第2話 その男は亡者②
室内に踏み込んだ俺を出迎えたのは、銃を構えた男達だった。
こちらの姿を目にした途端、連中から鉛玉の雨が浴びせられる。
「おっ」
銃撃がスーツを破るも、影の身体は素通りしていく。
痛みはない。
背後のドアや壁が破壊されていくばかりだった。
やがて弾切れになったらしく、銃撃が止まった。
穴だらけの袖を振って、顔面蒼白な男達を嘲笑う。
「無駄無駄。俺に銃は効かねぇよ」
哭いた妄者は基本的に無敵だ。
変貌後の容姿に左右されるものの、弾丸程度では死なない奴が大半であった。
もちろん俺も多数派に属している。
何万発と撃ち込まれようと平気だった。
「そら、反撃開始だ」
俺は近くにあった机を蹴り飛ばす。
回転する机は砲弾のような勢いで発射され、数人を巻き込みながら壁に激突する。
めり込んだ角には千切れた人肉がへばり付いていた。
軌道上には血みどろの道が出来上がっている。
「わひぃっ!?」
情けない悲鳴が上がった。
拳銃を捨てた男の一人が突進をかましてくる。
その手には短刀が握られていた。
「はは、いい度胸だ」
突き込まれた短刀を男の指ごと切断した俺は、相手の頭部を掴む。
そこからおもむろに振りかぶった。
「よっと」
軽いかけ声から男を投げる。
それは銃を撃とうとした別の男の顔面に命中し、両者の頭が爆散した。
血と脳漿がさらに室内を染め上げる。
「ははっ、物足りねぇなァ! もっと死ぬ気でかかってこいよ」
俺は叫ぶ。
縦横無尽に跳び回り、視界に映った男達を無差別に殺戮していく。
両手の爪で切り裂き、頭部を踏み潰し、臓物を引きずり出し、生温かい心臓を抉り、四肢を同時に解体した。
隣接する部屋を巡回して、隠れていた野郎も残らず始末する。
決死の抵抗を全否定しながら命を奪い続ける。
そうして一階を血の海に沈めた俺は、意気揚々と二階へ向かうのであった。