第40話 死霊退治④
歩いているうちに、教会敷地の中央部までやって来た。
そこには立派な建物が建っている。
関係者らしき人間もいるが、俺が手を振るとどこかで逃げてしまった。
まるで化け物と遭遇したかのような反応である。
修道女は俺を建物脇の扉まで案内すると、そこで立ち止まって一礼する。
「依頼の説明はこちらでさせていただきます。中へどうぞ」
「説明役はあんたじゃないのか」
「私はただの案内役です。依頼主はこの教会の司教ですので」
「へぇ、そうか」
司教と言えば、教会の責任者だ。
つまり、この敷地で一番偉い奴である。
俺の活躍で勢力を増すロド商会だが、教会関連には手出ししないようにしていたらしい。
問題が生じると厄介なのだと店長がぼやいていた。
それなりの権力者なのだろう。
「後ほどお会いすることになるでしょう。くれぐれも騒ぎは起こさないでください」
「努力するさ」
俺が皮肉を込めて笑うと、修道女の頬が僅かに痙攣する。
澄まし顔を保とうとしているが、限界が近いようだ。
俺はそんな彼女を置いて扉を開いて中へと入る。
整理されたその部屋には小太りの男が待っていた。
「ハワード・レント様。ようこそおいで下さいました」
「あんたが司教かい」
「ええ。ドエルと申します。以後お見知りおきを」
司教ドエルは慇懃な態度で礼をする。
随分とへりくだった調子だが、どうにも怪しい。
善人に見えすぎるのだ。
どこか演技臭さが否めなかった。
(たぶん腹黒い本性でも持っているんだろうな)
俺は偏見を抱きながら近くの椅子に腰かける。
煙草をくわえてドエルを促した。
「挨拶はこの辺りでいいだろう。依頼内容を話せよ」
「承知しました」
ドエルは嫌な顔もせずに向かい側に座った。
ずっと柔らかい笑顔のままだ。
それがどうにも不気味である。
俺に恐怖心を抱いていないのも違和感があった。
妄者ではないようだが、何らかの攻撃手段があるのかもしれない。
様々な可能性を考えつつ、俺は本題を切り出す。
「俺を指名するということは、殺しの仕事なんだろう?」
「左様でございます。ただ、可能なら生きたまま捕縛していただけると助かるのですが……」
「たぶん無理だから諦めてくれ」
俺は即座に答えるも、ドエルの反応はやはり薄い。
彼は小さく咳払いをして話を進めた。
「あなた様に討伐を依頼したいのは、廃村に暮らす医者です」
「……何だって?」
「医者と言っても、ただの医者ではありません。その男は死霊術師なのです」
ドエルは深刻そうな面持ちでそう言った。




