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異界事変 ~狂いし妄者は殺戮の日々を味わう~  作者: 結城 からく


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第94話 異界事変㉓

 騎士は大鎌を捻る。

 その分だけ"終焉"の腹を破る刃が回転し、傷を抉った。


 よろめいた"終焉"が光の液体を吐く。

 どうやらそれは血液のようだった。


 "終焉"は背後に立つ騎士を一瞥し、続いて俺に視線を戻す。

 そして呆然と呟いた。


「なん、で」


「油断したな。俺だけを警戒するからそうなるんだ」


 密かに仕組んだ作戦は成功した。

 ここまでの戦いから、"終焉"は俺を最大の敵として認識してきた。

 自らを殺し得る存在と確信し、常に行動を阻害した上で致命的な一撃を負わないように立ち回っていた。


 そうして無意識のうちに、他の者への警戒を怠っていたのだ。

 まさに狙い通りの反応であった。

 だから騎士は、強烈な不意打ちを叩き込むことができたのだった。


 "終焉"にとっての誤算は、大哭きが生物にも干渉できる点だろう。

 俺は"終焉"と戦いながらも騎士の装備に細工をして、彼女の鎧と大鎌を哭かせて瞬間的に性能を向上させた。

 それによって空間の歪みがあろうと貫ける威力を授けたのだ。


 事前に指示を出していたわけではない。

 騎士が変貌する装備から己の最適解を察して行動したのであった。


 "終焉"が至近距離に裂け目を生成して、騎士を押しやるようにぶつけながら振り払う。

 大鎌が抜けて、亀裂の入った胴体が露わになった。

 所々が黒く汚れているのは、俺の力の影響を受けているからだ。

 傷口から大哭きに蝕まれている。


 無論、騎士のように強化されることはない。

 影になった部分は、毒のように"終焉"の身体を侵していく。


 俺はふらつく"終焉"を見て笑った。


「今のは効いたろ。やせ我慢も辛いはずだ」


「全然平気」


「はは、言ってろよ。どうせすぐにボロを出す」


 じきに強がっていられなくなる。

 その時こそ"終焉"が死ぬ瞬間であった。


 裂け目を躱しながら騎士が隣まで退避してきた。

 俺は彼女の健闘を称える。


「よくやった。伝説の"終焉"にぶち込んだ感想は?」


「悪くない、と思う」


「そいつはいい。憎き妄者の力に抵抗はないんだな?」


「手段は、選ばない」


「良い答えだ」


 騎士は極限まで集中して"終焉"の動きを注視する。

 妙なこだわりを持たず、目的のためにプライドを捨てる姿勢は素晴らしい。

 こういう人物こそ死闘を生き残ることができる。


 影の鎧に包まれた騎士は、愛用の大構えを振りかぶる。

 俺の援護がなくとも押し切らんばかりの気迫だ。

 いつも物静かで口下手だが、研ぎ澄まされた殺気は、古代の妄者に届かんばかりの鋭さを備えていた。

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