第23話 代理戦争⑥
翌朝。
俺は街の片隅にある建物に呼び出された。
そこに代理戦争に参加する妄者が召集されているらしい。
徒歩で移動すること暫し。
特に何事もなく辿り着いた。
(よくも集められたものだな)
俺がこの街に来た時点で他に四人の妄者がいた。
ディンが死んで三人になり、そこから新たに出入りしているので正確な数は知らない。
とりあえず、指定された建物にいるのは四人だった。
入口には緊張した面持ちの衛兵が立っていた。
彼は俺を目にすると、震える声で言う。
「皆様はこの先でお待ちです」
「ああ、ご苦労さん。俺以外はもう集まっているのか?」
「はい。集合しております」
「こんな役割を押し付けられるなんて大変だな」
「い、いえ……」
衛兵は言葉に窮して下を向く。
その様子を楽しみながら、俺は扉を開けた室内に入った。
(さて。共闘するのはどんな連中だ?)
期待を込めて進むと、奥の部屋から声が聞こえてきた。
「遅かったじゃねぇか」
俺は無言で扉を開けてその部屋に入る。
真っ先に視界に入ったのは、革鎧を着た青髪の男だった。
鍛え上げた筋肉は、まるで魔物に膨らんでいる。
こいつは相当な怪力だろう。
哭いた際にも発揮されるに違いない。
背中には大剣を吊るしていた。
魔術的な効果はなく、ただの鉄板みたいな武器だ。
男が哭くと、それに伴って変貌するのだと思う。
典型的な戦士タイプの妄者であった。
「あなたが噂の"虐殺"……」
冷めた目で観察してくるのは、ローブを着た少女だ。
いや、少女と思ったが実年齢はもっと上だろう。
妄者の能力で若さを維持しているらしい。
偽装は表面的なものなので、同じ妄者なら一目瞭然だった。
指輪をはめた手は古めかしい杖を握っている。
魔術師タイプの妄者のようだ。
たぶん様々な術を操るはずである。
年齢を考慮すると、熟練した達人と言えよう。
「はじめまして。お噂は聞いております」
丁寧に礼をするのは、柔らかい笑みを浮かべた修道女だ。
まるでどこかの令嬢のような佇まいである。
無害そうに見えるが、こいつも立派な妄者だった。
気配からして補助系の能力に特化している。
ただ、細かな動きから察するに、肉弾戦もいけるタイプな気がした。
なかなかに面白い女である。
「これで揃ったのだろう……早く、話を始めるぞ」
部屋の端で椅子に腰かけるのは、着膨れした小柄な老人だ。
しわくちゃな帽子で顔の半分が隠れている。
爬虫類のような目が俺を一瞥しているが、あまり関心がない様子だ。
そんな老人は、身の丈を超える長さの狙撃銃を抱えていた。
全体的にもたついた動きで、今にも死にそうな枯れ具合だが、殺しに慣れた雰囲気を漂わせている。
状況次第では早撃ちも可能だろう。
たぶん殺し屋でもやっているのではないか。
(なかなか個性的な奴を集めたな)
俺は四人の妄者を見て笑う。
これから作戦会議をして、数日後には街を出発する。
そうして侵略に来る帝国軍を迎撃する。
街を乗っ取られないようにするのが目的だった。
これは楽しいことになりそうだ。




