第八話 新たな3戦術
宇宙戦艦の一角にあるテストシミュレーションルーム。
光るホログラムの操作パネルや、仮想戦闘フィールドが展開される中、アクス、イーグル、ディックの3人が集まっていた。
「この間は助かったよ。ありがとう」
ディックが、真っすぐにアクスの顔を見て頭を下げた。
「殺戮のジャックを倒して、階級が伍長に格上げされたな」
アクスが短く言うと、イーグルがすかさず口を挟んできた。
「アクス伍長、ごちょうろう様(ご苦労)です! ガッハハハ!」
大げさに敬礼しながら笑い飛ばすイーグルに、アクスとディックは呆れたように顔を見合わせた。無言になる二人に、イーグルは口を尖らせる。
「おいおい、反応してくれよ〜」
「ディック、新しい戦術テストすんだろ?」
アクスが話題を戻すと、ディックは真剣な表情に戻った。
「うん。そうだね。何個か試してみたいんだ。……生き残るためには、技術を戦術でカバーするしかないよ」
ディックが操作卓に向かうと、ホログラムに戦術データが次々と浮かび上がる。
戦術名【デルタアタック】
「まずはデルタアタック」
ディックがそう言うと、シミュレーションに3機の戦闘機が現れた。機体が縦に一直線に並んでいたが、瞬時に左右に展開し、三角形の陣形を形成。
「縦に3列で接近して、敵のレーダーを惑わせた直後、左右に分裂してトライアングルフォーメーションになる。敵の回避ルートを封じて、中央に集中砲火を浴びせるんだ」
「つまり、獲物を逃がさない蜘蛛の巣ってわけか」
アクスが腕を組みながら呟く。
「こっちの位置取りが鍵だな。タイミングと間隔をミスると、フォーメーションが崩れる」
イーグルも納得したように頷いた。
戦術名【ガードカウンター】
「次はガードカウンター。これは接近戦用」
映像では、盾を装備した機体が前進。敵のビームを受け止めながら突進し、反動で敵が後方へ吹き飛ばされる。そしてその瞬間、後衛の2機が一斉に射撃。
「敵の攻撃を正面で受けて弾き、そのスキにカウンター。盾役は高装甲のアクスが適任だよ」
「俺に突っ込ませる気か……まあ、悪くない」
アクスが口元を引き締める。
「吹っ飛んだところでハチの巣って寸法だな。うひゃ〜、派手にやれそうだ」
イーグルは楽しそうに手をパンッと叩いた。
戦術名【メテオ(流星)ストライク】
「そして最後は、これが決め技となるメテオストライク!」
ディックの声と同時に映像が展開。彼の機体が後方からミサイルを全弾発射。そのミサイル群の間をすり抜けながら、アクスとイーグルの2機が突撃。ミサイルが敵のバリアを崩壊させた直後、2人がビームソードを突き立てる。
「ディックの全弾ミサイルでバリアを削り、その混乱の中で俺とイーグルが接近戦に持ち込む」
アクスが真剣な表情で確認する。
「ビームソードを一閃。敵、爆☆散。まさに流星のごとくってやつだな」
イーグルが得意げに頷いた。
「それぞれの戦術はコンピュータに反映させたから、戦術名を言えば自動的に展開されるよ」
「スクランブル8を加えれば、これで4戦術。敵に応じて使い分けたり、組み合わせて使える」
「俺のギャグも追加しようぜ。名付けて【爆笑の陣】……戦術でギャグが出て気ません術! ガッハハハハ!」
「……」
アクスとディックはまたしても無言だった。
その時、艦の外を映すモニターに、蒼く輝く惑星が映し出された。
「……あれが地球か」
ディックが小さく呟く。
「15年ぶりだな」
アクスも同じく、小窓の外に目を細めた。
静かに、しかし確実に、戦火の地球圏が彼らの前に迫っていた。




