第20話 治癒師免許と聖女
群発頭痛を治癒してからは、これといった事件もなく、無事業務時間が終了した。
業務時間終了後は、全員一か所に集められ、今日の仕事の報酬が渡されることに。
まずは事務コースの人たちから報酬が渡されて……彼らは先に解散となり、残るは俺とクラスメイトの子のみとなった。
クラスメイトの子の報酬が渡され、俺の番に。
「そして……ハダル君だな。君の報酬についてだが……一つ提案がある」
係員は俺の報酬を手渡す前に……そんな前置きを口にした。
彼はこう続ける。
「君、国家治癒師免許試験を受けないか?」
……なんでそうなる。
疑問に思っていると、係員が理由を説明した。
「今回の君の働きだが……明らかに、通常のインターン生のそれを超えていた。具体的には、正規の治癒師すら凌駕するくらいだ。だが……国の規定上、カテゴリー3を超える高度な治癒行為の対価を受け取っていいのは、治癒師免許を持っている者のみと定められている。よって、今のままでは通常のインターン生以上の報酬を支払うことができない」
……だからいっそのこと治癒師免許を取ろうってか。
逆転の発想は嫌いではないが、なかなか無茶を言うな。
「なんでも君……ゼルギウス王立魔法学園の筆記試験、満点だったようだね。一応は、優秀な生徒でも一割は浪人するテストなんだが……君なら一夜漬けでもワンチャンあるんじゃないか?」
しかも試験明日かよ!?
「私もそう思います!」
驚いていると……なぜかクラスメイトの子が、目をキラキラ輝かせながら賛同した。
そういえば、なんで係員が俺の入試成績を知ってるのかと思ったら……この子が話してたのか。
二回目の休憩の時、何やら話が盛り上がってるみたいだなーとは思っていたが。
「ま、落ちても来年受け直せば、受かったタイミングで上乗せ分の報酬は支払う。……これが教科書と過去問だ。一応試してみないか?」
まあそこまで言うなら、ダメもとで受けてみるか。
俺は貰った二冊を手に宿に戻り、双方通しで読んだ。
◇
次の日。
結論から言うと……治癒師試験は楽勝だった。
理由は一つ。
難しい試験とはいっても、その難しさの方向性が「問題は基礎的だが覚える量がとにかく膨大」というものだったからだ。
難しい試験といっても、「合格者平均点が100点満点中50点」みたいなのもあれば、「きちんと勉強すれば誰でも解けるようになるが合格最低点は100点満点中95点」みたいなのだってある。
そして今回俺が受けたのは、後者の意味での”難しい試験”だ。
が……そういった類のものは、正直ある程度魔法が使えれば何とかなる。
24時間以内に目を通した本の内容とかなら、問題文を読んでパッと出てこなかったとしても、収束度を上げたパーフェクトヒールを海馬にかければだいたい思い出すからだ。
ちなみに試験の規約でパーフェクトヒールの使用は禁止されていなかったのでこれは不正ではない。
結果、所要時間の半分くらいで全問解き切ることができた。
正答率が重要なテストなので、見直しも何度もしたが……一か所として、ミスも見つからなかった。
採点は後日らしいので、俺は試験終了と共に帰宅しようとした。
が……その時、昨日の係員が俺を見つけ、声をかけてきた。
「ハダル君、ちょっと今時間大丈夫かな?」
「……なんでしょう」
「実は今日、聖女様が定期行脚でウチの教会に来ているんだが……君のことを話すと、是非会ってみたいというのだ」
えっと、聖女……あ、アブソリュートヒールの発動に一時間かかる人か。
何の話だろう。
「大丈夫ですよ」
特に予定もないので、俺は了承することにした。
「じゃあ、こっちに来てくれ」
係員の指示のもと、俺は別室に案内された。
◇
係員に案内された部屋では、おそらく18歳くらいに見える凛とした感じの少女がそこで待っていた。
「はじめまして。私がこの国で聖女を勤めています、モルデナ=アステラゼネカです」
早速彼女は、そう言って自己紹介する。
「あなたが突発的な発作を起こした同僚にアブソリュートヒールを処方したハダルさんですね?」
「あ……はい」
「お待ちしておりました」
聖女のモルデナさんはそう言いつつ、俺にソファーに座るよう促した。
座ると……早速本題に入ることとなった。
「単刀直入に言います。ハダルさん……私にアブソリュートヒールの高速発動法を教えてください!」
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