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異界事変 ~狂いし妄者は殺戮の日々を味わう~  作者: 結城 からく


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第82話 異界事変⑪

 俺はすぐさま疾走する。

 "終焉"の妄者に向かって突き進んでいく。

 他の者達も合わせて動き出したようだが、そいつらを置き去りにして駆ける。

 あいつは俺だけの獲物だ。

 誰にも譲ってやる気はなかった。


 光の卵はほとんど殻が残っていない。

 曖昧な輪郭の光が浮遊するのみだ。


「おっ」


 僅かな殻が剥がれて、光の槍と化して俺に襲いかかってくる。

 計数十本の槍に分裂すると、そのすべてが俺を狙ってきた。


「ハハ、最高のもてなしだなァッ!」


 俺は指の刃で切り裂きまくる。

 正面から叩き潰しつつ、角度によっては受け流した。

 受け流した槍が別の槍にぶつかって相殺される。


 躱したはずの槍が、挙動を反転させて再び襲いかかってくる。

 俺は五感を研ぎ澄ませて対抗した。

 掠れば死にかねない攻撃に対処しながら接近していく。


 たった一瞬の時間で数千の攻防を繰り返す。

 久しく感じなかった死の香りが濃密に圧縮されて降りかかってきた。

 その中で俺は、極上の殺意に浸っていた。


「最高だ! 最高だ! もっと寄越せェ! ぶっ殺してやる! ハハハハハハァッ!」


 歓喜するたびに俺の動きは加速する。

 光の槍を防ぐたびにキレが増していた。

 俺の全盛期は、今この瞬間だ。

 それを凄まじい勢いで更新し続けながら"終焉"に迫る。


 俺は大地を踏み割りながら跳ぶ。

 すべての槍を破壊し、殻を失った"終焉"に接近した。


 そこに存在するのは魂を持つ光だ。

 圧倒的な神々しさを纏いながらも、その本質は妄者である。

 殻を完全に失ったことで、向こうの感情が伝わって来るようになった。


 ――光が抱いているのは、圧倒的な虚無。


 何もかもを無駄と捨て去る悪辣な考え、破壊衝動となって発露している。

 万物に価値を認めず、故に躊躇いなく殺す。

 実に低俗かつ幼稚でどうしようもなく妄者らしい自己中心的な思想があった。


(見えたぞ。奴の底が見えた! 結局はクズなんだッ! 俺と同じ最悪の妄者だっ!)


 俺は言い様のない快感を覚えて、指の刃を突き込む。

 光から伸びた糸が巻き付いて刃を蒸発させた。

 そのまま俺にまで絡まってきそうだったので、寸前で振り切って避ける。

 糸はそれ以上の追撃はせずに縮んでいった。


 俺は重力に引かれて落下する。

 地上から"終焉"を見上げた。

 ただの光は、形状を変えて人型に成ろうとしていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今話もありがとうございます! [気になる点] >ただの光は、形状を変えて人型に成ろうとしていた。 さあ、「終焉」はどんな姿を取るのか? [一言] 続きも楽しみにしています!
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