第75話 異界事変④
医者が大まかな作戦内容を説明する。
まずは"終焉"の妄者の復活地点に向かう。
復活地点は既に特定済みだそうだ。
転移門の座標設定も行っているので、今すぐにでも急行できる。
到着した俺達は、蘇りかけている"終焉"に波状攻撃をする。
回復の隙を与えずに力を削ぎ落としていくのが狙いだ。
そうして最終的には封印か殺害を試みる。
基本的には前者が優先で、可能ならば後者といった形だった。
「本番は三日後だ。状況によっては縮まることがあるかもしれないが、延期はまずない。完全に復活される前に封印するか、始末できるのが一番だからね」
「心配すんな。俺がぶち殺してやるよ」
「それを願っているさ。正直、君がいなければ太刀打ちできないのが本音だ。各国も尽力しているが、おそらく徒労に終わるだろう」
医者の調査したところによると、各国は足並みが揃っていないらしい。
それどころか"終焉"の捕獲や研究を企んでいる国もあるという。
復活の原因を捏造して、敵国の批難に利用している国まである始末だった。
真面目に取り組んでいる国も存在するが、どこも大した戦力を保有していない。
たとえ妄者が束になったとしても敵う相手ではないのだ。
頼りにしようとするのは間違いである。
(やはり俺達がやるしかないな)
その時、騎士が立ち上がった。
彼女は静かに部屋の外へと向かっていく。
「どこへ行くんだ」
「鍛練。少しだけ、猶予がある」
騎士は言葉少なめに答えると、そのままどこかへ消えてしまった。
その背中、やる気に漲っていた。
どうやら本気で"終焉"を狩ろうとしているらしい。
俺は肩をすくめてぼやく。
「真面目だな。下手すりゃ死ぬってのに」
「彼女は"妄者殺し"だ。意地があるのだろうね」
「意地で死んだら元も子もないけどな」
「それは君も一緒だろう?」
医者が見透かしたかのように言う。
俺も意地で"終焉"を狙っているのだと言いたいらしい。
どこか余裕を見せる薄笑いはそれを確信していた。
気に食わない表情に舌打ちした俺は、立ち上がりながら告げる。
「――目障りだから殺す。それだけだ」
「君らしい言い分だね。素晴らしいと思うよ」
医者の称賛を受けながら窓際へと歩く。
そこで一旦振り返ると、医者に指示を送った。
「細かい作戦は任せる。俺はただ全力で"終焉"を叩き潰す。邪魔だけはするなよ」
「もちろんだとも。君が存分に力を振るえるように舞台を整えてみせよう」
「そうかい」
俺は身を滑らせて窓の外へ落ちて、身体を哭かせて着地する。
通行人がぎょっとした顔で避けるも、それに構わず跳んだ。
街の屋根から屋根へと跳んで移動していく。
期限は三日間。
相手は神話時代の怪物である。
これ以上ない獲物なのだから、俺も仕上げておくべきだろう。




