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異界事変 ~狂いし妄者は殺戮の日々を味わう~  作者: 結城 からく


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第91話 異界事変⑳

 破滅的な光景を前にして、俺は呆気に取られる。

 その凄まじさに圧倒されていた。


 もはや個人の発揮できる力を超越している。

 目の前の存在は妄者から逸脱していた。

 光り輝く外見も相まって、神と錯覚しそうな雰囲気だった。


「すげぇなおい……」


 大地が揺れて裂け目に呑まれていく様を眺めていると、医者が肩に手を置いてきた。

 彼は嘆息しながらぼやく。


「君が挑発したせいで、取り返しの付かないことになってしまったよ。どうするのだね」


「殺せばいいんだろ。簡単な話だ」


 別に神々してくも戦意は喪失しない。

 俺は気を引き締めて"終焉"を観察する。


 先ほどから騎士が果敢に攻撃しているが、巨大化した裂け目のせいで上手く接近できずにいる。

 医者のアンデッドが援護しているものの大した効果は無い。


 それも仕方なかった。

 "終焉"の周りに固定された裂け目は、常に空間の吸引を行っている。

 近付きすぎると呑まれて即死するのだ。

 迂闊な行動が死を招く以上、騎士が慎重になるのも当然だった。

 むしろこの状況でまだ攻撃を試みる執念を褒めたいくらいである。


(しかし、あの裂け目は何が目的なんだ?)


 俺は世界を崩壊させる裂け目に注目する。

 "終焉"は動きを止めて操作に集中していた。

 それなりに大事な工程なのだろう。


(つまり攻撃の予備動作なのか?)


 そう考えていると、別の裂け目から見覚えのない建造物の残骸や生物を排出されていった。

 無造作に吐き出されたそれらは大地に積み上がって散乱する。

 "終焉"の裂け目は、吸引と排出を同時進行で繰り返していた。


 その時、裂け目の一つから見えない何かが発射される。

 俺は直感に従って躱す。


 飛んできた何かは医者に直撃した。

 元は極東の大王だった肉体が木っ端微塵となる。


 それからすぐさま近くにあった人間の死体が起き上がった。

 医者が予備として取っておいたのだ。

 彼は物理的な死にも動揺せずに解説する。


「異なる世界を繋げることが"終焉"の固有能力みたいだね。吸引と排出を繰り返すことで空間の歪みを蓄積し、それを飛び道具として放てるらしい」


「無茶苦茶しやがるな」


「まったくだよ。時空の亀裂で呑み込むのは、この攻撃の前段階に過ぎなかったわけだ。もし吸引との排出が続けば、いずれ世界は破綻する。まさに"終焉"の二つ名の通りだ」


「させねぇよ。俺が殺して止める」


 そう答えると、医者が興味深そうに微笑する。


「策はあるのかね」


「もちろん用意しているさ。とっておきの最終手段だ。特別に見せてやるよ」


 俺は前に進み出て、世界を壊し続ける"終焉"を注視した。

 向こうはこちらの動向を意識すらしていない。

 敵として認識されていないのだ。


 屈辱的なことだが、別に気にすることはない。

 その判断を後悔させるだけの反撃をするまでだ。

 俺は影の身体に力を込めると、最終手段である"大哭き"を始めた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今話もありがとうございます! [気になる点] 特に気になるのはハワードの次の一手ですが…… [一言] 次の展開を気にしながら待ちます。
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