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第45話 ハンプティ・ダンプティはどすんと落ちた。

「ハンプティー・ダンプティーは塀の上に座った。ハンプティー・ダンプティーはどすんと落ちた」

 そう言うと、五代目とシフリン親子の居る右端の窓の反対、左端の窓を開けた。


「王様の馬が総がかり、王様の家来も総がかり。だけど、ハンプデイ・ダンプティもとに戻らない(*注1)」

 そう言い終わると、ヒョイと窓の欄干に腰掛けて両手を離し、足をぶらぶらさせてニヤリと笑ったのだ。


「わかってないなあシフリン君達、目的を間違えてるよ。五代目を人質にして安心しちゃってるけど、肝心の俺が死んじゃったら願い事は叶わないんだよ? ほうら落ちちゃうよー、どすんと落ちたらおしまいだよー」


「お、おいやめろ、ほんとに死んじまうぞ」

 Jr.のやつ慌てている。金の卵を産む鶏に死なれては困るのだ。


「だって僕の一生かけた良い子になるって言う夢、今君がダメにしちゃったし。もう生きてたって仕方ないじゃん。五代目にも散々迷惑かけたから、死んでお詫びするんだよーだ」


 そう言って、チラリと私を見た。そうか、時間稼ぎか!


「……いるぞ!捕まえろー」廊下に声が響く。

 しまった、10分経った!


「マザー、シンバに赤い瓶だ!」

 マザーがシンバに、“時進みの水薬”をかける。

 

「ガオー!」 突然上がるライオンの咆哮。

「ひゃあああああ!」

 タテガミを揺らして現れた大人のライオンに、みんな散り散りになり逃げていく。


「10時33分」兎娘が叫ぶ。

「モリアーティ、いまだ」


 モリアーティが五代目と、シフラン親子を見た。

「五代目、大好きだよ。君は必ず助かる」


 よし、これで思いっきり動ける!


「でも、お前らは大っ嫌いだ、二人とも死んじまえ!」 


「B・B、アイツらを窓から突き落とせ」

 !……なぜ私はこんなことを言ったんだ?


 私の指示にB・Bの体は、躊躇せず突進。ダブル・ラリアートでシフリン親子を捉え、そのままガラスを突き破り、窓枠も破壊して、三人とも落ちていった。

「きゃーいやー、助けてー!」アイリーンの悲鳴。


「うわあー!」巻き込まれ、椅子ごと窓から落ちそうになる五代目。


「マザー、ロープだ!」

 マザーがロープ二本で五代目を捕え、引き止めた。


「五代目、大丈夫か?」

 私と兎娘が駆け寄り、椅子から五代目を自由にした。


「よかったあー」兎娘が泣きながら五代目に縋り付く。


「助かった……モリアーティ君、ありがとう」

 兎娘の肩越しに、青ざめた顔の五代目がモリアーティを見て笑った。


 モリアーティも笑顔を返す。でも、ふいに泣いてるような顔になり。


「モリアーティ君ダメー!」五代目の悲鳴。


 振り向くと、モリアーティの体が窓の外にあった。飛び降りたのだ!

 急いで窓から下を覗くが、もう地表半分ほどに落ちかかっている。


「黒兎、モリアーティを止めろ!」

stop(トマレ)」黒兎が叫ぶ。モリアーティが空中で静止した。


「ハ、ハヤク シロ。 30ビョウ シカ モタナイ」


「マザー、ロープをモリアーティに!」

「遠すぎる、届かないわ」

「確かロープは2本出せるはず、それを繋いで」

「そ、それでも足りない、あと5フィート……(*注2)」


「ガウッ」

 シンバがモリアーティに向かって飛び降り、彼の左足首を噛むと尻尾をピンと伸ばした。


「マザー、シンバの尻尾にロープを繋げ!」

 ロープが、スルリとシンバの尻尾の先に絡みついた。


「モゥ…… ゲンカイ」

 黒兎が倒れた。体が真っ白になっている、燃え尽きたらしい。


 モリアーティが再び落下。ロープがピンと張る。マザーが引きずられて、落ちそうになり、私が彼女のマントを掴んだ。


「サリーさん、風の精霊マニトウを呼んでくれ」

 凄まじい竜巻が起こり、落下したものを浮き上がらせた。モリアーティとシンバが浮き上がってきた。


「みんな、ロープを引けー」(*注3)

 マザーのロープを私が前に出て掴み、叫んだ。

 私、マザー、五代目、ドック、兎娘、みんな必死に引っ張ってやっと引き上げた。


「あはは……生きてる。俺なんか死んだ方が良かったのに」

 右足の銃の傷と、左足のシンバに噛まれた傷をマザーに治してもらいながらモリアーティがぼやいた。


 ごっちーん!


「いたー!」モリアーティの悲鳴。私の強烈なゲンコツが脳天に決まったのだ。


「馬鹿野郎! どれだけ心配したと思ってるんだ」


 その私を押し除け、五代目が前に出た。

 ぱん、ぱん、ぱん、ぱーん! 五代目の往復ビンタが炸裂する。


「モリアーティ君のバカ、バカ、バカ! 死ぬとこだったんだぞ」

 大泣きしながら、襟首を掴んで振り回している。


「今度死のうとしたら、殺してやるからなー!」文法になっていないぞ五代目。


「そうよ。今度やったらこの耳、ウサギの長さまで引っ張ってやる」

 兎娘も目を釣り上げて、後ろから耳を掴んで引っ張った。


「ちょっとみんなやめて! いくら治療しても、間に合わないじゃないの」


 マザーが悲鳴を上げた。シンバだけがペロペロと、モリアーティの頬を舐めているが、ライオンの舌じゃかえって痛そうだ。あ、血が出てきた。


 ********

(*注1)マザー・グースのなぞなぞ。答えは卵。


(*注2)ヤード、ポンド法に基づく長さの単位。1フィートで、約30.48cm


(*注3)ちなみに、ホームズさん(お爺さん)マザー(お婆さん)五代目(孫)ドック(犬)ライオン(猫)兎娘ネズミが、ロープを引っ張るで、ロシア民話「大きなカブ」になっております。

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