第13話 虐殺の対価⑨
その後、ギルドは俺の標的を特定した。
高い金を払ったのもあって、すぐに調べ上げてくれた。
まあ、元から犯罪組織としてマークされていたのだろう。
ギルド的にも壊滅してくれた方がありがたいから、俺に状況提供をすることで手軽に潰しておこうと考えたに違いない。
都合よく利用されるのは腹立たしいが、こういう扱いにも慣れている。
俺にとって損はない。
ギルドをこき使うことだってあるのだから、こればかりはお互い様だろう。
必要な情報を得た俺は徒歩で移動する。
向かう先は街中にあるロド商会だ。
グラッグ運搬の姉妹組織らしく、冒険者向けに様々な商品を販売する企業である。
ただし、裏では非合法な商品の売買も担っている。
グラッグ運輸と結託しているのは、この街では有名だったらしい。
そして、ロド商会の専属用心棒の一人が妄者なのだ。
これが決定的な情報であった。
他にも怪しい勢力はいたが、妄者が関わっているのはロド商会のみだった。
矢を撃ってきたのは、おそらくその用心棒だろう。
(ぶち殺してやるぜ)
俺は高鳴る鼓動を聞きながら大通りを進む。
道行く人々は素早く道を開けた。
本能的に危険を察知したのだろう。
柄の悪そうな荒くれ者でさえ、呻いて飛び退くような有様であった。
暴力社会で生きる者ほど、己を超える暴力に敏感なのだ。
しばらく歩くと、途端に人通りの少ない寂れた区画に着いた。
スラム街との境界にあたる場所だ。
前方にはやけに小綺麗な建物が立っていた。
黒の四階建てで、冒険者らしき人間が常に出入りしている。
あそこがロド商会だった。
情報通りの外観なので間違いない。
「ははっ、臭うぞ。クソッタレな妄者の臭いだ」
俺は大股で堂々と接近していく。
途中で哭いて戦闘準備に移った。
俺という存在が内側から塗り変えられていく。
血肉が薄れて影の身体に変貌し、コートは赤黒いスーツになる。
まるで濁った血のような色合いだ。
僅かな濃淡は、渦巻く水のように流動している。
ロド商会の建物から視線を感じる。
強烈な殺意だ。
間もなく矢が飛来した。
「ヒ、ハァッ」
狂笑を発した俺は指の刃で弾く。
矢は幾分かの抵抗感を残して後方へと消えていく。
その瞬間、俺の中の忍耐が限界を迎えた。
殺戮に飢える身体が、本能のままに駆け出した。




