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【SF5位達成】『哀しみのマグナム』リバイバル  作者: 虫松
第三部 アジア大陸戦線

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第九話 上海・戦士たちの休暇

長江の激戦を制し、火星軍はついに曹操の魏の主力部隊を撃破した。


その報せは世界を震撼させ、火星軍は上海にて補給を行うこととなった。

さらに新たな戦闘員が続々と到着し、兵力は七百万へと膨れ上がる。


それは勝利と緊張の狭間に与えられた。


たった三日間の休息。


「中国人と英知な国際交流してきまーす! チャイナドレスサイコーね!」

イーグルは軽快にバイクを吹かし、上海の街へ飛び出していった。

ヘルメットの後ろに翻る火星軍の紋章が、陽光にきらめく。


アクスとディックは、街の喧噪を遠くに眺めながら歩いていた。

摩天楼の隙間を風が吹き抜け、ネオンサインの残光が昼の街にも漂う。


「僕はね、新しいマイクロチップを探しに行くんだ。

性能が二倍のやつ。センサー系を改造すれば反応速度も上がる。」


ディックが電子部品のリストを広げながら言った。


「お前はほんと、戦争中もマニアだな。」

アクスは苦笑した。


「アクスは行かないよね?」


「……たまには一緒に行くか。」


ディックはぱっと顔を上げ、嬉しそうに笑った。

「なんかいいことでもあったの? o(^▽^)o」

「別にねえよ。」


本当は、あった。


アクスの胸ポケットには、一通の封筒が入っていた。

淡い香りのする手紙。ミレーユからのものだ。



==================


親愛なるアクスへ


お手紙ありがとう。私も愛してるわ、アクス。

写真を送ります。アクスも写真を撮って送ってきてね。約束よ。

兄はアメリカへ呼び戻されました。しばらく会えないけれど、

私は信じて待っています。

そうだ、手編みの手袋を作ったの。送ります。

愛を込めて。


ミレーユより


===================


アクスは無言で手袋を見つめた。

深紅の糸で丁寧に編まれたそれは、戦場の鉄と火薬の匂いの中で異様にあたたかかった。


「その手袋は何だい?」

ディックが不思議そうに首をかしげた。


「……別にいいじゃねえか。」

「今日は暑くないかい? それ、冬用だよね?」

「そういう気分なんだよ!」


アクスは赤面しながら立ち上がる。

「カメラ買いに行くぞ! カメラ!」


「スマフォでも撮れるよ?」


「もっといいやつで撮りたいんだよ!」


ディックは吹き出した。

「わかった、付き合うよ。たまには人間らしい趣味もいいね。」


二人は上海の電気街へと自転車で向かった。


露店が並び、客引きの声が飛び交う。香辛料の匂いと、どこか懐かしい音楽が混ざる。

アクスはカメラ売り場のショーウィンドウに立ち止まり、

レンズ越しに映る街の人々をしばらく見つめた。


カメラを購入


笑い合うカップル、走る子ども、空を舞う赤い風船。

そのすべてが、どこか遠い世界のように思えた。


夜。基地に戻ったアクスは、机の上に便箋を広げた。

だが、ペンを握ったまま、何も書けなかった。


....


今の自分の言葉では、彼女に届かない気がした。


アクスは静かに手紙をたたみ、封筒の上にミレーユの手袋を置いた。

窓の外では、上海の夜景がまるで星空のように輝いていた。


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