第65話 強引な誘い⑫
俺が腕を振るうたびに、両断された武士が宙を舞う。
果敢に仕掛けてくる者から死んでいった。
かと言って、逃げる者を許すわけでもない。
死体から奪った刀を投擲して、串刺しにすることで始末した。
臆病者だって戦場に出れば等しく戦士なのだ。
途中退場なんて無粋な真似はさせない。
「うおおおおおおあああッ!」
頭上から雄叫びが聞こえた。
見れば、赤い肌の鬼が牙を剥き出しにして、大槍を構えている。
全身に仄かな光が帯びており、それらが肉体を強化しているのが分かった。
(近接型の妄者か)
放たれた刺突に対し、俺は指の刃を差し出した。
その動きで大槍を食い止めて、驚く鬼の首を切断する。
転がり落ちた頭部を蹴り飛ばすと、怯えていた武士の顔面に命中した。
両者の頭部が等しく爆散する。
(張り合いがねぇな。強くなりすぎたか?)
俺は武士を蹂躙しながら考える。
この国の妄者は、もっと手強かった印象があった。
決して弱くなったわけではない。
むしろ鍛え上げており、能力の水準は高くなっている。
それなのにどうにも物足りない。
期待外れな感じになっているのは、俺がそれ以上に成長したせいだろう。
この国を出てからもひたすら殺戮に明け暮れていたので、当時と比べて何倍も強くなったらしい。
妄者としての力は膨れ上がる一方だった。
天井知らずに強くなっているのは喜ぶべきだが、思ったより白熱した戦いにならないのは残念である。
俺は武士を殺しながら移動を始めた。
国王の始末が目的なのだ。
そろそろ城に向かっておくべきだろう。
ここで殺し続けても構わないものの、もし逃げられると面倒だ。
医者と騎士なら上手くやるだろうが、さっさと向かったところで損にはなるまい。
(それに、王城にはさらに強い連中もいるだろうからな)
国王は身の回りの警備を厳重にしている。
専属の部隊をいくつも作っており、誰も近付けない状態なのだ。
当時からそのような態勢を取っていた。
その徹底ぶりは狂人の域に達している。
乱世続きの国で頂点に君臨し続けているのだ。
単純な武力だけでは成し得ないことである。
それだけのこだわりがあるからこそ、国王の地位が揺るがないのだろう。
「ん?」
思考を遮るように背後から殺気が発せられた。
俺は振り返ることなく指の刃で払う。
弾かれた弾丸は、反射して別の妄者に命中した。
遅れて銃声が反響する。
かなりの遠距離からの狙撃だ。
仲間を犠牲にして、俺を仕留めようとしたらしい。
俺は視界と意識を意識を広げて殺気の出所を探る。
そいつの居場所を目視したところで、哭き崩した小石を投擲する。
遥か遠方の狙撃手は、その背中に穴が開いて即死した。




