。


挿絵(By みてみん)


巨大な口腔部の装甲が開く。

中に見えた砲身は、太陽をも焼き尽くすかのように輝いていた。


【火星軍 正門前】


火星軍は進軍を開始していた。

前衛には突撃歩兵師団が並び、後方にはアーマドコア部隊、さらにその背後に砲撃支援隊が布陣する。


「突撃準備! 門を破壊する!」

「榴弾砲設置完了! 射角調整――!」


そのとき、前方で異音が鳴った。


ギギギ……。


「なんだ? 門が……開いてるぞ!?」


正門が、自ら軋みながら開いていく。

次の瞬間、世界が白に染まった。


――――《閃光》――――


轟音。

視界が爆発する。

時間の感覚が失われる。


火星軍兵士

「な、なんだ!」

「光が! 光がこっちに!」


ラストエンペラーの口から、純白の光線が一直線に放たれた。

超高温のビームが地表を舐めるように走り、数百メートル先の土壌を分解。

アーマドコア部隊は一瞬で気化した。


火星兵たちは、焼かれるというより“消えた”。

影が一瞬、地に刻まれ、それもすぐに焼失。


「通信が……繋がらない……!?」

「司令部!前線部隊が全滅ですッ!」


指揮官の報告が途切れた。音声がノイズに変わり、画面は砂嵐だけを映す。


ビームの通過後、そこに残ったのは黒い地平線。

だが、後方の兵士たちはまだ生きていた。

彼らは恐怖の中で立ち尽くし、見た。仲間の残骸が、機械と肉の区別もなく溶けていく光景を。


「うわああああ! 助けて! 誰か水を……水をくれぇぇ!」

「隊長が……隊長がいない! 影だけ残ってる!」

「いやだ! 帰りたい……母さん、母さん……」


走り出した兵士が一人、焼けた地面に足を取られて転倒した。

手のひらの皮が剥け、地に溶けた鉄に貼りついた。

彼はそのまま叫びながら自分の手を引きちぎった。


「後退! 後退だぁぁぁっ!」

後方の兵が叫ぶ。しかし命令を伝える通信装置は全て焦げ付き、隊は混乱していた。


正門から一直線上に、黒焦げとなったアーマドコアの残骸が並んでいた。

装甲はねじれ、内部の操縦席は溶け落ち、ただ白煙だけがゆらりと立ちのぼる。


門は完全に閉ざされ、外からの突入を拒むかのように沈黙していた。

だが、その沈黙を切り裂くように、砲弾の咆哮と悲鳴が重なった。


「正門の突破は無理だ! 左右の門から攻めろ!」

ドミノ曹長が叫ぶ。


彼の声は爆風にかき消され、隣の兵士は返事をする間もなく頭部を吹き飛ばされた。


「うわああああッ!」

「腕が……腕がねぇえええっ!」

「医療班ッ! 誰かっ、誰か来てくれえええっ!」


火星軍の兵士たちは泥と血の中で転げ回る。

焼け焦げた肉の匂いが充満し、呼吸するたびに喉が焼けつく。


爆発の衝撃で吹き飛ばされた兵士の義足が、泥中に突き刺さっていた。

呻き声、泣き声、そして機械の駆動音が交錯する。


「もう……帰りたい……」

若い兵士が震える手で写真を取り出した。

そこには地球に残した恋人の笑顔。

次の瞬間、榴弾が落ち、彼の姿は光の中に消えた。


左翼では火炎放射の熱波が吹き荒れ、赤熱した鉄片が雨のように降る。

背中を焼かれた兵士が、立ち上がりながらもまだ銃を握っていた。

「まだだ……まだ戦えるッ!」

叫びは虚空に消え、瓦礫と共に崩れ落ちた。


血の海に沈む戦友を踏み越え、ドミノ曹長はなおも前を見た。

炎の中、王宮の中庭で輝く三門――ラストエンペラー、青龍、黒龍。

その砲口がゆっくりとこちらを向く。


「全軍、散開ッ! 撃ち落とされるぞッ!」


次の瞬間、空気そのものが爆ぜた。

轟音が天地を貫き、夜明け前の闇が真昼のように照らされる。

地平線の彼方まで、炎の波が広がった。


「救助班、応答せよ! 誰か生き残りはいるか!」


火星軍の医療ドローンが前線に飛び込む。

焦げた装甲の中から、まだ微かに動く影があった。

パイロットのヘルメットを開くと、そこにあったのは焼け爛れた顔。


「生体反応あり……いや、消えた……」

「熱量が高すぎる! ドローンが溶ける!」


作業員たちは思わず目を背けた。

焦げた肉の匂いと、焼けた機械のオゾン臭が入り混じり、呼吸ができなくなる。ある者は嘔吐し、ある者は無言で地面に膝をついた。


焦げた鉄の匂い、溶けた装甲の匂い、そして人の焼ける匂い。


地獄はすでに開いていた。

そして、戦いの幕は開いた。


多くの兵士の焼け焦げた匂いとともに。

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