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第3章  ブラック・フライデー編(25,000字)第37話 行方不明の2人

【作者注】今回も、たくさんの(*注)が出てきます。読まなくてもストーリー上問題がないので、読み飛ばして下さっても大丈夫です。興味と時間のある方だけお読みください。


 *******


「おい、モリアーティと五代目が、誘拐されたんだって?」


 黒兎と一緒にホールを出ると、モリアーティの家の前だった。

 夕暮れの中、兎娘のビオラが、ライオンの赤ちゃんシンバを抱いて待っていた。


「ホームズさん、五代目も一緒に拐われたの。もう二日になるのよ」


 顔は青ざめ、綺麗な紫の瞳が泣き腫らして赤くなっている…‥が、その格好は何なんだ? 上から下まで全身あのパークのネズミだらけじゃないか。あの時買った100周年のジャージからネーム入りハットまで。


「モリアーティ ガ ディズニーランド ノ ネンカンパス ヲ プレゼント シタカラナ。 オレモ イツショニ ショッチュウ イッテタ。 ゼンシセツ コンプリート シタンダゾ」


「何をうかれてるんだ。そんなだから誘拐されたんじゃないのか!」


「だって今日の感謝祭サンクス・ビギンズデイ(*注1)で、私達結婚する予定だったのよ! お式の準備も全部済んでたのに……ともかく中に入って、みんな集まってるの」


 モリアーティの屋敷のティールームには、マザーとブリジットさん(五代目のお祖母さん)エホナラさん(モリアーティの母方のお祖母さん)ともう一人、見知らぬ老婦人がいた。長く編んだ三つ編み、動物の骨の首飾り姿は、インディアンのシャーマンの様に見受けられる。


「ホームズさん、紹介します、モリアーティ君の父方の祖母のサリー・ジャックマン。彼女と私とエホナラは大学の同期なのよ」

 五代目の祖母のブリジットさんが紹介してくれた。

 そして何故かピエロのお父さんのアーリー氏までいた。


「何故あなたがここに?入院してなくて良いんですか」


「もう大丈夫です。モリアーティさんが言ってくれたんです。『大丈夫、お父さんきっと良くなるから』って。それで新しい病院で最新の治療を始めたら、ステージ4だったのにどんどん良くなって、今じゃ癌は完治して、もう退院したんです。」


 その言葉に呆然。モリアーティの言霊能力、半端なし。


「及ばずながら、私もモリアーティさんを探すお手伝いをしております。

 実は呪いをかけられてたチャン一族の一部の者が、モリアーティさんを逆恨みして、知り合いの中華マフィアと結託。仕返ししようとしてたんです。

 そちらは警察の協力のもと、全員逮捕となり、今回の誘拐犯ではないことが分かりました。今は、チャン一族と共に華僑のルートを通じて、情報を集めています」


「他に手がかりはないのか? 黒兎の鼻でもダメか」


「ワガハイ ノ ハナデモ ミップウクウカン ハ ダメナンダ。 レイゾウコ ノ ナカ トカ クルマ ヤ ヘリコプター デ イドウ サレタラ オエナイ」


 なるほど、警察犬でもそれは無理だな。


「モリアーティ君が、シンバを飼う許可もらうための書類を届けに、市役所に行こうとして二人で『自動運転タクシー』(*注2)に乗って、それきり消えてしまったんです。身代金の要求もないし。モリアーティ君はともかく、五代目は人の恨みを買うような子じゃないのに」とブリジットさん。


「モリアーティはともかく? 彼は恨みを買う覚えがあるんですかな。いい子にしてると聞いていましたが」


「あの子は六歳の時、父の仇の男を、言霊を使って一人殺してる」

 サリーさんが言った。


「なんだって! だがあの言霊能力を使えばあり得るな。そうだ、聞きたいことがあった。エホナラさん、モリアーティが言っていた『言霊使いで子孫に生まれ変わる道士』とはどんな人物なんです?」


「私、子供の頃から頭の中に話しかけてくる男がいたの。危ないことや、困ったことがあったらいつも助けてくれた。彼は前世の私の幼馴染で、今度生まれ変わったら必ず私のところに行くと約束してたからって。それでその……私は覚えてないんだけど彼がいうには、私は西太后の生まれ変わりなんですって(*注3)」


 クラッとした。よりにもよって西太后……。そんなのに育てられて、いい子に育つ訳ないじゃないか!


 ********

(*注1)感謝祭サンクス・ビギンズデイ11月第三木曜日。1620年メイフラワー号に乗ってアメリカにやってきたピルグリム達は、最初の年に作物が取れず、地元のインディアン達に助けられます。翌年は豊作。助けてくれたインディアンを招いて共に祝ったのが始まりとされています。でも本当のところは、先住民迫害への白人側の罪悪感が生んだ、都合のいい作り話のようです。2023年は11月23日。次の日の金曜日は“黒字の金曜日”(ブラックフライデー)と言われ、クリスマス商戦の始まりになります。みんなにとってはまさに“黒い金曜日”でした。


(*注2)無人タクシー、ロボタクシーとも。2023年8月10日、カリフォルニア州は世界に先駆け、サンフランシスコ全域で、自動運転技術とレーダーセンサーを組み合わせた、自動運転タクシーの運行にゴーサインをだした。しかし、制御不能に陥りかねないロボタクシーの安全性に対する懸念は、拭いきれていません。


(*注3)西太后。清朝末期の権力者、満洲の葉爀邦拉エホナラ氏出身。清の威豊帝の側妃。同治帝の母となり、西宮の皇太后(東は正室)と呼ばれるようになる。同治帝・光緒帝の後見人として47年政権を担う。死に際に溥儀を次期皇帝に指名するも、その三年後に清王朝は滅亡。イギリス工作員が、中国植民地化のため、西太后を悪者にした捏造本を出版。映画化もされ、西太后の名は稀に見る悪女として世間に広まった。実際は、女性でありながら、清王朝を西欧列強から必死に守り抜いた、女傑だったようです。



     


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