第43話 死霊退治⑦
街を出た俺達は、死霊術師のいる廃村を目指して移動を始めた。
馬車などは使わず、哭いた姿でひたすら走る。
この方が遥かに速いからだ。
唯一、妄者ではない騎士も余力を以て追従している。
この中で最も速い俺は、他の連中に合わせて速度を落とす。
独断で突っ走って廃村に向かってもいいが、一応は仕事という形式なのだ。
依頼主である教会の意向も最低限は聞いておくつもりでいた。
だから修道女達を置き去りにせずにペースを合わせている。
ちなみに修道女は、四足歩行で駆ける筋肉男の背中に乗っていた。
随分と貴族じみた振る舞いだが、激しい振動で大変そうだ。
まあ、自分で走るよりは楽なのだろう。
頃合いを見て、俺達は休憩を取る。
地図を確認したところ、既に廃村は近いようだった。
まだ空気の淀みなどは感じられないが、そろそろ警戒すべきかもしれない。
休憩中、俺は修道女に尋ねる。
「標的は死霊術師だが、あんたの能力も似たような物かい」
「何のことでしょう」
「とぼけるなよ。妄者を改造する力だ。死体を弄れるんだよな?」
俺が語気を強めて訊くと、彼女は渋々と頷いた。
「……そうですね。妄者の力で拡張していますが、根幹は死霊術となります」
「そいつは頼りになりそうだ。期待しているぜ」
気楽に言いながらも、俺は修道女の様子を念入りに観察する。
今のところは特に気になる点はない。
至って普通に同行していた。
(こいつは何者なんだ)
俺は修道女の素性について考えていた。
教会内では妄者という時点で異端だが、元から死霊術師となるとさらに奇怪な立ち位置になる。
少なくとも真っ当な聖職者ではあるまい。
(大方、教会の裏稼業を任されていたんだろうな)
規模の大きい組織ほど、そういった存在で構成した部隊を保有している。
修道女もそこに所属していたのではないか。
教会の構図には詳しくないが、的外れな推測ではないはずだ。
忌避される能力ばかりを操る修道女など怪しすぎる。
「教会が何を企んでいるのかは知らないが、身の程を弁えろよ。俺は容赦しないからな」
「……ええ、分かっております」
「よく言うぜ。忠告はこれで最後だ」
ほんの気まぐれで威嚇しておく。
別に不要な行為だが、向こうが何かを隠しているのは間違いない。
司教ドエルとのやり取りでそれを確信していた。
いつ尻尾を出すか知らないが、その時は派手に暴れてやろうと思う。
(命令される立場ってのは大変だな……)
教会と俺の間で板挟みとなった修道女を見て、少しばかりの同情を覚える。
彼女に恨みはないが、不運な巡り合わせだったのだと思ってもらうしかない。




